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異なる季節の雪に埋もれて
じっと静かに咲いている花
かたちは声を待っている
すがたは声を知っている
道化のまわりに
積み重なる吸殻
泣けないもの
くすぶるもの
二から三へと流れる指先
後ろ手に札を隠し持つとき
風は冷たい
はためくテントの継ぎめから来る
....
灯が灯をまわる ゆうべの目
灯が灯を染める ゆうべの手
うなじにしっとり汗をかき
顔を隠して駆けてゆく子ら
隠した顔で笑み交わす子ら
見える客人 見えない客人
....
錆びた鉄柱が立っている
裂けめは花に覆われている
雲ひとつない空
掴むところのない空
川沿いの砂利道は
小刻みな縦揺れ
見向きもしない水鳥
呼ぶ声に顔を上げ ....
ゆっくりと確かめる指のひとから
手わたされる言葉のような
雪の散る道をすぎるひとから
聞こえてくる色のような
朝の水平線に消えかけながら
まわりつづける季節のような
寄せては返す ....
わたしを忘れた光が
昇りつづけて朝になった
目を閉じても冷たい指先
さよならを言う光に触れた
さらさらと
さらさらと
雨雲が川のなかを遠去かり
水鳥を連れていってしまった ....
流れつづける灰空に
鴉が小枝をさし出している
遠く けだものの声が響いている
水はじく透明
もう積もることのできない雪
街の背中に降りしきる
ひとつ またひとつ ....
つめあわせ
ふたを
あけました
最初のふたつ
かたいけどおいしい
まんなかのふたつ
見えないけどおいしい
はしっこのひとつ
わからないけどおいしい
最後の ....
わたしは投げ出す
わたしは拾う
手は銀になってゆく
つばさ失く飛ぶ火が越えてゆく海
ただ音だけで造られた海のむこう
骨と魔術師との対話
夜に生まれ
朝に消え ....
時間が
外から来る光を
横になりながら見つめている
花は雪
雪は花
晴れた日
道は海へつづく
ずっと空のままでいる川
とどろきの向かうほうへ
雪は昇り
落 ....
冷たい水の熱さに触れ
公園に立つ冬を見る
檻のなかの時計と噴水
公園に歌う冬を見る
風は痛く
水は閉じる
風はたくさんのものを集めている
誰もいない道を
ひとつ ....
左目を右目にあげたのに
右目は涙を流さない
目が覚めたら一緒にごはんを食べよう
そう書いた手紙を残して
眠ったまま逝った人の声が
もう一度どこからか聞こえてくるまで ....
色とりどりの人々が
角を曲がっては消えていった
降る雪の一粒一粒が太陽になり
地を貫いてはかがやいていた
空に届かぬものと
地に届かぬものとが手を取り合い
壁を巡りつづけるものの目に光 ....
草の原には緑の花が
常に誰かに呼びかけるように
異なる緑にまたたいている
山へ山へむかう道
途切れ途切れつづく道
雨の滴と羽虫がつくる
無音にひろがる水紋の夜
荒れ ....
道に生まれる影から名を受け取り
代わりに人差し指の火を手わたす
消え去らずにいる冬の手をとり
きょうからこれはあなたのものだと
受け取ったばかりの名をつぶやくと
道を灯す影たちの ....
いつかわたしは
わたしから名を与えられた
わたしではないわたしが
鳥のように道に立っていた
地にも 空にも
翼は落ちていた
遠い光の日に
熊は殪された
血は流れ
人の内に ....
音と音のはざまに積もる景
積もることなく消えてゆく影
夜の雨のむらさきが
朝の雨の金に変わる
そのはざまの 一瞬の銀
ふるえのはじまり
つづくはじまり
はじまりとはじ ....
ひとりの子が崖に腰かけ
流れ落ちる雲を見ている
左手に大きな一枚の葉を持ち
右手を降りようとはばたく鳥に差し延べる
鳥は子の手を傷つけることを迷い
崖のまわりを旋回している ....
冬の陽は降り
地は紫になり
雪は一言に昇る
翼は一瞬を負い
朝を蹴立てて
音は姿を撒いてゆく
雨のつづき
戻らない色
薄目をあけた午後の
窓に映る抱擁
すべ ....
叫ぶ日がある
消えては現れるこの手の
痛みのない痛みに
叫ぶ日がある
叫ぶ日がある
空の半分を砕く雪に
曇を落とすことをやめた風に
叫ぶ日がある
....
土に消える冬の後ろに
秋がひとり座っている
秋は川を呼ぶ
秋は 海鳥を呼ぶ
濡れた道に飛ぶ鳥を
声は薄く追い抜いてゆく
傾いだ空のむこうへ むこうへ
雪から目覚め ....
空の青
金の傷
夜と朝が入れ替わる時の
きしむような激しい音が
無色の地平にひびきわたる
空にぶつかるひかりの歌
ひらいた腕にふりそそぐ歌
大きなはじまりの雨にまぎれて ....
電柱の光の下
吹雪の光の下
からだに積もる雪をはらう子
はらってもはらっても
雪は来て
髪は 揺れて
通り過ぎる低い光に
風は終わり
また はじ ....
まぼろし ほんとう
おわり はじまり
すすむ もどる
うえ と した
からだのなか
こころのなか
たましいのない
からだなのか
こころなのか
....
春がきて 天馬のかたわら うたう声
あなたは散るもの あなたは咲くもの
舞う応え 飛び去る天馬 葉の光
散るものたちよ 咲くものたちよ
....
霧の間に差し入れられる
細く小さな指の雨
霧が一度震えるのを見る
傘ひとつ分だけ熱くなり
灯ひとつ分だけ冷えてゆく
線路から吹く風を歩む夜
あちこ ....
堕ちた孔雀が集まる場所で
ただひとりかがやくものは傷を得たもの
白く織られた光の羽の
かすかなほころびから見える花
光や音の波の向こうに
見えること 見えないことの向こうに ....
山へと向かう道の角を
一本の木からあふれた花が埋めてゆく
新月の原
うずくまる獣
高く低くつづく夜
響きのなかに現われる
草色の歌
波うつ獣の背の上に
花 ....
午後の端の三つの光
二つの吹雪を越えてゆく
今は眠るひとつの翼
たどりつく零を聴く瞳
初めてなのにわかる声
終わりの後につづく声
あたたかな夜に近づいてくる
あたたか ....
ひらたく長いパンの両端を
いとおしげに抱えている子
何度も 何かに捧げるように
持つ手を変えては見つめる子
パンはやがて消えてしまうけれど
君のからだの一部になる ....
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