「今、フランキスとイリアスはアースランテに向かっております」
「アースランテだと? 何がそんな行いを引き寄せるのか?」
「祭祀クーラスは、アースランテとの和平を画策しています」
「まさか! クー ....
憤るアイソニアの騎士を、盗賊ヨランは窘めた。
「騎士様、もしやあなたは祭祀クーラスを殺すつもりですか?」
「奴は、剣の切っ先でいくら八つ裂きにしても足りぬ。
 幼いイリアスを誘拐するなど、為政者 ....
アイソニアの騎士は、盗賊ヨランからの情報によって、
イリアスがフランキスの人質にあることを知った。
そして、今はアースランテの国内にいると。
「祭祀クーラスめ、奴は何を考えているのか。

  ....
遠い遠くの、あれは海?
わたしの心を満たしている。
それは快楽にはほど遠く、
何か罪めいた予感に満ちている。

あれは海? 遠く遠い。
砂浜に寝転んで昼顔の花を見ながら、
いつか、いつだ ....
眠れない夜 眠れない夜。
窓の外には月明かりが照らしている。
その一方で、
西の国では大風が吹いている。

雨は来るのか?
雨は来るのか?
期待と不安の狭間で、

心は風鈴のような微 ....
朝の歌を、小鳥の声にまぎれて。わたしはコーヒーを飲む。ねむれない。

カルフォルニア・ミソサザイが鳴いている。わたしの全て否定しているのだ。

カラスがゴミ集積所を漁っている。猫も。敵同士なの ....
エインスベルは、オーバ・ニーチェに潜入した戦士エイソスや、
独自行動を取るアイソニアの騎士や盗賊ヨランに関しても懐疑的だった。
もしも己の利益を取るのであれば、あるいは無私の精神で行動するのであれ ....
その夜、ヤーコンのエイエントスが、ラゴスに宣戦布告した。
ヤーコンから、ライランテ大陸の西端にあるラゴスまでは、
早馬を使っても十日の距離がある。
エイエントスの王であるコイノス・ヤー・ガレンは ....
一方、そのころエインスベルも迷いのなかに包まれていた。
イリアスの所在は分からない……エイソスの報告では、
フランキスがイリアスを連れてどこかへと赴いたということだった。
アイソニアの騎士はその ....
フランキスを戸惑わせている事柄がもう一つあった。
それは、ライランテ大陸の東方にあるヤーコンの諸国家群の意向である。
彼らは、アースランテと足並みをそろえようとしていた。
そうして望むものは、も ....
フランキス・ユーランディアは戸惑いの表情を隠せなかった。
それを見て、イリアスが口を開く。
「貴方の面貌を察するに、交渉は上手くいかなかったのですね?」
「ふむん」フランキスは目を上げる。「貴女 ....
梅雨空の果てしなく続く闇を越え、野山の果てに虹を見るかな。

今年最初のアジサイを見た。それでどうとする、我もなきにして。

日々徒然な、なんともなしに歌を歌う。哀れはいずこ、我には無くして。 ....
「恐れ入りました。祭祀クーラスには、帰国後に、
 あなた様のご意向をお聞かせしましょう。しかし、本当に……
 イリアス様の生殺与奪を我々に任せるというのですか?」
「当然だ。王室には王室の流儀と ....
「奴隷も捕虜も?」フランキスは息を飲んだ。
現状、クールラントがアースランテに負けないとは思っていた。
第一次ライランテ戦争の後、アースランテはその国土を、
三分の一ほどにまで減らしていたのであ ....
「グーリガン・ハルガンテは、この度のファシブルとの
 戦争に参加しなかったことにより、五年間の幽閉を命じる。
 イリアス・ガ・ラ・ハルデンも、その頃には目が覚めていることだろう。
 彼女は、グー ....
「それでこそ、アースランテの女だ。
 アースランテには、臆病者はいらない。男でも女でもだ」
「しかし、妙なことがあります。イリアス様は、
 自分が王位継承者だとは知らない模様でした」

「彼 ....
「しかし、アイソニアの騎士、グーリガンが諾とは言いますまい。
 彼が敵となることは、貴国にとっても大いなる禍をもたらすと存じます」
ここまでは、祭祀クーラスの思った通りであった。
しかし、ハッジ ....
「祭祀クーラスはつくづく間抜けだな。近いうちに命を落とすかもしれんぞ」
「それが、デーモンであるラーディガンと契約した国家ですか?」
「デーモン? 所詮は我々人間とは違う種族。
 契約が身に合う ....
「ところで、お前は馬車何頭で来た?」
「はい。三頭でございます」
「汝、イリアス、そして護衛の者か。だが、
 我が軍はすでにラゴスへと攻め入る準備が出来ている」

ハッジズは続ける。「汝らが ....
「あなたは一体……ラーディガンとどんな盟約を交わしたのですか?」
フランキスはその顔をこわばらせながらハッジズに尋ねた。
「ラーディガンと? それは些細なことだ。この世の人間の、
 半数を葬る。 ....
ハッジズのこの提案は、ラゴスと争うにあたっては願ってもないものだった。
しかし、ハッジズの野望はそこにはない。いずれは、
ライランテ大陸のすべてをアースランテの手中に治めるつもりだった。
だから ....
「この戦争を止める、とは申しておりません。
 ただ、我が国は貴国との和睦を願っております」
「人質を取っておいて、よく言う。しかし、
 イリアスは人質の用をなさぬぞ」と、ハッジズの声。

「 ....
フランキスはアースランテに王である、ハッジズとの面会を取り付けた。
アースランテ軍は今、全軍がラゴスへと向かおうとしている。
そんな中、ハッジズはクールラントからの使者を疎ましく思っていた。
( ....
そのころ、イリアス・ナディを乗せた馬車は、
アースランテの首都ハンザガルテに迫ろうとしていた。
フランキス・ユーランディアが同道している。
(なんとしてでもアースランテとの和睦を取り付けねば…… ....
ラゴスの議事会議長、ケンパ・ハルラージャは言った。
「国家の威信と国民の命、どちらが大切ですかな?」
アウゼルは一瞬言葉につまった。
「いずれもが、国家にとっては大事である」

アースランテ ....
かくして、アースランテ軍の剣先はすべてラゴスへと向けられることになった。
この二年の間に復興を遂げたアースランテを、
アウゼル・ローガンテも侮ってはいなかった。
アースランテは民兵の質も高い。
 ....
こうしてファシの街は、アースランテの手中に落ちた。
しかし、アースランテは傀儡政権を置くことはなかった。
あくまでも、ハッジズはファシブルを併呑しようと考えたのである。
当然、ミーガンテもその牢 ....
激戦は一週間続いた。しかし、ラゴスからの援軍はなかった。
アースランテの主力部隊は、ファシの宮殿に押し寄せる。
クレール・ア・ラ・ガランデは叫ぶ、「マリアノスはどこだ?」
だが、宮殿内にはすでに ....
今、ラゴスの首都ラディアに向かって、
ファシブルの早馬が駆け付けようとしていた。
アースランテの軍勢がファシの城壁内に侵入してから、
ちょうど二日目のことである。

しかし、ラゴスは未だに静 ....
ハッジズは一向に進まない攻撃に歯噛みをしていた。
(ファシブルの魔導士たちがこれほどの力を有しているとは……)
「前衛部隊はどうした? 前衛には剣士たちが当たっているのであろう?」
ハッジズは息 ....
朧月夜(929)
タイトル カテゴリ Point 日付
アイソニアの騎士、立つ(三)[group]自由詩1*23/7/18 0:04
アイソニアの騎士、立つ(二)[group]自由詩1*23/7/18 0:04
アイソニアの騎士、立つ(一)[group]自由詩1*23/7/18 0:03
遠く、遠い……自由詩2*23/7/16 0:58
それぞれの孤独自由詩6*23/7/11 2:52
短歌雑詠短歌6*23/6/28 5:54
エインスベルの迷い(三)[group]自由詩1*23/6/26 5:50
エインスベルの迷い(二)[group]自由詩1*23/6/26 5:49
エインスベルの迷い(一)[group]自由詩1*23/6/26 5:48
フランキスの戸惑い(二)[group]自由詩1*23/6/21 22:28
フランキスの戸惑い(一)[group]自由詩1*23/6/21 22:28
短歌雑詠短歌3*23/6/11 17:28
アースランテとの駆け引き(十四)[group]自由詩2*23/6/3 13:49
アースランテとの駆け引き(十三)[group]自由詩1*23/6/3 13:48
アースランテとの駆け引き(十二)[group]自由詩1*23/6/2 12:46
アースランテとの駆け引き(十一)[group]自由詩1*23/6/2 12:45
アースランテとの駆け引き(十)[group]自由詩1*23/6/2 12:44
アースランテとの駆け引き(九)[group]自由詩1*23/6/1 10:14
アースランテとの駆け引き(八)[group]自由詩1*23/6/1 10:13
アースランテとの駆け引き(七)[group]自由詩1*23/6/1 10:13
アースランテとの駆け引き(六)[group]自由詩1*23/5/31 3:02
アースランテとの駆け引き(五)[group]自由詩1*23/5/31 3:01
アースランテとの駆け引き(四)[group]自由詩1*23/5/31 3:01
アースランテとの駆け引き(三)[group]自由詩1*23/5/30 2:51
アースランテとの駆け引き(二)[group]自由詩1*23/5/30 2:50
アースランテとの駆け引き(一)[group]自由詩1*23/5/30 2:49
ファシの戦い(十九)[group]自由詩1*23/5/27 17:03
ファシの戦い(十八)[group]自由詩1*23/5/26 16:03
ファシの戦い(十七)[group]自由詩1*23/5/26 16:02
ファシの戦い(十六)[group]自由詩1*23/5/26 16:01

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