すべてのおすすめ
曇のなかで
ねじれる光
灰に 銀に
尽きることのない色に
池を隠す雪の上
蒼い熱が散ってゆくさま
その繰り返されるうたを聴く
けだものはけだもの
世界を狩る ....
左の視界に切り込んでくる
海は花を手わたしてくる
霧雨と霧雨の合い間の呼吸
羽音から羽音へ飛び越えながら
海は光を手わたしてくる
朝がはじまるその前に
朝よりも強く ....
自分は座っている
名前を呼ばれて
まわりの人はいなくなる
自分は座っている
まわりの人はいなくなる
自分はいる
いなくなる
自分は
いる
いな ....
濡れたふたつの手が午後をつくる
坂の一本道
空へつづく曲がり角
高みの灰 地の白
遠くひろがるはざまを
雪が埋めてゆく
短い午後の晴れ間に
海を見ている ....
原の終わりを示す石標
頬を照らす風に押されて
廃屋は花に沈む
空は地の午後へ近づく
忘れられた道から生まれる鴉
砂の上にあふれ出る夜
金銀銅の狐がむさぼる
返 ....
粒になり粉になり消えてゆく
手に触れる花から消えてゆく
からだへ からだへ
浴びせかけられるように降る花
燃えても燃えても降りやまぬ
消えても消えても降りやまぬ
め ....
遅い月に
空は揺れ
鳥は眠り
朝の川を夢みる
冷たい光の下の水
海にもなる
人にもなる
雨の明かりをすぎる鳥
灰の轍をひたす水
幾度めかの浅い冬 ....
突然の雨に驚き
空気が動き
生まれた風は
生まれたときから不機嫌でした
埃っぽい路が
陽や曇を浴び
濡れた光を浮かべ
空を見つめているのでした
蜘蛛でも ....
他を照らせぬ光が集まり
枯れ木の夜を編みあげる
ゆらぐ景
降りそそぐ火
ふるえ よろこび
まばゆい鈍
それら 夜の鳥の浮力のすべて
融けるように溶けふたたび潜る
....
雨の日の花
川のなかに泣く
さくら色の虹
白と黒の道
遠去かる銀を畏れ
目をつむる距離をのばしてゆく
道はどこまでも速く
道はどこまでも高い
見えない炎のか ....
ふかみどり
ふかみどり
言葉を手わたし
笑むみどり
腕の輪まるく
伝うしずく
胸をすぎる
こがねの尾
風のなかをふり向けば
たくさんの声が消えてゆく
....
言葉の手
音の火
途切れながらつづく歌
原をめぐる者たちは
けして治らない傷を持ち
手を継ぐもの
火を継ぐもの
いつの日か果てるもののひとりとして
不完全な魂に
またひ ....
{ルビ魂=たま}のかたちの悲しみに
五つの手のひらが添えられている
{ルビ澪=みお}のようなかがやきを
大きな花が抱きとめる
素足の行方を
はばたきの行方を
抱きとめる
....
海 空 無
ゆっくりと夜のなかを
大きな鳥が通りすぎる
雨が空をかけのぼる
光が空にこだまする
夜に隠れた者の影が
木々の間を埋めてゆく
半身だけの囚 ....
長い時をかけて
風が風になってゆく
しげみから飛び立つもの
水の上をゆく光
壊れかけた庭に引き寄せられる
残された数本の木々に引き寄せられる
闇がさくさくと
冷 ....
高い夜
低い夜
地が空へ向かう夜
遠すぎる火をあおぎながら
あまりにも廃墟に近づきすぎていた
雨が緑を照らしていた
小さな葉が群がり
石と石をつなぐ力にしがみ ....
夜の柱に伝わるもの
にじみたなびく煙の端々
昼の友の鼓動
原を走る火の行方
冬のはじまりを映して川は流れる
遠く静かな道のりをゆく
幻日の虹のまわりから
....
窓を閉め忘れ
緑のにおいに
眠れずにいる
空腹の夜
ひとかけらずつ
崩れる街を登りつづけ
眠れずにいる
空腹の夜
触れることさえないままに
気づいたときに ....
自分が自分かもしれないことを
思い出すのに時間がかかり
鏡の前で
裸のまま立っていた
自分は
どこにもいないのかもしれなかった
わんこ ほえる
....
わたしは咲いていた
わたしは咲く
わたしが咲くとき
わたしが咲けば
わたしよ 咲け
あなたが咲くうたの
聞こえるところ ....
衣擦れの音は
人の声のようにやさしく
草の声のようにきびしく
夜を過ぎる者の足元にからみつく
あたたかく 目を閉じ
....
わたしは居ない者
わたしは居ない者
過去の法が生き返るのを見ている
死ぬものはないが
生きるものもない
あやつるものが あやつられても
止める法などありはしない
求めるものは ....
一枚の地図が置かれた
薄暗い部屋のなかで
手のひらに生えた双葉を
見つめていた
夜のむすめ
生まれては
光を指して
おとうさん
火の花です
線の川です
おとうさん
夜から夜へ
伝わります
おとうさん
めざめます
ふちどりが
....
雨のなかのふたつの星が見つめあい
ちぎられたもの 離されたものを結んでゆく
音の生きもの
風の音の生きものが
白い木々のはざまに響き
銀に濡れた視線を向ける
建てら ....
車道に向かい 身を傾けた
コンクリートの猫
雨あがりの光を狩る
壁のほうに入口を向けた
朽ちた小さな犬小屋
墓標のように
玄関の脇にある
目を閉じてもつづく光のかたち
夜を甘く噛むかたち
傷が傷を呼ぶかたち
ふたつの音がすれちがい
ひとつの声になるかたち
蒼にそよぐ蒼のしじま
ざらざらとつづく明るい道 ....
雨ふらす空が
大きな水に映り
空ふらす雨が
大きな水にふる
おちるのは雨
おちるのは空
おちるのは午後
....
ただひとり ここに立って
ほしいもの じっと待って
陽と星が見たい
雨と晴が見たい
星を全部つないでできる
ただひとつ ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59