響かせて 声を
  聴いてね 声を
私ぜんたいで声になって
あの透き通ったところまで
のぼっていきます
また遊んでよ
また笑ってよ
さきにのぼったひとよ
薄いピンクと
 .... 
わたしは みにくい獣だ
 鋭利な刃物を知っている
 (わたしの爪はいつも)
 鋭利な言葉を知っている
 (やわらかな皮膚だけを)
 鋭利な視線を知っている
 (傷つける)
みよう .... 
油断したこころが
果てしなく遠いと
思ってしまうような
遥かなみちのり
それでも、歩いていくことを決めた
自分の足で歩いていって その果てにも着くと決めた 
あなたに雨がふればいい 
ブラウスが 
やわらかく貼りついて 
疎ましく思えばいい 
あなたに雨がふればいい 
ことばが 
あなたを脱げばいい 
小さな偶然を 
言 .... 
名前入りの口紅があるんだって
彼女の憧れのスター
ふっと 話し掛けると
知ってる と 真剣にみる
友達が注文するって 言うと
お願いだから私のぶんも と 
一緒にすることにした .... 
日常にくたびれた玄関先で
茶色のサンダルが
ころり
九月の夜気がひんやりするのは
夏の温度を知っている証拠
おまえには随分と
汗を染み込ませてしまったね
サンダルの茶色が
少し .... 
各駅停車の鉄道がはたらいている
ひとの数だけ
想いの数だけ
星空のなかで
各駅停車の鉄道がはたらいている
天文学には詳しくない僕たちだけれど
きれいだね
しあわせだね
このままでい .... 
回るものの影が
回るものに映り
たくさんの満ち欠け
たくさんの季節をつくりだす
水たまりの空を歩むもの
変わりつづけ 歩むもの
ここに在るだけの世界の上に
足跡は .... 
 
 
ええと
どこからともなく
聞こえてくる 口笛
ハローベンジャミン
きみの鼻の牛みたいなピアス
好きよ
ベンジャミンはいつもヘッドフォンで
オルタナティブな音楽を聴く
 .... 
うなじ いろじろ すべりだい
てさぐりでつかんだ ルーシー
それはそれは とても
両の手のひらのみこむ
おおきな ひかり
たとえばね
超過したねがいとか
乾いていないバス .... 
それは眠りながら
君の体を行き交う虫を捕まえて
虹色に光る魚を探したかった
なにかを追ってどこかまできたけど
帰るための電車も小銭もなかったんだ
唐突で従順な世界の中で
僕は自分の .... 
せっかく外に出たのだから
妻と娘に土産を買って帰りたかった
二人が泣いて喜ぶようなものではなく
小さな包みのもので構わない
ほんの少し甘いお菓子で
お土産買ってきたよ
あら、ありがとう .... 
夕暮れ時になると性懲りも無く
鐘が鳴ります
残された残響があちらこちらへと
物寂しさ残して消えていきます
起きてから寝るまでのほとんどを小さな工場で過ごし
私は随分と前に考えるこ .... 
あの頃、君に告げられなかったことを今
 ***
ねぇ、君
冷やし中華を誰よりも早く始めたいの、とはりきる君の姿が僕は好きだったんだ
ねぇ、君
扇風機の首フリに合わ .... 
おなかをかいている
ふところに
つもる
きのうがある
きのうはいぬと
あそんでいた
みつけていく
きずあと
いつも
こころのなかの
おじさんに
おこられているかんじ
のうの .... 
 切符を切るカチカチと
  ポイントを温めるランプの炎の
   二番ホームに雪を踏む
    信号の腕木があがる
凍える両手に息を吹きかけたあと、空を見上げて吐息
    .... 
思い出せる涙は
すべて
私のせいであるが故
思い出せる涙は
なんとか上手く 
こころに
収まる
思い出せぬ涙は
だれのせいであったか
どん .... 
悲しいことの、その理由は
こうしている間にも
いくらでも増えてゆく
昆虫の卵のように
冷たく白く光る
小さなつぶつぶとなって
いくらでも増えてゆく
その卵をぷつんと割ると
苦い涙の .... 
目覚めたら私の腕や脚の皮膚が黄緑色になり、固くなって、ところどころささくれ立っている。私は足や手が植物の枝になっていく気がした。柔らかなたわみのある腹や乳房は幹になり、口紅をしたままの唇が花か果実にな .... 
だって
どの午後にも
煩い色彩がありました
静けさは無く
とりわけ静かな白は無く
ぬるい絵の具にわたし
どうしたってなってゆくみたい、と
教わらなくても、 .... 
 何もいらないだなんて、 真っ赤な真っ赤な嘘でして、 
谷の底に静かな村がある
昼の光が色あせて
働く人たちが 夢もみず
疲労のなかに眠ると
月と星が そこから昇る 
タクシーで溺れた
昔はあんなにうまく泳げたのに
手足をばたばたさせても
座席の底のほうに沈んでいくばかりだ
ナイター中継を聴きながら
運転手さんが舌打ちをしている
水の中では舌打ちすらでき .... 
忙しいと言いながら
忙しそうにしている人がいた
忙しい毎日が嫌だとぼやきながら
忙しいのは何故かしらと呟きながら
忙しさから解放されそうになると
忙しく何かを探しはじめる
忙し .... 
 あなたの首筋はいっそう細くなり
 顔には凝灰岩が多くなる。
 また体重が減ったよと力なく笑うあなたに
 私は何と答えたら良いものか。
 84歳まで生きたと、自分の家系では知る限り4番目か5番 .... 
思う
絶え間なく思う
この時その時あの時の分かれ道
二分の一の右左右左の岐路に
それぞれ違う選択をしていたら
今私は違う私だったんだろうかと
 
 
 
天文学的確率の曲がり角
歩 .... 
こんこん
つたえたいことを
もってきました
ああ
ごくろうさま
そのへんにおいといてください
じゃあ
たしかに
おとどけしましたから
はいはい
ちゃんとうけとりましたよ
あの .... 
夕ぐれが夜になるふしぎ
月がかけていく夏の朝
地球のかたむきを
人はいつも忘れている 
わたし、ほんとうはせみが大嫌いなのに
せみを見つけるのが
とてもじょうずで
命あるものみなとうとい
なんて嘘
目にみえるものすべていとしい
なんて、嘘
わたしはせみが嫌いで
で .... 
誰も知らないどこかの
小さな部屋で
歌わなくなったピアノに
ほこりが積もっています
鍵盤を叩けばまだ鳴るのに
音符はまだカエルになってないのに
歌を忘れてしまったのは
きっとわた .... 
 
 
 
 
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