かなしいふちに降る雪が、
しろくしろいねむりにつき
冷気をはりつめて
その肺にひびいている。
しぃん、とした熱が、
深淵から徐々にひろがり
焼けた声となって吐き出され
冬の空 ....
好きなものってないのよ
頭にはつねに飴玉が詰まってて
集中なんてまるでできないの
猫が連れて行かれて
缶詰がまだたくさん床に積み重ねられたまま
あなたを待って
それがどんなに意味のない ....
全ての悲しみは
お船に乗っけて
流しましょう
全てのやるせなさは
お歌を歌って
弔いましょう
全ての愛は
いつもいつでも
僕らの中に
あなたを愛してる
そう思える心だけ ....
プリントを落とし
小さい彫刻刀を握る
傾いているのは体ではなくて心ではなくて時計の針
何もが引力を持ち始める
つま先の下でどよめいている川音
水が果てへと呼んでいるのかしら
流 ....
一.
青を
反故にした
空
よりも
事情がある
真昼につき、
雨はふらない
二.
鋏の持ち手が緑だったことから
分け合いたくない
ままの
手 ....
いつだって
重力を
消せるのだと、信じてる
紺色のわたしたちの
ひざは細く
鋭い
ここに時計は
もはやないよ
だれもいない
壁の向こう ....
フィチカ、雨の国。
春には雨の花が咲き
夏にはきらめく雨がふる
秋には雨も紅葉し
冬には白い雨がふる
(誰か)が「冷たかろう」と言い
(誰か)が「寂しかろう」と言う
....
産まれたのは透明な冬
冥王星のなまえをもらった
彼女は海に飛び込む
後姿は蝶の背骨
白い指で息を止めても
朝はきっと来ない
細い髪がやわらかくゆれる
スローモー ....
夜明けとともに
失ってしまう事におびえて
冬の星座がのぼる前にと
眠りにつくふたりには
体温だけが必要で
かたむいていく、その先に
今日の終わりは信じないのです
夜がきます
恐ろし ....
森林の中
ひっそり潜む
小さな月
あさい眠りの
はざ間を泳ぐ
黒い魚影が
ゆらり と
身体をしならせ
ついばんでいく
冷たい魚の接吻に
吸いとられていく
....
北風が公園の遊具を
カラカラと転経するかのようで
あわてて耳をふさぐと
もう名前も忘れたあのひとが
私を呼んでいるのに
声は私を忘れて
名前はだれにも届かない
やっとちぎり取った ....
さよなら
気泡みたいなことばを
無造作に夕暮れに飛ばしてみると
橙にすっと溶けていったのは
声が震えていたせいかもしれなかった
車輪の音、渇いた
ペダルを思い切り踏みしめて
陽炎 ....
あの時は
一生懸命つま先伸ばして指先も伸ばして
そっからしゃがんで思いっきりジャンプしたのに
届かなかった
それっきりで諦めた
でも今は 前より少し背も伸びたし
....
ヘッドフォン
外の世界を
シャットアウト
君と僕だけいればいい
空礫(そらつぶて)
逝く夏の けわいに歌う影法師
{ルビ諦念=ていねん} 観念 {ルビ綯=な}い交ぜの
見果てぬ夢を引き連れて
尻切れトンボの数え歌
{ルビ陽炎= ....
髪と声をほどきひもとき
あなたから生まれ出るものを
得ることなく得ようとしている
羽と鱗が 同じもののようにまたたく
夕日と虹といかづちを
分けることができないまま
....
ある夜 街はずれの広場で
夜空を天幕がわりに
サーカスが催された
楽隊のない 静かなサーカスだ
曲芸師たちはみな骸骨
水晶のように無色透明なのや
黒曜石のように黒くつややかなのや
銀色の ....
さよなら、さよなら、
記憶を解き放って
遠ざかる夏の
四角く切り取られた 空
枠からはみだした場所では
かなしみによく似た顔の
ぼくたちが
今も、酸欠になっている
....
Quartz
震えて
終わりと
始まりのないものを
区切っていく
切り刻んで
数をあてる
なにものとも
名づけられない筈の
私より薄くて
鉄も
昼夜をも含 ....
月光も揺らるや海の真ん中で無き夢となり朝日を待つか
一人では死にきれぬ故か入り来た部屋の夜虫をまずは殺して
寂しくも悲しくもないよただ、ただ暗闇がずんと来るだけ ....
誰も
さよならを言わない
誰も、何も、言わない
*
ジ、
ただ
重々しい青へ、空の、青へ
弾け散るように飛び立った蝉の
既にこげ ....
つまらない言い訳も
錯綜するゲームも
白熱する議論も
うつくしい花も
必要はない
ただ同じ荒野を持つ
それだけがぼくたちだろう
赦さないでいい
救わないでいい
愛 ....
会えるかな
会えないだろうな
琥珀色のトンネルの向こう
果物ナイフで切り裂いた光の
向こうの・・・向こうの、そのまた向こう
動かない青空の果てに
....
なんか嫌な予感がして
目を覚ました。
ら、オッサンが枕元に正座しており。
めんどくさいけど突っ込んだら神様だって言う。
これ水木しげるの世界きたよ。
貧乏神か貧乏神だなと問い詰め ....
梅雨明けを待てずに
空は青に切り開かれて
ホウセンカの種が飛び散る
新しいサンダルが
小指を破って
滲んだ痛みは懐かしい夏
種の行方を見つめ
きみがいない、
そんなことをふと思 ....
/雨が降ってる
小さな砂漠なのだと思う
講師は教壇に立ち
黒板に自分の名を書く
「倉持康雄」
はじめまして、倉持です
皆さんにとって実りのある研修 ....
海が黒いね
ひび割れているの
それはあの大きなタイヤだけだよ
もうずっと
さっきあなたが
持ち上げて
少しだけ転がすまで
倒れたままだったね
ひび割れるまで
ほら海の ....
夜の飛行場には
サヨナラが点在する
携帯電話のキーのような
小さな光の形をして
滑走路を疾走するもの
引き離されるもの
雲に呑まれるもの
星になるもの
僕らの住む街 ....
背中が守られている
抱擁でなく
囁きでなく
いつも見えない後ろが
守られて温かい
そんな気がしている
口元が護られている
くちづけでなく
言い付けでなく
冷たい言葉が洩れない ....
私たちは互いを必要としながら
それぞれの場所で夕陽を眺め
明日の湿度を欲しがり飲み込む振りをする
あなたと私は
埋もれてしまったいつかの夏に
栞を置いたままかもしれない
そ ....
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