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過去は霞みに沈んで
昨日しか見えないけれど

未来はもっと見えない
目前に現れ始めて気がつく
それが昨日用意されていた
としても

交わらない直線が
全て平行などとは思わないが
平 ....
七月のある日 兄は ぼくを呼んだ
風通しの良い部屋に一人伏せていた兄は
「今度は帰れないかも知れない」という
「弱気なことを…」
ぼくはそう言ったきり次の言葉が出ない

幼少時父も母も病で ....
見たか?

見た見た!

聞いたか?

聞いた聞いた!

それで どう思う?

ま ここは
見なっかったこと 
聞かなかったことにして…
前を歩いていたあなたは
病棟をつなぐ廊下の途中で 
ちょっと振り返って
「じゃあね」と
奥の扉に入っていったきり…

少し左肩を上げ 
口の左端を上げてほほえむパジャマ姿の
あなた ....
ブリキの機関車が横向きに倒れ
プラスチックのミニカーが仰向きになっている
河原で拾った平たい石と
足の折れた甲虫の死骸の上で
スカートのまくれた人形と
鼻のかけた木偶が抱き合っている
形も ....
今日は町内会の清掃活動日
今日は春のウオーキング大会最終日

近所のかみさんたちが
雑草刈りしている

 あいさつはしないほがいいな
  気付かれないように行った方がいいな

か ....
何処に行くにも二本一組で
助け合って動く足に異変が生じた
左足の指の関節を骨折した
左の指先が大地に触れると
痛みが全身を走り頭に抜ける

医師は左はかかとで歩けという
左足を半歩前 ....
滞ることなく継続していく時間
の中に縒り込まれ生命
いつかは剥がされ
抜け落ちるとしても 
まだ先のはずであった

だが 
左足小指の
先に出来た米粒ほどの腫瘍は
細胞を溶かして ....
血管を流れる血のように
岩を滑る垂水が
ぼくの中に流れていたころ
ときどき 桃が流れ着く岸辺で
老女が野菜を洗い米をとぎ
男の子が笹船に乗って
都の方へ出かけて行った

川の畔の小さな ....
初めて名刺を作ったころ
職場には峰が幾つもあって
明るい未来が透けていた

登りはじめて気付いたことだが
山道は九十九(つづら)折り
いくつかのコーナーには
清水がキラキラ輝いて
口を ....

動物園の規則正しい給餌や
健康で安全なゲージに
拘束されることを嫌って
自然界へ飛び出す鳥がいる

自然界で生命維持するには
喰われることのすくないけものでも
ストレス ....
冬が去ったとは言え
霧に覆われ風にさらされる離島礼文
ようやく萌え始めた草の緑に
きりっとしまった白い袋
鎌倉武士の母衣が花開く 

かつては
ニシン漁の男たちが
往来を始める島の ....
おんなが三人
テーブルを囲んで笑い声を上げていた
おとこは 
二つほどテーブルの間を置いて
ゆったりとコーヒーカップを口に運んでいた

おとこはおんなをこっそり眺めていた
週刊誌を読 ....
 1
指先の吐き出す音は
宇宙で絡み合う
としても 
糸の無い繋がり
華やかな彩りも 
時の経過に
消える夜の虹
孤高の富士は
大地に根を張り
世界の山々と融合するけれど

彼 ....
食べ物買うのに言葉はいらない
ましてや売る人の心など

風邪薬は効き目を買う
心配そうな言葉など鬱陶しい

陳列棚から取り出した飲み物
黙って値段を示せばいい
すぐに飲もうと だれと飲 ....
乗用車一台通れば
塞がってしまうほどの道幅
両側の家並みに
人は暮らしているのか
いないのか
どこも無口で
通り抜けるにも 身構えて
足音忍ばせ 
辺りに目を配る

ここは都会 ....
はるののでツクシをつんでいるとき
かんぼくのあいだを とおりすぎるかげ
そいつはイタチだ

かんぼくのなかをのぞくと
なくしたスーパーボールや
ミニカーがみつかるにちがいない
イタチのこ ....
水平線に
盛り上がった入道雲
の中へ
入ってゆく船
をあなたと
見送った日

渚に係留された
氷川丸を眺めて
赤い靴の少女を歌い
砂に埋まった啄木の蟹を
掘り出した二人は
こぼ ....
どうしたら高く上がるかですか

風を読むことです
どんな風が 
どのようにふいているか
知ることです

人の顔色をうかがう風には
誠意がありません
風に乗って
高く上持ち上げら ....
出来るでしょうか
目に見えない心を磨くことなど
出来るでしょうか
形のないものを磨くことが

かつてある食品会社が
「水を磨く」と言いました
大河の水は汚れています
池の水も汚れて ....
子どものころから知っていた
その今度は 
生涯 来ないこともあることは

だから
続きは また今度 
と言われたら
諦めるしかない
父の{ルビ骨=コツ}は先祖代々の墓には入れない
同じ仏教でも宗旨が違うから

そんなことを言ってきたのは
父の後を継いだ弟
新たに入った宗旨に則って 
その寺の経営する墓地に
墓を買った ....
騒いでいる状況じゃない
ことぐらいは分かっている

騒いでいる間に人生が終わる
ことなど無いこともわかっている

それでも騒ぎたいときがあるだろう
騒いでいるときは不安や苦悩を忘れること ....
夜店の風鈴のように
蔓棚から垂れて枝にぶら下がり
秋風に吹かれている卵
茶色く毛羽立った上着の中は
半透明なグリーンの輝き

物珍しさと
手間の掛からない栽培が
流行を呼び 
夏は陽 ....
秋を着飾った紅葉が
全ての葉を落とした

裸になって
冬の薄い日差しを
目一杯受けたいのだろう

やがて来る
春のために
 昨年末開業いたしました「雀のお宿」 過日、一組のお客様が賑々しくご出
立されて以来、お声を掛けてくださる影も、お立ち寄りくださる方も見かけま
せん。昔のように、近所を徘徊なさる群雀さまの賑や ....
 3 足のある眼鏡

わたしの仲間は誰でも言うのだが
決して信じてはいなかった
「眼鏡には足がある」など

だが 今朝 眼鏡が消えた
確かに洗面台の横に置いたのに
顔を洗っている間にど ....
                 
紅葉した山腹に 村落が置き去りになって
その上空を横切る高速道路を車が飛んで行く
山に張り付いた林道が村落から延びて
水筒を肩からたすきに掛けた男が一人登っ ....
人の体温に恋して
霊は家に住み着くらしい
頼んだわけでもないけれど
周りにたむろする木や草の
のぞき込む好奇心を追い返し

昼間 人が出かけても
テーブルの下 柱の陰
ドアの後ろの暗が ....
 
路地裏を通り抜ける豆腐屋のラッパは
夕暮れによくにあう

かくれんぼの時間が削り取られて
ひとり帰り ふたり帰り 
隠れたまま鬼から取り残さて
気がつけば夕闇につかまっていた
どこ ....
tamamiさんのイナエさんおすすめリスト(30)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
近視- イナエ自由詩11*15-2-23
寒い夏- イナエ自由詩22*15-2-2
日光三猿- イナエ自由詩10*15-1-21
あなたは…- イナエ自由詩12*14-12-25
人生- イナエ自由詩11*14-10-6
何となく後ろめたい時- イナエ自由詩15*14-9-3
かかと歩き- イナエ自由詩17*14-8-9
喪失ー友へー- イナエ自由詩15*14-6-26
ボクの中を谷川が流れていた頃- イナエ自由詩15*14-6-24
- イナエ自由詩12*14-5-12
風にそよぐ掟- イナエ自由詩12*14-5-3
レブンアツモリソウ- イナエ自由詩14*14-5-1
夕暮れのひととき- イナエ自由詩8*14-4-14
夜の蜘蛛- イナエ自由詩13*14-4-8
余計なお世話だけれど- イナエ自由詩18+*14-4-4
- イナエ自由詩9*14-4-2
イタチ- イナエ自由詩18*14-3-26
山下公園にて- イナエ自由詩10*14-3-20
凧2- イナエ自由詩10*14-3-8
磨く- イナエ自由詩22*14-2-26
また今度- イナエ自由詩11*14-2-10
墓と骨- イナエ自由詩13*14-2-4
お祭り騒ぎ- イナエ自由詩13*14-1-25
キウイフルーツ哀歌- イナエ自由詩13*13-12-24
裸木- イナエ自由詩15*13-12-12
雀のお宿廃業のお知らせ- イナエ自由詩15*13-12-5
年を取るとはこういうことか2- イナエ自由詩17*13-11-24
亡き従兄弟に捧げる- イナエ自由詩7*13-11-6
家霊- イナエ自由詩22*13-11-4
日暮れ刻- イナエ自由詩25*13-6-27

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