あの蛸あまり出てこないね
と水族館で水槽を叩きながら君が言ったから
水の中では音が反響して
ひどいことになっているんだと思うよ
と答えた
言いたいことも言えないこともあって
そういったことをごまかして ....
胎児

鰓で呼吸していました
母が引越しのための交渉している
子宮の中が狭苦しくなったので
ぼくはからだを硬くしました

誕生

はじめて空気が
喉をとおったとき
胸が裂ける痛み ....
むかしむかし
あなたと私の
鳥の骨のような関係が
ありました

肉はもうとっくに
誰かに与えてしまって
白い骨格だけが
残っているのです

飛翔の予感を秘めて
飛翔の過去を秘めて ....
 
 
言葉に無いタクシーがいて
瞬きが出来ずに泣くきみがいて
ゆっくりとした雲が転がっている
 
優しい音のするヒトデがいて
何でもないイソギンチャクがいて
その間をどこまでも白線が ....
 
 
隙間なく敷き詰められた
ピアノたち
風が吹くと波状になる
泡として消えていく
音という音
装丁された楽譜は
わたしたちの情けない嘘
落葉と同じ速度で動く
メトロノームの側か ....
こんなにも多量の糞が出るのなら
 俺は当分死にそうにない

食当たり何を食っても粘土味
 油あげ一枚で死ぬかと思った

自転車のオカンがスロープ落ちてきて
 駐輪場で死ぬかと思った

 ....
掌に観覧車
小さなゴンドラを覗くと
四人の家族が納まっている
父も母もまだ若かった
兄も私もまだ幼かった
それがまるで
ずっと続くかのように
ポケットに観覧車をしまう
思い ....
  

自分の手を差し出し
握り返してきたのがタコの手である
という笑い話もあるけれど
もっと簡単に見分ける方法がある
タコに書初めをさせてみればよい
筆を持った部位が手のような気持ちに ....

夫があまり鋭く見つめるから
わたしはしだいに削れてゆく
夫と婚姻関係を結んでからのわたしは
もう余程うすっぺらくなったらしい
強く手を握られると
きしゃり と指ごと潰れるから
か ....
きのうパパに捨てられた焼鳥弁当の
とむらいはどうしたらいいかしら
丸いっぽん残っていたつくねのぶんの
とむらいはどうしたらいいかしら

わたしはつくねのとむらいに
いったいどれだけのつくね ....
 
 
石化する
柔らかな石
心電図の
波形の谷間が
わたしたちの眠るところ
わたしたちの見聞きするところ
わたしたちの対話するところ

/年の瀬も差し迫ったふとしたある日
 一 ....
 
 
酢を飲んで 改札口で 待っている


汽車に乗り 行ってみたいな 試着室


犬走る 急行列車を 追いかけて


急行の 窓から見たら 走る犬


試着室 あなたの ....
生きていると
死ぬことを忘れてしまう
私たちは
生きているのではなく
死に向かっているのだ

夜明けのように
死は訪れる
目を覚まさないうちに
私たちは死んで
約束されたように ....
 
 
無人のブランコが揺れる
温かくても冷たくても
風はいつもものを動かそうとする
ジャングルジムの天辺に登れた人が
みんなから尊敬されていた時もあった
そんなに昔のことではないけれど ....
 
 
蛇口をひねると
小さな雲が出てきました
まだ水を作っている途中でした
水道管の中から
作業中の囁きが聞こえてきます
小さな雲は部屋の中を
ふわふわ移動すると
一滴の雨を降らせ ....
 
 
すべての子どもたちが夢や
夢とは違うものを見ている頃
誰もいない教室では
白墨が生徒の名前を
一人一人板書している

名前の下に記されているのは
その生徒にあった今日の出来事 ....
 
 
友だちの家に遊びに行った
門のところで、久しぶり、と挨拶されたので
久しぶり、と答えた
もてなしてくれるのだろうか
和室に案内されて
お茶とお大福を振舞ってくれた
正直な話、あ ....
月にいちど血の塊を産む
生まれなかった卵と一緒にトイレに流す
私の体は痛む
痛みは臍の下から生まれて体中に(つま先までつま先まで)
それは生まれなかった卵の為に
じんじん じんじんと

 ....
かなしいときに
ねぎを刻む

そういう物語があったけれど
わたしはじぶんがじゅうぶん青くさい
ことにへきえきしているから
ことさらに平気な顔して大根を刻む
まっしろな朝、まっしろな腕 ....
 
歯磨きが終わり
コップを手に取ると
何かのゼリーのような感触がして
指が中へと沈んでいく
そして右手は
コップそのものになってしまう
これから歯ブラシは
左手で持たなければいけない ....
 
 
鞄を探していた
たった一つの鞄だった
大切にしていた鞄だった
心当たりのあるところは
すべて探した
鞄の中も探してみたのに
布製のハンカチや
プラスチック製の文房具など
必 ....
 
 
木に実っていた最後の世界が
その重さに耐え切れず
落ちる
あっ、という誰かの叫びは
空気を震わせることなく
そのまま大気中へと浸透していく
店頭に並んでいた時計の化石を
少年 ....
 
 
夕暮れの校庭で
少年が一人
逆上がりの練習をしている
息はすでに上がり
手のマメは破れているけれど
何度も地面を蹴り続けている
成功したところで
得られるものも
失うものも ....
 
 
僕にヒゲが生えていた頃
あなたは優しくヒゲを撫でてくれた。
今ではすっかりヒゲは枯れ
ビルなどの建築物が建ち
唇の近くまで人も歩くようになったけれど。
あなたの手のことはあまり思 ....
いつか死ぬ
ってことと同じくらい当たり前に
恋は終る
今座っている
椅子も無くなるし
すべてが
変更になる
もちろん
地面も無くなるし
きっと時間も
無くなる

ね、無
ね、 ....
夢のようだった
銀河鉄道の夜でよんだ
真っ白な{ルビ鷺=さぎ}の菓子を
わたしは大地に植えていた
ずい分長い間そうしていたのだった
一羽でも多くと
せっせ、せっせ、尊くひかる白い足を埋 ....
くまさんはひとりでした
森の中
誰にも出会いませんでした
花咲く森の道
くまさんは
ひとりでした

孤独なくまの気持ちは
孤独じゃないくまには
けしてわかりません

ある日森の中 ....
 あんなにも忙しくぼくの脚はうごいていたのに
 それいじょうに
 踏みしめていたものの方が素早いなんて
 なので、いつまで此処にいられるか
 ぼくはじっさい
 心もとない気分です
 ....
 
 
光る小さな玉が
ふわふわと三つ
それぞれに適度な引力を持ち
時にはふわふわと引き合い
ふわふわと離れ
角もないのに接触した拍子に
傷をつけ、傷をつけ合い
そうかと思えば
 ....
雲をみじん切りにして
さっと炒めて
ちょっと味見して
少し首をかしげて

そこからひたすら炒める
ひたすら


かなしみにも
あかるい工夫がみられる空は
わたしの夕焼け

 ....
小川 葉さんのおすすめリスト(1505)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
蛸にイヤホン- クローバ ...自由詩8*11-1-19
呼吸期- 殿岡秀秋自由詩811-1-18
鳥の骨- 三条麗菜自由詩7*11-1-17
ルール- たもつ自由詩511-1-16
船出- たもつ自由詩511-1-14
デっど_・オあ・あらいヴ- 大村 浩 ...短歌8*11-1-12
掌観覧車- たもつ自由詩6+11-1-9
タコの手- たもつ自由詩711-1-8
dissimilation.- 吉田ぐん ...自由詩4911-1-6
つくねのとむらい- 因子自由詩4*11-1-3
引越し- たもつ自由詩710-12-31
「本日の五七五」より_その二- たもつ川柳510-12-27
夜明けのように- いとう自由詩6*10-12-26
クリスマス- たもつ自由詩5*10-12-25
童話(雲)- たもつ自由詩610-12-24
教室というところ- たもつ自由詩610-12-20
おもてなし- たもつ自由詩1110-12-18
しっぽのついたいのち- とんぼ自由詩1610-12-12
その夜- せかいの ...自由詩1410-12-7
歯磨き- たもつ自由詩310-12-7
- たもつ自由詩210-12-6
採光- たもつ自由詩710-12-3
ソーダ水- たもつ自由詩410-11-29
僕にヒゲが生えていた頃- たもつ自由詩8*10-11-28
- チアーヌ自由詩510-11-26
空想の鳥- kawa自由詩310-11-26
星のくまさん- チアーヌ自由詩610-11-25
きせつにサヨウナラをして- 石川敬大自由詩22*10-11-23
ふわふわと光る玉の話- たもつ自由詩810-11-16
わたしの夕焼け- 昼寝ヒル ...自由詩510-11-15

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