まどろみて戦闘服のポケットの内なる闇で文字となり待つ


幼少時蝶を追ひ駆けあきらめた崖の上にてそろへ置く靴


砂山にトンネル掘りてやがて夜未だに指はつながらぬまま


裏山の茂み ....
幽霊もいない病院もうひとり幽霊じゃないきみとさまよう


麻酔薬月夜にぬれてこぼれてるコンクリートはすでにふにゃふにゃ


スタンバイされても困る手術室「メス!」ってあたしのことかしら
 ....
倉吉病院にきちがいを連れて行くと5000円もらえる
倉吉病院の裏山には隔離施設と秘密の沼と竹林があって山を越えると
東伯郡になって梨園に出て夏になるとおいしく食べられる
竹林の奥の井戸のトタン板 ....
どこかで落下する
果物の感傷のなかで
頭痛がするすると昇ってゆき
遂にまくらだけを欲するくらい布団のなか
ぼくら季節から逃れた羊たちのように
こんばんわを言い続けてる
床の上からゆっくりと ....
どんなに悲しく思っても
どんなに愛しく思っても
あのひとの歩き方も、もう
思い出せない
思い出さない

遠くのほうで鳩が鳴いて
自転車の下にへびいちごを見つけた

あのひとが私にくれ ....
  雨の日には
  誰かの心がおわる

  かつて夏の日に
  鳥がいなくなってしまった
  残された鳥籠のヴィジョン

  死滅した都市だけが
  優しい思考を生きてゆく
透明に
張り詰めた
ガラス窓から
朝日が零れているよ
覗き込むと
昨日が
音も立てずに沈んでいくところで

空間
四角く区切ったそれを
大勢の息で共有しながら
積み上げられている ....
振り向くと沖に知らない人ばかりになってこわい

貝の表面についてる回虫みたいな模様がこわい

高波が何でも持っていこうとするからこわい

クラゲが知らないうちに沢山わいてこわい

あが ....
トゲトゲの木という
スピッツの曲があり、

うたうことは、流れ、聴くものは、
薄闇にゆれ、ここの部屋の落ち着いた形
溶けていく

ぼくのはりめぐらす気分は、とげとげで、
いつもしつこく ....
リリイは寝そべって
太陽を見ていました





   暑
   い
   夏
   の
   日





           (でも平べったくないよ?) ....
ショーウィンドウに陳列されている
マシンガンの前にくると
少女はいつも立ち止まり
その色や形に
うっとりする

名前も聞いたことのない国で
戦いが始まった
と、今朝ニュースで言 ....
僕らの隣を
名もしらぬたくさんのひとが通り過ぎて行く
それは止まらない流れのように
街は 黒い雨にぬれて

僕らは色とりどりの傘の中で
黒くぬれて

通り過ぎて行くひとたちは
僕らの ....
空はいつもと同じ曇り空で
風はなんとなく吹いている
誰の声もしない
そんな気がする

愛しいキミは遠くにいるのかな
烏がかぁ、かぁと鳴く
空に響き渡るその声は
ただ僕を空しくさせた
 ....
グラジオラスには
夏が咲き
雲なく晴れて
風もなし
夢はほのかに
午后の空

盆ちょうちんの
夏かがり
遠き耳に
海は果て
夢はさかりに
夕の風

青きトマトに
古き恋
 ....
罪の森きみの手を取り「逃げよう」と言った途端に僕も罪人


森のなか追いかけごっこふたりして迷い込んだねもうひとつの森


瓶詰めの蝶を埋めます木の根元「飛び立つものはすべて埋めます」
 ....
青々とした
ススキが
手を触れれば
切れそうなくらい

猫を拾ったので
埋めた

分解者が
いくら細かくしようとも
ある一定のレベル以上は
分つことなど
不可能なように
全て ....
海底に直立する卵には もうひとつの海が詰まっている
明け方の海に 平板なアルミニウムの光 
その皮膜を剥げばダイナモが唸る
液状化した肉質の中心で 黄濁する眼球は閉ざされたまま
瞼の裏側で ....
おさないたましいが
いつまでも浮かんでいた とき
すべてが凪いでいた
まっさらな夏の日


あさい角度でそそがれる
いまにも壊れそうな
まひるのほしのひかりが
あたためすぎた布団から ....
 



晴天は、たくさん好きな人がいて、その人が死ぬと大声で泣く。




抜歯したあとでミスドの店員と腑抜けな笑顔を見せ合っている




関われる話題がないのでROM ....
情けないよ

あんたが一日いなくなっただけで
狂ったように悲しんでいる

思い上がってたのさ
自分は強くなったって

でもホントは決めてたんだ
あんたなしで苦しんで生きるより
あんたと共に楽しく生きる ....
結婚したてのころ
奥さんがバスンバスン布団を叩く音を聞いて
親のかたきじゃないんだから何もそんなにまで
なんて思ったけど
十年目に
「布団は親のかたきなの」
衝撃の告白
親のかたきに ....
飛行船はるか下方に点となり僕らふたりは帰れないまま


「ふらわぁ」と君がひとこと呟けば辺り一面芽吹きだす花


明け方に鏡の部屋に迷い込み乱れ咲いてるきみの朝顔


花園で追いかけ ....
からだが どうん、まばたきしたときの
あのせかいが まっぷたつ から、ゆうぐれて
頭から 地球の中心に ぐん、と押されると
わたし、いつも きまって あやまってしまう
ごめんなさい、ごめんなさ ....
まとわりつく風に 色をのせる夢を見た


あの日 あまりに駆け回って
おかげで ぼくらはたくさん転んで
傷だらけになって 笑っていたけど
傷の消えた今 なぜか
あの日の笑顔に泣かされ ....
鴉のはばたきに覆われて
夜の鐘は少しだけ揺れる
刃の音 鋼の音
夏とともに終わる音
音はただ音としてはじまり
やがて静かに変わってゆく



前転する光と
前転する黒羽が ....
街灯を転々と遊びながら帰る
競う人もいないけど
ただ歩くことはしたくなくて
誰もいない夜道をケンケンしながら進む
窓からこぼれる光がなぜか寂しくさせる
子供みたいに
ずっと
帰りが遅いと ....
罪をあがなおうとは言わない


空は青い。
青くなくてもいい。


来る途中に蟻を踏みつぶした朝だ
台風、大雪
そんなの、ちっとも関係無かった。



いつも、この道を歩いた。

ほんの数秒の、近道を
一滴の水の中へと
沈殿してゆくひと夏の青空が
無呼吸で深遠へと降りてゆくので
圧迫された半円の夏空その低空ばかり
飛び回る鴉たち
重たく旋回しては羽を乱散させ
またしても映り込む水の中
 ....
においには
名前がないから
きみに伝えることは難しいねぇ
切なさにも
名前がないから
言葉にすることは大変だねぇ

すごく大切なものを忘れてしまって
忘れてしまった悲しさだけが残っ ....
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