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やあ天気が良いからなにか灰皿の代わりになるものを持ってきてくれないかと言うと掌をむける。あまりに白くて使いものにならないな、どこにいたって日かげをつくってくれるのならまだしも。
これはほんとう ....
鳴るように
色付いて
はばたくように
ふれあう
それは
ひどく
不器用な鳥たちが
抱きあい
落下する 夕暮れ
今日がなかなか終わらないで
あしぶみする明日がくさっている
あたたかいのは
泥だった
あたらしいものを食べたくて
舫いをはずしたのに
気がつけば
泥をさがしている
これは
....
ささくれを剥いたところで息をつく (これがいつかの咎だったなら)
おちてみて気づく深さの泥沼の いつか自分でそそいだ泥だと
あわれみを十本のゆびにたぐらせて いい子 いい子 と その羽 ....
きょう一日をやりおおせた
とおもうのは
はげしい気もちをした日とか
ふかく考えをした日とかでなく
よっぽどの働きをした日でもなく
さるすべりの花の咲いてあるのを数えたり
五つからな ....
さか立ちして
空でおよいだ
ふようの花が
あしたしなびるのに
ぱあ とひらいてみせたりするさまが
頬紅とにている
あるいはいつものぼる太陽と
にているかもしれない
あしたし ....
あかぐろい肌をして
山盛りの雲をあおぐ
雨を待つわずかの間に
なんども恋におちる
季節はぎしぎし言う
発情のおわらない猫が
前足で引き留めている
濃緑が
少女を溶かしてしまった ....
外へでればぐんと伸びるような青空、目だまの焼けそうなアスファルト。段ボールみたいに日焼けして香ばしいにおいのする子どもたちとか、中学生くらいの男のこ。少年の汗ってどうしてあんなふうにぎらぎら反射す ....
銃
たとえば
装填されていない銃ほど
うつくしいものがあるか
街、
羽を抜かれた鳩が飛ぶ
仰向けで泳ぐ魚
黒鍵のないピアノ
銃
引き金を引くときは
かわくほど目 ....
谷底に
毛布を敷いて
300日まえの
ことばを聞いている
気の遠くなる
甘やかさのなかで
遺書のような
うたを編んだ
花が咲いて
枯れるくらい
自然なことなら
実も成ったかしら
わたしたち
日も浴びず
水も貰わず
季節を泳ぎもしなかった
朝焼けを閉めだして
つくった夜に
プラスチックで ....
よるに
向かいあって
ぎざぎざした
あさが来てもまだ
ぎざぎざした
こころが
溶けあわないので
せめて
からだだけでも
と
寄りそってみても
ぎざぎざした
月が
....
たとえば、バスに乗るとして。
バス停で、バスを待っていることしかできない。ぎりぎりで走りこんだり、20分待ってもこなかったり、バスは、するけれど、ただ、わたし自身は、待つか、待たないか、それを決 ....
こころが
あまりに泳ぐので
からだは
すっかりさかなのようになった
くらやみで
もの見えず
熱のほうへと泳ぐこころに
からだは
ぴったりよりそい
もとめるものをもとめてい ....
愛と詩はべつものよ
花瓶の花と荒野の花とに
どれほどの貴賎があるだろう
ただ咲くように咲け
それをときどきやさしく飾るのが
詩の役割だろう
あるいはこれが
さびしさなら
まだ よかったね
線路のわきの
姫女苑
のこった青に
境界を引き
のばした先に
ぬれた鉄柵
あるいはこれに
なまえがあれば
なぐさめ ....
ひかりがあふれすぎて
窓が溶けている
高速道路のインター、
群れ、群れ、群れ、群れ
むこうのほうに少し風が吹いているのが見える。
川沿い、
はんたい側には
ささやかな川
流 ....
とくべつかたい
ピスタチオのからは
男の子に剥いてもらうべき
力みながらも丁寧な
あかく膨張する指さき
そんなふうに
やわらかい衣服もおんなじように
色っぽく剥けばいいって思って ....
そのほうがいいよ
世界を
つくるよりも
目を
とじて
そっと
ふたをする
そのほうがいいよ
血のたりない地面に
なめまわされた夢を
よこたえる
きれいにつみかさねた夜でできたお城
ぴかぴかに磨かれた言葉たち
いい匂いのする分厚いカーテンをくぐって
しらじらしい朝をくぐって
いくつものいくつもの
いくつもの肌をふみにじって
....
ゆらして
ほどく手つきが
りぼんをあつかう様で
とてもうつくしい
はさみでしごいて
カールをつくる手もと
わたしは
でも
りぼんでも
贈りものでも
ない
はやくこ ....
夜がながれております
黒です
いっぽんの
さむざむとした白が
なぶられるように揉まれております
黒です
それ以上のことが
なにか目の前でおころうとしているのに
ただたちつく ....
わたしたちは誓いました。そこで
わたしははじめて誓いを立てました
(わたしはいつもそうです、「まさにそのとき」が来るまで、それが、いったい何なのか想像することもできない、そしてそれに立ち会 ....
そこまで行きたいのなら
ボートを編んでおいで
おもいきり細く
しなるような枝で
祈りはきっと
どこへも届かないだろう
願いはきっと
どこへも結ばれないだろう
それでもそこまで行 ....
風のふく場所まで、手をとって、登って。いつぶりかわからないくらいになつかしい場所へ。なんにも信じていなかった。予想できなかったというべきかしら。なにひとつ。
それでも、「いつか」はこうしてや ....
雨いくつか
ふりそそぐなかで
思いだしている
傘をさすのをあきらめて
抱きあった
抱きあえば
しんまで濡れて
雨ふるふる
あきらめる
いまごろどこかで
かわいて ....
みじかい夜がおわって
きょうがはじまると
君のてのひらがすこししめってくる
青いような赤いような
夜あけまえ
だんだんとあかるくなってくる
あれは
かきあつめた命が
燃えるから
....
鳥は
飛ばなかった
その日
手紙は届けられず
果実は実らない
ペンは握られず
扉は叩かれなかった
あれから
ずい分とながい時間が経ち
しかし
雲は流れず
船は揺られな ....
ねそべってみてたら
時間に夜がつっかえてしまった
きみの胸のすき間に
抱き合えば
世界が
しんと眠る
きみはちいさなものを
あたためて
あたためて
あたためて
殺す
言わなかった
できなかった
立ちすくむことで
伝えようとした
それすらも
奪われ
雨が乾くほど
時が過ぎ ....
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