観覧車の回る速度と
自転する地球の速度が等しい
わたしは丸い窓から
母を見ている

南中する
太陽と同じくらいの
かつての父の高さから

父はひとつ先の
観覧車に乗ってる
 ....
 
春が訪れた
ある晩
列車に乗って
終着駅にたどり着くと
妹はまだ
待ってくれていた

春夏秋冬
それからもうひとつの
季節があった
かつてひとつの
家族でいられた季節

 ....
 
鉛筆の匂いをさせて
あなたは春になった

尖った芯が
しだいに丸くなって
やさしくなった

声、かもしれないものを
たくさんスケッチした
知ってる言葉も
知ら ....
 
春になると
わたしは
似顔絵描きになります

小さな腰掛けに
ベレー帽
お金はいりません

四十枚目の春
似顔絵はやはり
ちっとも似てませんでした
妻のやさしさ以外は

 ....
 
鰈を煮る
味を染みこませるため
クッキングペーパーを被せると
白い肌や
薄黒い鰭や
卵の赤い色が透けて見える

顔に布を被せられた
祖父の顔にも
同じ色が透けて見えていた

 ....
  
と、言って
帰ってきたのが
わたしだとしたら
いったい
わたしは誰なのでしょう

と、考えてみたところで
わたしは
わたししかいない

ただいまのわたしと
おかえりの
 ....
 
陸上競技の大会で
入賞した
優勝ではなかったけど

おにぎりが
少し塩辛い気がした
母さんが少し
変わった気がした
僕も

晴れわたる空
というわけではなかったけれど
い ....
 
しっぽを空へ
ぴーんとのばして
ここにはいない人たちと
話していた
わたしたちには
そんな時代があった

ところがある日
しっぽをのばすどころか
しっぽを持たない
人に出会っ ....
 
布団の中から
黄色い豆電球を
ぼんやりと見つめてるのが好きだった

とても無機質で物静かな
豆電球と向かい合って
顔のない人と対話してるような
自分の顔をを見つめているような
そ ....
 
兄さんが帰ってきた

兄さんは
少し自信のなさそうな
顔をしていたけれど
兄さんの声は
あの頃と変わらない
兄さんのままで
兄さんがいないあいだ
僕がどれだけ不良になって
自 ....
 
たかのり君
と呼んでしまった
生姜焼き定食のことを

もちろん
たかのり君が
生姜焼き定食であるはずはなく
けれども
一度そう呼んでしまえば
そのようにも思えてきて
こんがり ....
 
誰もいない掌に
ひとり
立っていた気がする

地平線を探して
生命線に沿いながら
ひとり
歩いていた気がする

それはわたし
ではなかったかと思う

陽が落ちて

重 ....
 
調律が合わなくて
ピアノが港を発ってゆく

小さな港で
すばらしい音楽を奏でていた
そんなピアノが

指先から音がした
触れてはいけなかった
白と黒の鍵盤に
わたしの小さな罪 ....
 
あの日とあの人が
ひとつだった
あの頃を知っている

お父さんはおれで
お母さんはわたしだった
そしてぼくは
いつまでも
ぼくのままだった

もう戻れないかも
しれないけど ....
 
ふとその人の
意図してることに気がついて
糸がふるえている

わたしは煙草を銜えながら
返信メールを
打ちはじめたけれど

意図の糸が
いつまでも
ふるえているので
確信を ....
  
あるべきところへ
おさまって
けれど
はみだしたところに
やさしさがある
ほんとうの

うちのつまにも
はみだしたところが
きっとある
ほんとうのやさしさが
うそばかりの ....
 
ひさしぶりに実家に帰ると
お父さんが
船になっていた

甲板には母がいて
いつものように洗濯物を干したり
いい匂いがしてくる
調理室で料理をつくるのも
やはり母だった

嫁い ....
 
背中に生えていた
光の羽が
ふたつに分かれながら
ずれて
鳥のからだだけ
ひとつのまま
あの空へ消えてゆく

羽がひとつになって
あの空を
自由に羽ばたいていた
そんな季節 ....
 
青が好きなのです
その悪魔は
あくまでも青が好きなだけで
かんたんに
ひとは悪魔になるのです
わたしの

青が好きなのです
わたしも
ほんとうはそのことを
まだ告げてはおりま ....
 
このバスに乗れば
たどり着けるところが
あるのだろう

このバスに乗れば
待っている
人に会えるのだろう

たとえばそれが
けい子さんだとしても

このバスに
乗らなけれ ....
 
冷却期間をおきましょう
二人が
恋にならないように

ほどよく冷却されたなら
ゆっくりと
解凍してみましょう

まだあぶないと
思ったら
また冷凍庫にもどしま ....
 
ふりむけば植物しか生えていなくてもそこで生まれて生きたわたし

さといもを剥くために研ぐ包丁にうつるわたしさといもがひとり

街と人逢うたびわたし旅をした別れの数とひとしい夜だけ

 ....
 
あの日
あなたはひとりだった

わたしも
あの日ひとりだった

今はあなたはふたりで
おなかには
もうひとりいるのだという

わたしも今は
さんにんだ
 ....
 
かなしみに
慣れてしまったなら
ほんとうの
かなしみなんて知らない

かなしみが
暮らしになったなら
かなしみは
いつもともだち

ほんとうの
かなしみを
ひた隠しにした ....
 
エレベーターに乗ると
上へまいります
と声が案内するけれど

ほんとうは
上にも下にもたどりつかない
変わらないものが
この空のどこかにある

世界はあの頃と  ....
 
ヒトのかたちを持たない
友だちが
殖えている

わたしのマイミクシィは
ついに五十をこえた

文字で言葉を話すから
人間なのだろう
とは限らないけど

ふと思う
彼らはた ....
 
先生おトイレにいってきます
そう言って
だれもいない廊下を歩いていた

ある教室の前で
あれは冬だったのか
夏だったのか
さだかではないけれども
とにかく寒く
暑かったかもしれ ....
 
そらのどこ
とぼくがたずねると
きみは
そらのとこ
とこたえるのだった

だからぼくはまた
そらのどこよ
とたずねてしまうからきみは
そらのとこよ
とこたえつづける
いつま ....
 
あなたはセーラー服であらわれた
わたしも学生服であらわれた
もう高校生ではなかったけれど
二人は約束の場所にいた

店にいた高校生が
みるみる生まれたばかりの子供になって
お父さん ....
 
バスが終点に近づくと
乗客はわたしたち家族以外に
誰一人いなかった
息子が車内をみまわして
どうしてみんな座らないの、と
終点に着くまで
そんな不思議なことを
言い続けていた

 ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
観覧車自由詩609/3/11 3:23
ある晩、春は自由詩509/3/10 2:55
春の似顔絵自由詩709/3/8 23:52
四十枚目の春自由詩209/3/8 20:55
自由詩409/3/7 19:31
ただいま自由詩209/3/7 6:30
美しい夕暮れ自由詩709/3/6 3:03
しっぽの話自由詩509/3/6 0:14
光のしっぽ自由詩3*09/3/5 3:16
兄からの手紙自由詩409/3/4 3:06
とおい水自由詩15+*09/3/3 2:29
掌に、影法師自由詩409/3/1 1:25
航海自由詩1009/2/28 2:41
あの日とあの人自由詩009/2/26 23:32
ふるえる糸自由詩4*09/2/25 22:22
三月自由詩5+09/2/25 2:05
自由詩809/2/24 23:30
光の羽自由詩009/2/24 1:48
ブルーデビル自由詩2*09/2/22 23:04
停留所自由詩009/2/22 22:45
冷却期間自由詩109/2/22 14:44
ぼくの青い空から短歌109/2/21 22:06
自由詩309/2/21 14:44
遠距離バス自由詩509/2/21 2:02
目的地自由詩109/2/20 23:45
ロボット自由詩4*09/2/20 0:01
おといれ自由詩709/2/19 2:04
そらのとこ自由詩1009/2/18 3:16
〔草稿〕人形の季節自由詩3*09/2/16 23:10
light the light自由詩6*09/2/15 23:37

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