あの子やその子の孤独は
柔らかそうで素敵
まるで女神が産み落とした赤子のようで
健やかな膜は健在なのね
この体は 何かが出ては入る循環を好んで
一色にしか染まらないけど存在は莫大 ....
少し古ぼけたポストをみたら
なんだか昔に手紙が届く気がした
送るならば迷わず自分へ
私へ
たくさんの言葉を紡いでね
私より
生きていたくないけれど
死にたくもなくて
この空のように
私だけの空のように
この世界に
「存在」したい
この夜明け
街は忘れていた形を取り戻していく
影が生まれ
新しい気配が景色を横切る
一番透明な時間に
一番透明な予感が
僕を通り過ぎる
寄りかかった壁のその冷たさだけが
まだ夜に属 ....
空が青いから
僕は屋根を焼く
焦げて崩れたその隙間から
青かった空を覗く
思うほど息苦しくもない午後
崩れた屋根は既に屋根ではなく
いつまでも煙を空へと飛ばし続ける
僕は灰空を見るの ....
僕が生まれたのは
十月十四日
それまでに
バクテリアだったり
魚だったり
鳥だったり
いろいろ
やってみたけど
どうやら
人間が一番似合っていたみたいだ
僕が生まれたのは
十 ....
ああ
また
自分の吐いた
言の葉が
イビツなかたちで
とんでいった
やっぱり
そうだ
着地点をまちがえて
グシャッとつぶれ
ピシャッとわたしにはねかえる
てんてんと
ま ....
瞬きの回数分
世界が生きていた
ぱっと
開いたかと思えば
すぐさま
消えるのだ
一億頭の羊でも足りないはずの
このくりかえし
その度
世界は生まれ変わって
ぼくの前に現 ....
私はしらないあさがお
墓石のうえでつるをまく
私はしらないうろこぐも
かぜにふかれてきえる
私はしらない鶏鳥
飛ぶことを忘れたまま
私はしらない子馬
ヒズメを地につきたて
私はしらない ....
きみが森にはいれば
木々は青さを増し
きみが空に手をのばせば
雲はきみに近づこうと雨になり地におちる
きみが猫にふれれば
その三毛猫は、2丁目界隈の王になる
海がみたい、君がときどきそ ....
{引用=↓↓ありがとうございます 一番下から空にむかってお読みください↓↓}
☆
....
街外れに
セピア色に塗られた
ポストがある
セピア色をしているから
おそらく だれかの
思い出なんだろう
あ、と
きみをおもいだすのは
たぶんとても自然なことで
それでいてとてもいいかげんだ
ことばのあいだのくうはくに
わたしたちは寄りかかろうとする
かなしいのかたちをしたよるが
よろけ ....
いつも北を向いている少年について
話をしようとおもってたんですが
ひどい雨が降ってきてしまいました
とりあえず雨に注意を払いましょう
雨のほうが重要です
少年はほうっておいても大丈夫です
....
小さな女の子が俺に
だじゃもん ちょうだいっていう
だじゃもん ほしいっていう
だじゃもん ねえ だじゃもん
だじゃもん ちょうだい
だじゃもん ほしい
そういわれ ....
袋があって、それは不思議に光っている
袋の中に光がある
頼りない光だけれど、そっと触れると暖かい
袋は何の変哲もないありふれたものだけれど、
中からこぼれる光が袋をこの世にひとつしかな ....
膝を抱えたまま
心が膝をかかえたまま だ
歩いていても
角の魚屋で刺身用の秋刀魚の目玉に見入っていても
友人につまらないメールを返信していても
いつもの連続ドラマを見ていても
子供たちの ....
あんたが あまりにまぁるいので
あたしはガラスの破片で斬りつける
真っ赤に染まるその時まで
あんたが あまりに細いので
あたしはピンヒールで踏みつける
千切れそうな糸になるその時まで ....
風吹けば
薄紅色の水玉模様
ありがとう
もう何も考えなくて済む
閉じこめられたら
二度と目覚められなくなる
それがいい
さ ....
仮面
産まれたての
あの頃に
戻りたくて人は被る
嘘
他人を欺きとおせても
おのれの顔だけは
欺けない
頭蓋骨
そ ....
あたしの心は見えません
あたしにだって
見えなくなることがあります
心ってどこにあるんでしょうか?
心臓にあるんでしょうか
脳みそにあるんでしょうか
あたしは思うんです
....
溜息すら零せない
その瞬間に愕然とする
どこかで満足しているのだろう
終焉を望んでいるのだから
薄ら寒い笑いに包まれて
不要たる存在としての自己
無視と嘲笑の天秤は
変わらずに揺れ動 ....
夏のおわりが近づいたのだよと雷鳴が耳元で囁いた夜
わたしは小さなわたしの左の乳房にもっと小さな小さなひとつの石を見つけました
まるで岩陰に潜んででもいるかのようなこどもの石です
いつのまにこんな ....
ぼく みつめている きみを
きみ みつめられている ぼくに
いつまでたってもどこまでいっても
やまびこしない ひとみのやりとり
言葉は 言葉じゃない
....
壁の花から落ちた花びら
雀たちがついばんでいる
ふちどりを想う
くちすいを想う
かがやく魔
飛び去る影を見つめるもの
四方を壁に囲まれた
庭という名の底にうたう
....
いろんなことがあったね
君が二度と目覚めなくなるまでに
最初に聴いたのは「十七歳の地図」だった
レコードに針を落としたとき
魂の叫びが僕を打ちのめした
鳥肌が立って背筋がゾクゾクし ....
空
空
空
風 風
風 風
華 華 華
華 華
雲 雲 雲
拙い流れ
流れ
弱い流れ
誰もが
気づかない
水 水 水
....
そして、
海は濁っていった。青黒く、あるいは黄色く、
濁ることで海はひとつの予兆を示した。水平
線までの正確な距離をはかろうと、漁師たち
は考えをめぐらせ、砂 ....
ガビ
ガビビビビビ
変な音
とても変な音だ
ソファーに腰掛けた真向かいの人は
その変な音をたてながらわたしに向かってきた
思わずよけた
ガビビビビビと
強烈に変な音を高めて
真向かい ....
冷えた月光が酔い痴れ
猫が舌なめずりをしている
木枯らしが掃き溜めた暗がりで
誰かの影を踏んだと驚き
見返れば
巨大な墓石が黒々とつらなるあたり
茫として仄明かりに白む天蓋
一閃の流れ星 ....
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