都心の驟雨にアスファルトが匂い立つ。
ここの緑に匂いは無い。
私は長年連れ添った悪習と手を切ろうとするのだが、
そんな心意気も地を這う無数の影に踏みにじられてしまう。
人を旅へと誘う ....
薄給を補うための朝刊配り
早起きは三文の徳
それとも
貧乏暇なしか
夜が青く澄み始めるころ
{ルビ静寂=しじま}に溶けだす光の産声に
早起きで貧乏で
徳もなければ暇も ....
1
灰色のソネット
燃え尽き、まっ白な灰に
なり、風に散った、
夢がまだ、今も瞼の裏で、
燃えている。
焼けた誰かの夢を、
今日も世界が、
ふぅふぅ吹 ....
意地を張る胸なんて 私が風になって吹き飛ばしてあげたい
意地の自覚のない幼い心の齢に 強靭な風になって泣かせてあげたい
知ったからこそ 自分の心と普遍の心の泉をもって 伝えたい
時 ....
初めて名刺を作ったころ
職場には峰が幾つもあって
明るい未来が透けていた
登りはじめて気付いたことだが
山道は九十九(つづら)折り
いくつかのコーナーには
清水がキラキラ輝いて
口を ....
愛がほしい
信頼がほしい
積み足しで
満たされようとする
こころ
でも
それは
きっと
違う
ずいぶん前に
母に云われたことを思い出す
何かをしてもらいた ....
命がいる、私の中
童がいる、私の心
愛が要る、私の声
あなたはいる、この世界
ただ
ずっと、ずっと
繋がっています
君はクラスの中でただ一人
輝く褐色の肌を纏った男の子
幼児部の時は
「お母さんに会いたい」とよく泣いていた
お母さんはさぞかし優しい人なのだろうか?
遠足の日 君のお弁当は
ポテト ....
モノクロの映画が、僕の方を、じっと観ていた。
僕の黒い瞳は、、薔薇色の少女の口元だけを観ていた。
こんなにも、楽しそうに、君は笑ってくれてたんだ。まだ、君の、
弾けるような笑顔がそこにあった。
....
猫でした
まちがいなくねこだったと思うのですが
定かではありません
幸せだったかもしれませんし
そうじゃあなかったかもしれません
宿無しだったのはたしかです
いまでもたいして変わり ....
目白鳴くプラスチックの菩薩像
朝の美しい光の中へ船出しようと窓際に帆船が停まっている。
今まさに新しい航海が始まるのだ。
周りを見渡すと思いも新たに船出しようとする人達のなんと多いことか。
口惜しいのは、この朝の光が決し ....
青いドームを突き破れ!
そうして憧れは
宇宙の彼方まで飛んで行くことだろう
僕らは青いドームの下にいる
まるで手の届きそうな天井に
僕らはいくつもの夢を馳せる
あの青い空間は一体何 ....
滑べり堕ち、砕け散った破片の
あまりにも激しい叫びが
その一瞬の、すべてを
切り裂く。
慌てながら抱きしめた手を
深く、鋭く、切り裂いた、
あの日の、
傷口から
一筋の想いが
....
白木蓮の花びらが
届かなかった手紙のように
散り落ちている
強い風の吹く
五月の日暮れ
咲いたばかりの桜が
ちりぢりに
遠くへ吹き飛ばされていく
行かないで・・
白木 ....
架空の手紙を書きました
咲いて間もなく突風に打たれ
瑞々しく散った桜のように
泣くでもなく微笑むでもなく
同じ景色の縛りの中で
そこはかとない諦念の香りに包まれて往く
ひとつのイメージへ
....
もうすぐ
月とスピカがすれ違う
昔から
すれ違う月とスピカに願をかける癖
月の女神アルテミスと
子のスピカの女神アストラエア
親子の女神が楽しく出会うタイミングで
上機嫌 ....
「本日は晴天なり、本日は晴天なり
只今、マイクのテスト中
本日は晴天なあり」
朝礼が始まる
五月の風は希望に満ちて
教師たちは
民主主義の権化であった
JFKが暗殺された
生き ....
この国では
国民が憲法を守るのではなく
憲法が国民を守っているのです
憲法は国民を縛るのではなく
為政者を縛り
国民の
自由と人権と主権を
守っているのです
不戦の誓いも
そのた ....
冬の雪よりも深い、春のかなしみを
憂えるあまり、咆哮も彷徨もせずに、
ただ、ひとり揺り椅子に眠っていたのに、
彼女はとつぜん、
頁をめくるように、
眠りから解かれた。
カーテンの向こう ....
1
動物園の規則正しい給餌や
健康で安全なゲージに
拘束されることを嫌って
自然界へ飛び出す鳥がいる
自然界で生命維持するには
喰われることのすくないけものでも
ストレス ....
公園のベンチにすわって深呼吸をする。
遠くに青い山が見える。山はいつも見る風景の中に、変わらずにある。
おじいさんにもらった山である。
というのは真実ではない。
自分の詩の中で、自分勝手に自分 ....
新しい財布を買ってから
不思議なことに
お金に困らなくなった
迷信かもしれないけど
新しい財布を買ってから
人でなしになることもあったけど
人になることもできた
....
心の庭にヒヤシンスが咲き乱れている。
私は悲しみを言葉にする者。
拙い言葉で眼前のキャンバスを汚す事になろうとも、
現実を直視し、血のたぎりを一筆で描ききる。
昨日の悲しみが今日に及ばない ....
もくれんの
白いたまごが
割れると
たちどころに
小鳥が生まれ
空にむかって
さえずりをはじめる
風が吹けば
はばたく真似事もする
翼は
永遠に無垢なまま
飛び立つことをしないま ....
冬が去ったとは言え
霧に覆われ風にさらされる離島礼文
ようやく萌え始めた草の緑に
きりっとしまった白い袋
鎌倉武士の母衣が花開く
かつては
ニシン漁の男たちが
往来を始める島の ....
Kとのみ名乗るおとこがいた
足の下の、10インチ四方のみ
そこにKは立っている
立ったまま眠り
一本のペン
一枚の紙切れ
夢を綴った
そこにのみ意味があるかのように
不本意にもKは ....
パンジーの隣に
スィートアリッサムを植えようとして
移植ごてを手に
しゃがんでいた
視界をよぎる小さなプリズム
見上げれば
空はどこまでも青く
あたたかくなりましたね
本当 ....
原潜のエンジン音や蜆取
喜びはすぐ目の前に広がっているというのに、
いつもその手前で足を挫いている。
先を急ぐばかりに、目の前の数々の小石に躓き、
自ら輝きを彼方に遠ざけてしまう。
若気の至りなどという言葉は ....
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