大きな空の真ん中に
言葉にならない穴があって
その奥の色は群青色で
いろいろなランプが
つり下がってる。
いつでも自分は一人なのですが、
このごろますます一人なので、
言葉に ....
太陽光線の当たるところからボロボロと
劣化していく不安から
上着を重ね 傘を差し 手袋をつけて 歩く
汗は血から出来ているのだから
汗を流す私の体は溶けているに違いない
溶けた私はシャツ ....
僕は君がすきだと思う
その細い指で君が
未来みたいなグレープの
ジュースを淹れている
夜のさらりとした空気が
僕らの間に横たわって
少しかしげた君の首を
そっとこちらへむける
....
毛が生えている家が格安で売り出されていたので
後先考えず不動産屋と契約してしまった
見た目は洋風でモダンな感じで毛が生えているのに
中に入ると障子や襖や梁の木目など和のテイストが
....
ゆがんだ
細長い背もたれのいすに座って
ぼくたちは半日を
大きな絵のように過ごした
首筋を汗が
降りていく牧場で
太陽が庇の縁をなぞって
ゆっくりと半円を描き
ぼくたちは昏い絵 ....
静かの海
ここはどこまでも静寂な 砂がさらさらと、
乾いた想いを落としていく
初めて出会った日を思い出しては
ナトリウムの大気に
耳をすませる
小さな部屋で聞いた
パステルの紙を走る ....
どうして涙がでるのだろう
動物園にいるゾウさんが
真っ黒な瞳をきらっとさせて
乾いた風に吹かれる中を
のっしのっしと歩きながら
どうして涙がでるのだろう
目にゴミが入ったのだと
あの ....
陽射しが強く照り付けるたび
懐かしく思い出される夏の日
肌触りのいい
風がよく通るシャツ
あの頃は
いくら汗をかいてもよかった
日が暮れるまでに帰るルール1
七時になっても日は暮れな ....
背中の曲がった老人が
夕暮れに向かって歩いている
歩きたいのだ
だれも
彼に杖を貸してはいけない
赤ん坊を抱いた女が
夕暮れに向かって歩いて ....
もしかしたらこれって些細な悩みなのかな
ちっぽけなことで躓いては立ち止まる
あまり不自由したこともないのに
何かが足りない気がしちゃうよ
もしかしたらそれってただのわがままなのかな
ちっ ....
もうすっかり真夏だというのに
町内を一匹の羊が歩いていた
川を探しているようだった
取り壊しが決まって無人となった団地が
フェンスと草むらの中に
数棟納まっている
淋しい幼 ....
ほんとうか
どうかわからない月がある
空を見る
隣に見える星は
月にむかって首かしげてる
歩く私の
影も吸い込まれた黒の空気に
命細々
永遠を夢みていた頃の映像を
心に ....
跳ねるのどの熱さが手の平から伝わってくる
君は水面に顔出す金魚のように喘いでいる
昼下がり 西日は容赦なく目を射ち
閉じたまぶたで君を切断してみたい
どうしようもなく疑わしい 薄い影を踏み ....
みえるもの
触れるもの
ゆれるもの
遺された体温が、シーツの
皺にまぎれ
薄くひかっていた
指で掬って、軽く混ぜて
水の匂いのような
ものと遊びながら
何 ....
行き過ぎて ふと振り返る 向日葵の黒
路面電車の響きにそして 忘れるということは
始まり 終われなかった 風のまにまに
匂う いつも通り過ぎてから気づく
ほかに ほしいものなんて な、い
並 ....
ずっと知っている
甘酸っぱい腐葉土に降り立てば
ほら、夏に焼け焦げた体の
もうすぐそこへ含まれてゆく予感
夏はひとつの心臓として脈打っていた
どくどく、樹液の行き渡ってゆく空気へ ....
夜の夏に迷って
昨日の夏をたどった
歩きつかれて座る
椅子は今日もある
太陽は沈んで
君を隠してしまった
星の君は優しくみえる
ほんとの君みたいに
過去にもどされてみたかった
....
蛾が舞う
びいどろ焼けた肌
今日は木曜
粘性の雨
水あめ
甘い茎を廻る
二十ニ色の蛾
電信柱の骨
涙浮かぶ川ふたつ
中洲の向こう
ひとさらい
手も足も
舌の ....
ある真夏の日
万障繰り合わせの上
故郷の川で
友釣りを始めた
はじめに私を鼻に掛けて
流心に泳がせていく
すると懐かしい
あの顔とあの顔が
あの顔のまま針に掛かって
....
手をつないじゃった
わたしほころびちゃった
言葉少なになった
ほうり込む飴玉
どこもかしこもとろけてる
目覚まし本人確認 奥底の
おでまし頬紅かんざし
遠目にわたし見たら ....
感傷にひたりたい
夕日にそう言うと
大急ぎでおちてった太陽
次の場所への移動中
そんなプレートがからん
夕焼けに染まりたい
真っ赤さんにそう言うと
ふいに真っ黒になっちゃって
....
十年、こもった
もう良いかと思った十一年目の春
伸びた髪の毛が邪魔だった
二十年、こもった
意を決した二十一年目の夏
世界の熱量に敵わない気がした
三十年、たった
重い腰をあげた ....
こどくにはつよいはずだった
ぼくが
ふあんにたいして
ふあんていにたいして
こんなにもぜいじゃくでむぼうびであったなんて
おもいもしなかった
ふいのかぜがふい ....
君の一歩に手を貸して
花は微笑みました
温度は上がっています
風は雲を運んで
空は太陽を迎えに行って
かえりに 真夏を誇らしげに
私はみあげて
感じています 夏の日
君は旅立っ ....
濡れた藪の陰には
ヤスコちゃんがもう膝を抱えている
色の変わった大きな樽の中は
トシユキの指定席だ
横木の折れた狭い入り口に
クモの巣は長くぶら下がって
すでにだれかが小さな手足の跡を
....
こうして向日葵になって咲いてると
あんな嘘をついたことが
嘘のように思えてしまう
さっきから父親と思わしき人が
私の隣に小さな子供を立たせて
写真を撮ろうとしている
あ ....
随分と前に上演は終わっていた
ビラビラと焼ききれたフィルムが背後で回って
煙を上げる端くれをクロールするように回転させながら
真っ白い幕には無数の砂粒が踊る
{引用=(お楽しみ ....
あの空と海の境界は
いとしさを含んだ
やさしさが横たわっている
きみがすやすやと眠る
わたしのひざまくらも
きっときみとわたしの
曖昧なやさしい境界になっている
くっつかないということは
い ....
雲が白く山肌を覆う
そんな雨が途切れた夕方に
幻を見たような気がした
むせかえる夕立の後で
耳元で囁いた
その柔らかい息づかいが
脳裏に焼き付いて
繰り返すフラッシュバック
目眩の底に ....
私はとても疲れている
世界を歩くことなどないままに
夜としての流れを見ているように
光であることを感じている
この光の向こうで 夜として存在し
風となって吹いていることだろう
私は食い ....
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