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岩に囲まれた
岩が叫ぶ
陽は圧され
少し 撓む
塔よりわずかに高いところに
見えないものの軌跡が残り
何処よりも早く暮れてゆく
音けす音を撒きながら
....
陽光の糖度が上がり口のなかさらに甘くなれさらに甘くなれ
つぼみには蝶の群れただ渦の群れ細い林のざわめきの群れ
一本の指に龍の火かがやいて通路も爪もはばた ....
自らの終わり知らぬほど咆哮し余りし皮を刻み喰み吐く
引き摺るを引き摺りてなお引き摺りて男の無能ほとばしりゆく
洗濯機街の道は皆洗濯機洗うふりして光を奪う
....
雪に沈んだ境界を越え
ひとつの足跡が響いている
野と原を野と原へつなぎながら
冬のむらさきは照らされてゆく
ひもとかれ
ただそのままの土が冷え
空へ 息を吹きかける ....
雪うさぎ空の城壁うち砕く
目から目へ熱の{ルビ帷子=かたびら}奮えたつ
風の層やわらかな{ルビ襞=ひだ}たなびかす
濡れ雪の縦すじ仄か残り ....
赤いもの何も見えずに赤いもの
削るたびやわらかなもの焦がしゆく
保つ人五七五さえ保てぬか
はからずも何も無いこと晒したり
死 ....
暗がりが暗がりのなかを
剥がれながら落ちてゆく
滴が滴でなくなるまで
見つめ見つめ 見つめられてゆく
見えるものは そこにないもの
赤を隠した 白の毛糸玉
腕に咲く ....
何もない場所に言葉があり
血のにおいをしている
隠れていて
近づくと現われる
正しいはずのない言葉
目をあけられないほど
美しい
何も聴こえぬ光をまとい
....
血の声や冬の器の底に降る割れた鏡を受けとめる指
どこまでも此処は何かが生きる場所たとえ多くが絶え沈んでも
冬たちはただ冬のみであるかぎりおまえにそれを告 ....
灯りがついたら
目をあけよう
灯りがついても
目を閉じていた
灯りがつくこと
だけでよかった
夜を見わたす
坂の風の上
夜になれない
蒼がひとつ
蒼 ....
夕暮れを映す目に耳を寄せ
水の音を聴いている
水の音しか聴こえない
水の音を聴いている
火がこぼれ
また
火がこぼれた
到かないもののようだった
街より ....
実が実を噛んで
光は動く
うねるかたちが
午後をなぞる
あたたかい布
罪びとは
そこにそのまま
あたたかいまま
咽 骨 頬
まるい羽
かたち ....
ふいに終わる日
規則と壁の絵
路から径
灯と声の重なり
角から角
持たざる夜に
ひとつ わたす
棄てられた標の山を
風は昇る
地と空の雪
むすぶ波
真昼の ....
記念式典
歩道の上に
人の大きさほどの
鉱が置かれる
式典が終わり
鉱は五つに分けられ
そのうちのいちばん小さなものが
あやまって溝に落ちる
あわてて拾 ....
顧みられない壁の横で生まれ
白も黒も知らずに白と黒になり
街を隠す羽を動かしている
冷たいにおい
曇を遠ざけ
冷たいにおい
手の甲を踏む
街に沈む街
....
舌を外して
額につけて
すぎる光 すぎる光
ああ本日も
さわやかな曇天なり
脇道をふさぎ手のひら横たわる
雨の音の光さかまく深夜かな
かたちからまぶしいかたち引いてゆく
拒まれてそのままにおく冬装束
....
誰かれの造りし枠に詩人なし
説教をするのも聴くのも己れのみ
哲学が聞いて呆れる下半身
リア獣がリア充を喰う夜更けかな
....
空の端がひらき
地を歩む
ひかり負う背
河の痕をゆく
夕闇の路
無人の車が
はじまりをうたう
ひとりを乗せる
原の
つづく原の
根はまた ....
曇を燃し
曇を鳴らす
無塵の街
暮れてゆく
滴の原にはじけるもの
風を風にする光
ゆうるりと倒れ 起き上がる影
うた 手のひら うた
雨の左
....
夜や夜ひとつがひとつをすり抜ける
轢かれては蹴られては筆たけりけり
記憶しかないというなら冬を喰え
おのれから去る笑みこそがおのれなり ....
水の上の
白と黒の火
水に映らず
流れてゆく
森の奥を
森が動く
双つに分かれ
遠去かる
枝が描く枝
重なりのむこう
途切れた道のむこうに
....
はばたくばかりで飛べない暗がり
右目の奥を巡っている
音の無い
騒がしい動
葉の影がこぼれるなかに
歳をとらないものがいて
影をつなぎ 鳥を描く
少し離れた 冷た ....
渇くとせ指さきの冬終わるとせ
ふりそそぐ鎖骨のかたちしゃがみこむ
見ようともせずに見えては目をふせる
薄い紙おさえられずに泣く夜か ....
そうやってまだ父親を使うのか
父の目におまえはかけらも映らない
言えぬまま逝くものをまだ汚すのか
死んだとて父はおまえを許さない
....
夜が
片方の手に獲られる
片方の手に
片方の手が乗る
夜は
じっとしている
何もない場所にただ建てられた
何にひとつ隔てるもののない壁
霧の舟が ....
柱の光に触れては曲がり
道の入口に立ち 忘れてしまった
ひとつであり 向こうのもの
忘れてしまった
去っていった
また
去っていった
縦の響き
地図の作者
....
人のようにも
穴のようにも見える影が
石の壁に沈んでいる
黒を造る
三本の樹
黒より黒く
黒より低く
雨の日と揺れ
辺りの音と
異なる震え
わずかな ....
死地のように獣も
死地のように獣も
頭の上の宙空から
常に何かを発しながら
進む道を午後に変えてゆく
....
窓に映る窓に映る窓に映る窓の奥の
水も枝も光もひとつに
人の外からこちらを見ている
無いものを踏むたびにたちのぼる
生きものの夜
かがやきのない星に満ちた
小さ ....
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