すべてのおすすめ
哀切は温かく
歓びは儚げで
人は生きてゆく
記憶のような
時の形をゆく
ラジカセが宝物だった
今だとスマホか
今の子達はラジオを録音とかするのだろうか
....
積んだ言い訳を一度崩してから
冷たい唇を太陽に向ける
折り重なるように君が手をかざすもんだから
鼻の頭が剥けたころ
ぼくたちは心臓の外で音楽をかき鳴らす
祈りも蔑みもくるくる回す指にから ....
――黄金が憎いのだ
魅入られ 争い奪い合う 不動の価値が
金の卵を生む鶏は腹を裂かれて殺された
その輝きが飼い主を愚かにした
鳥でも蛇でもおよそ卵には天性の美のフォルムがある
それは新たな命 ....
熟れた苺は
三温糖の甘さで身をもちくずし
林檎は
シナモンの香リを身にまとわせながら
北国の樹を忘れてゆくだろう
{引用=ずっと果実でいたいという純心は
換気扇のはねに吸われて}
....
【人間になれなかった】
人間になれなかった
野原をひたすらつんのめり
海原を懸命に切り裂いた
だが
人間になれなかった
人間はずっと向こうにある
どこを走ったのか
どこを泳いだのか
....
休日のぎょうざ割引き75円
つい貧乏性で買ってしまった
詩にしがみついた死神と言われたくないが
売れないホステスに肩入れするみたいに
研修中の保険屋さんになった50過ぎの彼女がちょっと ....
墓の前では時間が固まっている
墓の前にはいつでも同じ風が吹いている
あなたがここに葬られた
まさにその日の私もここに葬られている
墓を取り巻くこの自然の一隅には
私たちの青春がその色 ....
遠く純粋は健気で不器用でカッコ悪くて
温かなバイオリンの音
未来の悲劇も孕ながら
もっと未来には野に咲く花が揺れている
なんでだろう? 偉そうに……
長い石段を学生 ....
すでに起きたのか
これから起きることか
おまえの吐息 ひとつの形のない果実は
始まりと終わりを霧に包み
不意に揺れ 乱れても 損なわれることのない
水面の月の冷たさへ
わたしの内耳を し ....
ちいさな公園で
ブランコをこいでいる
あれはともだち
ほうりだされたカバン
あそびすり切れたクツ
おりおりのかわいい花
うつりかわる葉のいろ
近くなる遠くなる空
すりむいて熱い ....
神に反対するものは
痛打される
象を飼って居ても駄目だ
太陽が光り輝き
湾の海水は塩辛い
スライド登板の日だった
ニセの胃が泳いで行って仕舞って
コラージュを背景に投げる
神であるキャ ....
雲の隙間から降りてくる
やわらかい陽射しから
「 」
って聞こえた
それが
はじまりで
それで
おわりのようだった
結局
きみにとっては
ってつぶやいた
空 ....
さて今日も花が咲き
往来はあざやかな灰色
卵を割る指に思いが絡まって
( )
シャツを洗い シーツを洗い くつ下を洗い
はがれ落ちる自意識をかき集めてくり返し洗い
....
夜が割れ
なまあたたかい風が降り
明日の朝を見せ
ふたたび閉じる
標は暗く
音は見え 川は見えず
小さな鉄の声が灯り
水に映る夜を扇ぐ
三角の紙の群れの ....
脇目も振らずに走ってきたよ
余所見をしている余裕はなかった
家と会社を往復するだけの毎日
ケースに入れたままのギター
若者の音楽を受け付けなくなって
大好きな歌も歌えなくなっていた
....
樹木の恥じらいが小鳥の逢瀬を覆う頃
光を浴びてあなた
光を断って歩き
文字から浮き立つイメージのように
境界を越えて往く
今朝の雫にふるえながら幼さを脱いだ
蝶のように 華やぎながら
― ....
たましいが
夜に錆びたぶらんこのように鳴っている
どこへいったの ねぇ わたしの半身たち
あざの浮かんだ あなた
詩を書くのがじょうずだった あなた
半身がふたり 抜け落ちた わたし ....
台所の窓辺に
葱だけが青々と伸びている
ほかの葉っぱたちは項垂れて
もう死にますと言わんばかり
葱だけが青く真っすぐ伸びて
葱好きではないけれど
すこし
刻んでみたくなり
ぱらりと ....
きのうの猫のぬくもりや
おとついの雨のつめたさや
ずっと前
ぼくができたてだったころ
たくさんの小さな人が
かわるがわる座ってゆく
にぎやかさや
お腹の大きな女の人のついた
深 ....
それはひとつの水だった
ある日流れるようにわたしに注ぎ込んだ
それはひとつの風だった
吹き過ぎてなお心を揺さぶるのは
少女は春の花を摘む
長い髪を肩に垂らし何にも乱されることもなく
....
りんごの木の枝に
とまっているのは
葉っぱかそれとも
飛ぶ小鳥
りんごの木の枝に
とまっているように見えるのは
冬の間に吹雪にまかれ
梢近くの枝に刺された
ぼろぼろ ....
光りが僕の身体を切り取り地面に張り付ける
重力に引っ張られ立ち上がることはない
そこにいなさいと蟻が行進する
夕日が沈み影が消えてしまって
もうそこには僕はいない
缶蹴りの音だけは
....
温泉たまご並みだ
チュンしか言わない雀の喧嘩だ
スノードームだ
死の灰の乱反射だ
おしりが視線を放してくれないのは
即興画家のせいだ
占いみたいに水膨れて
ゆ ....
冷凍フライドポテトを油で揚げる
わぁお店のみたい
美味しいね
なんだかとても評判がいい
ちょっと複雑
前にもこんなことがあったっけ
いつもは手作りするマーボー豆腐だけど
レトルトマーボー ....
四月に
雪が降ることが
当たり前になった時代から
四月に
雪が降ることが
特別だった時代に戻って
残された音楽を聴きながら
振り向かない背中を
眺めている
届かない指先なら
も ....
雨の幕間に耳目を伏して
乾いた水脈を手繰るように
生命の中核へ
堅い樹皮を穿つように
かつて滾り迸ったもの
跡形もなく
洞に ただ
ぬるく饐えた匂い
記憶――暗愚な夜
....
ないめん深海のポールにぶら下がって
千代田線直通
れいてんかえさるは
まいしくるのまいしくる
点景はばつぐん
かかるGで呼吸するいきものたちよ
幸あれ
夕暮れ時の薄いブルーたちよ
腸の ....
あなたはわたしのなかにいる
あなたの肌にはその日になると
青や緑の痣が浮かぶのだと
教えてくれた
うごかない左腕で
必死に笑ってた
じっと見つめるとちからのぬけた顔になった
それ ....
人間の涙は邪悪そのもの
馬の涙は純粋そのもの
おお!人類よ、願わくば馬のように涙を流せ
ももももももも、燃える黄金の馬よ!
燃える、黄金の、盲いたる、馬よ!
太陽に向かって一直線に疾 ....
行き先のないお前の虚像
とどまることを知らない水
不器用に溢れるのを忘れて
拒絶された命の河に埋もれる
沈んだ肌を撫で
冷たい手を取り出す
無数のお前が揺らめき
苦しみと愛しさを唱う ....
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