結婚前の嫁さんを僕は(きれいだなぁ)
と、うっとり見ていた
結婚後にいつも一緒の嫁さんは、時折
いもに見えることがある
高熱にうなされ
布団からふらふら身を起こした僕に
....
真白にとかれた耳飾り……
それは冬の名残です
寒い日にはてんてんとあとをつけていくもの
温かくなり、晴れた日には水上から流れくだってくるもの
かつてそうした世界の眼差しを愛していました
愛と ....
夏にあいたひし形の穴から
海が溢れだす
きみは定規で水平線を引き直す
クジラが大きな口を開けて
ぼくの腹話術で、あー、と言う
砂糖の角を削る
わたしはわたしに必要な分だけ
あなたからあなたを削る
空も
海も
荒れている
鉛色した浜辺に
鈴をなげる
こんな日であっても
ひとは
生まれ死ぬのだろうか
鳥たちは
季節を選ぶというのに
どんな理由があって
生まれ死ぬのだろうか
....
三月雨、が降る
ほろほろとこぼれて少女は涙する
はちみつ色の瞳を濡らし鼻筋を濡らし
ああけれど溶けてしまうから唇をきゅっと結ぶ
盛り上がる雫は春の水 それとも冬の水
少女に言葉はいら ....
わたし まくら もうふ
わたし まくら もうふ
三層に連なる眠りに寒さはおりて久しく
外気に触れた右人差し指は人肌を求めて冷たく
わたし まくら もうふ
わたし まくら もうふ
わたし
....
2
120222
すべての動物は静物園からやって来たのだと二人の男が決めつけた
男は一人いれば充分なのだから
一人は男のふりした紛い物であ ....
何をためらっているの
細胞が覚えているでしょう
心が脈打つ度に感じないの
いのちを抱きたいのでしょう
肌が泣くほどに抱き合えばいいよ
後付けの科学は興味深いけれど
あなたはあなたをもっと
....
目を刺す金色、完璧な夕方、漫画雑誌の白黒
まずそうな紙の上で女の子が笑ってる。明朝体でしゃべるのが逆に
ポップ。あらかじめ用意された運命がめぐる毎週、終わる前提の世
界で、それでも恋 ....
120218
博物館に向かう途中
遠くに動物園が見えると聞き
そのつもりで左方向を眺めたが
生憎、整備工事が行われていて
遠目が利かない
そ ....
なにかの映画で見たような
あてのない線路
そこには空も海もなく
心地よい孤独だけが転がっている
空き瓶の中で
春が雪に変わり
冬が死んでゆく
廃駅のベンチに腰掛けると
一匹の猫がすり寄 ....
真夜中の洗面台で
ぶくぶく石鹸を泡立てる
洗っても洗っても
落ちないのです
どんなにすすいでも
臭うのです
手をよく拭いて
今度こそと本を手に取る
やはり開かな ....
皆 やんややんやとなる
ネガティブな言葉は封印され
予定調和的な空気が充満する
皆 表に見えるところは曇っていない
しかし心の奥は恐れおののいている
円を描いて座っている いびつな円
....
風はありませんが
光が見えます
この窓を
開けることができたなら
風もあることでしょう
窓は開きません
でも光は綺麗です
綺麗な風を
私はまだ知りません
....
まだ幼い頃
家族で夜の海へ
泳ぎに出たのだろう
若い夏草のような
家族で
私は玩具のように
小さな浅黒い生き物
だった
海もまた
生き物だと
生々しく感じたのも
それが初めて ....
ぼくは
なにかと
いっしょになっている
そのとき
たえきれなく
ならないために
なにかと
いっしょになっている
それが
たましい
とよばれるものじゃないかと
それが
ばくは ....
いつか見えていたはずのなにかを見失って
何者でもない私は
何者にもなろうとしない
乾いた空のカップと
虚無を食らい続ける秒針が
私を生きることにあきらめた私に
無限に重 ....
赤いメトロノームが死んで
青い空に溶けた
灯がともり
薄明かりの朝は目覚めた
地中深くからの冷えた手
固い岩盤の協奏曲
大地は緑に染まり
花は変わらずにまた咲いた
寒さに凍 ....
きのう、電話で、
彼女とけんかした
ぼくがなににいらついているのか
彼女にはまったくわからなかった
クリスマスに
彼女がなにもいらないと言うから
買ってあげた長靴のなかの
ビスケ ....
半身麻痺のお婆さんの
両手を引いて後ろ向きで歩く
介護青年だった、10年前の僕
いつも面会中にさりげなくにこやかに
見守っていた初老の娘さんと
古都鎌倉の喫茶「扉」で
偶然顔 ....
重い扉の前で
君を待ってるんだ
空が次々に溢す
冷たい雫を身体に受けながら
雫が身体を叩くたび
現実の重さが僕を濡らす
いつしか僕の髪からも
冷たい雫がつるんと落ちて
....
子を宿す誇らしさと後悔を
ごちゃ混ぜて女は吐き出す
野原の上に建っている家はとてもよい紅色
とても満足
まんぞく
足デ満タサレルと読めてしまう滑稽さに
ほほえむ
想像を絶する痛みを想 ....
脊中に板がはり付いて
逃げまどう毎日
疲れたなんて すぐ横になるキャンディーに
大丈夫ですかと
優しさまでをも あらわして
何もかも受け入れてしまう
何もかもを ゆるしてしまう ....
暗いそらのした
森の樹皮質のぬくもりが、
重さをました広大な冬の夜をささえている
不思議な安寧をやくそくされ
みちびかれるように 生きる
神々しく 雪をいただいた山のうちふところで
....
受験生は単語帳を閉じた
女もアイラインを引き終えた
みんなもうやめたの
みんなもう消えたの
わたしはまだやめないでいる
やめられないでいる
同じ箱にゆられて
すべての人を見送る
ずっと ....
握る拳のひとつ
力を
力を
みなぎらせ
踏出す脚の一歩
遠くへ
遠くへ
つながらせ
ささやきを叫びにして
この存在を
主張するのもおこがましい
さみしさを晒け出し ....
何度も何度も
すべり降りた
体育館の屋根の上
つばめの弟
やってきて
もう帰ろうか
額をつけた
横断する春の粒子
ずっと眺めていたけれど
探しにいこうか
遠い昔に流された
小さな ....
赤茶けた数艘の漁船が
死んだように泊まっている
コンクリートでできた堅い半島は
港と呼ばれる寂しい場所だ
秋の空の蒼い果てで
透明な名も無き巨人が
白雲 ....
川をみると
カラダの中に川があるように思い
海をみると
以前に海にいたように思う
古い教科書のような山は
常にそこにあり
捨てようとしても捨てられない
どこからきて
どこへかえ ....
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