すべてのおすすめ
二〇一四年八月一日 「蜜の流れる青年たち」
屋敷のなかを蜜の流れる青年たちが立っていて、ぼくが通ると笑いかけてくる。頭のうえから蜜がしたたっていて、手に持ったガラスの器に蜜がたまっていて、ぼく ....
二〇一四年六月一日 「偶然」
あさ、仕事に行くために駅に向かう途中、目の隅で、何か動くものがあった。歩く速さを落として目をやると、飲食店の店先で、電信柱の横に廃棄されたゴミ袋の、結ばれていたは ....
{引用=湿度計}
乾いた悲哀に触れる時
こころは奥から浸みてくる
湿った悲哀は跨いで通る
乾いたこころが風を切る
{引用=〇〇主義に痴漢する
Ⅰ}
知識は雄弁で ....
夜風
白銀色の月光り
かじかむ指先の、爪に落ちて、ちいさく照らし返す
甘い潮の香
はなうら 花占 花占ら
月明りの浜辺に咲き
揺れている花々を
一本一本摘んでは花びら千切り
時 ....
この世でいちばん大きな生き物は何だとおもう?
暮れゆくばかりの秋の問いに
ふとたちどまる
たちどまることは忘れがちだけれど
時折とても大切だから
スニーカーの靴底で
きのこをおもう
....
Mrs.アリスの物干し竿には
百年前から着古したシャツやらが
のんきにぶらさがっている
逃げたカナリアの幸せを祈り
野良猫は低く鳩を狙う
公園はひっそりと
今日も来ない子どもを待ってい ....
{引用=無邪気な錯覚}
窓硝子の向こう木は踊る
風は見えない聞こえない
部屋に流れる音楽に
時折シンクロしたかのよう
時折シンクロしたかのよう
異なる声に欹てて
異なる何かに身を委ね ....
白くてぼんやりしている一日
読みかけの本は表紙から冷えていく
犬はどこどこ毛を生え換わらせるから
死んで右往左往している夏の毛を集めて
新しい子犬として
毛糸玉に魂を吹きいれる魔法の息を
....
何かが破損している意思の
立て石を滑る力よ
牛の乳を絞る動きと同じに枝豆弾けて
膝は高らかに笑い
崩れ落ち
寂しさとも心細さとも違う
薄っぺらな心で
振り子の反動でしか動 ....
{引用=幼恋歌}
暑さ和らぐ夕暮れの
淡くたなびく雲の下
坂道下る二人連れ
手も繋がずに肩寄せて
見交わすこともあまりせず
なにを語るか楽しげに
時折ふっと俯いて
風に匂わす花首か
....
あなたのタイムラインが
わたしとは違うと忘れ
選ぶ傘の色
吸い込む煙
小雨の冷たさ
日向、すぐ傍の日陰を見ないで
一緒に音楽を聴いても
吐く息の白、見上げる闇に薄ら
同じになれない ....
何もかもが逆さまの世界に行きたい
そこでの私は美しく賢く話上手で
誰からも愛されるはずだから
全てが今と逆さまの世界に行きたい
だけど夜の鳥がそれを否定する
耳障りな声で鳴いた後に告げる ....
手筒も良いけどりゅうせいだ
手を引かれて黒山の人だかり
飴屋の屋台の先
小さな祠の向こう
いつの間にかはぐれて
通りが開けて横たわる宵に
流れて
消えて行く
余計に闇が深く ....
逃れ去っていく
逃れ去っていく記憶の
その核心を掴もうと
広がる鉛の海を泳ぐ、泳ぎ続ける
失われた薔薇の花と団欒
終わった関係と更地
虚脱の時を刻む秒針
静まっていく
....
{引用=傷}
抗わず流されず
風と折り合いつけながら
トンボたちは何処へ往く
銀の小さな傷のよう
翅で光を散らしながら
{引用=白紙のこころ}
尖った波に足を取られる ....
美しい青と真っ白な雲を
もう幾度も受け流して夏が
終わろうとしている
なし崩しに雨が続いたり
雷に眠れなくなったり
虹や変わった雲より飛び抜けた何か期待して
がっかりして泣くんだ
翻弄さ ....
ふわふわ
ふわわん ふわりんりん あはは
くすぐったいよう-
夏の温度がさがって ほら
クッキリした青い夏のうしろ姿は 日焼けした子たちの笑い声
あの眩しい光にあたりながら歩いたんだね走 ....
{引用=熟れた太陽}
暑い日だった
「スキンヘッドの大工さんの日焼けした後頭部に
もう一つ顔を描いて冷たい水を注ぎたい 」
マスクをした金魚がエアコンの波に裳裾ひらひら
上気したザリガニ ....
ふわりとしたエメラルドグリーンのワンピースが
雨上がりで蒸し暑い灰色の 川辺に映え 道化師が
その様子を写した
ワンピースに茶色の髪の毛が、あんまり優しく垂れさがっていたので。
たくさんの ....
何かおかしいと思うことのひとつは
庭の紫陽花のことだった
八月を迎えても その子たちは
いまだつぼみのままである
長すぎた梅雨のせいで
ウエハースはたちまち湿気り
紫陽花は許容力をはるかに ....
降り始めたちいさな雨粒を
ひとつひとつ
こぶしで撃っていく
敵のいない闘い
ボクサーのロードワーク
撃ちきれない雨粒のなん粒かは
火の玉になり
眼球の中で
また、道々の砂利のす ....
あのひとはやみに閉ざされていたころの
北極星
もう去った
気配だけが
ことばにつながる みち が幾らでもあったことを
まだわたしはひとではない
ひとであったことはいちどもない
こ ....
《なんてこたあ ないんだよ》
翼をたたんだカラスがうそぶく
電柱の上に ぽつつりとまつて
さうやつて 世の中をみおろしてさ
ほら ちよいと
武蔵の絵みたいな
構図ぢやな ....
{引用=(*昨年書いて現フォに投稿せず忘れていたもの。アーカイブ目的で投稿。石村)
}
しつこい梅雨が明け
夏がはじまつた
はず であるのだが
ひさびさに傘を持たずに
散歩なん ....
どういふことだ
まだ
ひとのかたちをして
星の上にゐる
急がなくてはいけない
廃村のはずれの小さな草むらに
菜の花が咲きはじめてゐる
……風にゆれてゐる
やさしいやうな ....
旅
こころは
しらないうちに
旅に出る
笛のねに さそわれて
むかし 人びとがすんでゐた
海辺の村で
潮風にふかれてゐる
いつになつたら
かへつてくる ....
千鳥足で夜は歩き濡れた草の間に風と横たわる。夜は朝に焼かれていく。私は夜の肋を撫でて、その灰を撒きながら昼を千鳥足で歩いていく。また夜が芽吹き、我々は酒を酌み交わす。何度死に何度産まれ何度生きたのか、 ....
踏みあった影はうねりを繰りかえし
大蛇のようにわたしを睨めている
これが雑踏という生物だ
身を縮めて隠れるほかない
だが一歩たりとも動かぬように
語ることを好まなかった父は
静かな ....
他の人生はない
次の人生もない
分かり切ったことだからあえて口にせず
「もしも」や「仮に」の世界を言葉にしたのだろうか
詩を書き始めた頃には多かった直喩から
あえて隠喩を多くしようと心掛けた ....
蝸牛
ひとつふたつと
数えつつ
昨日の
夢へ降り来る光
九品寺より材木座に向かい
ほどなく波が見えて
もう秋のにおい
天道虫
ふたつみっつと
数えつつ
明日の
夢へと還 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44