タイル張りの部屋の中
あたしはひとり うずくまっている
泣き疲れて呼吸は浅くなり
あたしはひとり うずくまっている
そばでは水槽とテープレコーダーが
変化のないあたしに {ルビ倦=う ....
{引用=
? 薔薇中毒
愛しい薔薇の
深紅の花びらが
狂おしく息もつけぬほど
降りそそいだ
あの頃
夜毎の夢の中でさえ
貴女の馨りは
深く ふかく
....
ふと あなたのことを思いだしたので
こうして手紙を書きました
あなたがこれを読んだら
筆不精なわたしにしてはめずらしいと
腹を抱えてわらうのでしょうか
お元気ですか
わたしは元 ....
あかるくなった
校庭の
真ん中で
ともは
膝をむきだしにして
そのあかくなったところに
悲しみをまぶして
いました
夢ではない
山に登り
芯の太さが、花が
格調高く
ひ ....
たやすいのだと
気にしないで
昼間のデパートに
捨てては、
そのわりには
道がわからなくなるような
そう
多く
かちきな人たちが
地域へと
なだれこんで
じっとしている
そ ....
問題に答えると
答えから問題が生まれる
右ですか?左ですか?
右へ進んでみれば左が
正解のように思えるし
仮に右が正解であり
正解を歩んでゆく自分が
生まれれば どこからか
別 ....
ゆらゆら纏う月の色
ひらひら翻る小夜衣
ほろほろ嘆く花の影
ふかふか見遣る片心
名もなき{ルビ憐恕=れんじょ}は風に消え
杞憂も蕩ける{ルビ玉桂=たまかつら}
....
A
趣旨がよくわからない格好をしたあなたは
私の家の前を通り過ぎてしまって
罰が悪そうなのと恨めしいのがまざったような顔で
ちょっと笑いながらこっちを見てたのを覚えてる
慣れてないのがバ ....
もうおやすみ とつぶやく こえは
あなたに とどいたのでしょうか
まぶたを とじる しゅんかんに
あなたは なみだをうかべていた きがしたのですが
ろくがつむいかの あめはふりつづいていま ....
あのはなをつんで、ときこえた
もうすぐ枯れそうな野花、を
そのはなをつんだ
ずきり、 「気のせいか」
ふりかえる
だれもいない
雨はどしゃぶり
雨はどしゃ ....
海は 生きるために波をくりかえす
よせ、また返す 海の呼吸
だれもいない浜辺に来て、海と握手をしよう
とおく外洋の果てから 友をもとめて
手をさしのべてくる
この大きな、大きな生き物 ....
さびしさにかられては二人称にあなたを選んだ、そんなときから、後ろを向けばあなたがいつもいるような、まぼろしをみせられていました。雲が光をさえぎったような天気の下では、誰しもが悲しくも、切ないような ....
あなたでした。
(のほほんとした真昼のじかん)
小雨のようにぽつりと呟いて、砂利道を手をつないで歩いてくれたのも
(ありがとう、がかいま見えたけれど)
そうやって森のようにひっ ....
「かんちゃんはさぁ」
まどろんでた保健室で突然に話しかけられたんだっけ。
アダムとイブがどうとか、
ノアの箱舟がどうとかこうとか、
新約聖書と旧約聖書の区別もついてない私には
さっぱりわ ....
人間が滅びることがせかいへいわになるとおもいます
そう、ゆとり教育を受けた大学生が声高に主張する
滅びる、の意味は
きっと、辞書をひくところから始まる
愛がせかいへいわにつながると思います ....
一人称にわたしを選んだときに、わたしの中で何かが定まったような気がしたことにも気づかずに生きてみました。誰もが等しくも、そんなに愛おしくもないけれど、立ち止まる分には時は同じように流れるみたいに。 ....
「なんか作ろうか」とか言うから、まじで作れんの、と思いながら口には出さないで、「肉じゃがが食べたいわ」って頼んだ。冷蔵庫開けたら、肉や野菜や牛乳やなんかタッパに入ってるものとか色々出てきたから、意外 ....
余 熱
そこは
しろい花が咲いていて
緑も若やいで うつくしい
空気は
いつまでも清澄であり
....
あした、
涙がかわいたら
海を迎えに行きましょう
果てのみえない
かなしみの
ひと粒として
あらわれましょう
雨が降っても良いのです
風が吹いても良いのです
....
乱れたシーツに
打ち上げられたのは
僕だけだった
散らばった鱗を
キレイに片付けた君は
もうコーヒーを香らせている
カーテンから漏れてくる
光の海蛇を蹴飛ばしながら ....
両手いっぱいの憎しみで
ふくらませた青い風船
それを今
ベランダからそっと飛ばす
それは思うように
遠くへと旅立ってはくれず
ただ あたりをふわふわと漂い始めた
部屋に戻り
静か ....
秘密基地を確保したくて
テキトーな名前を書いて申請を出した
球技かなんかと勘違いしたのか
あっさりと申請は通った
かくして我々
「ビスケットボール同好会」は
授業の合間や放課後の
憩 ....
小さな頃から
オシロイバナを身にまとって
教室へ向かう道の途中
家へ帰る道、夕焼け空の下
遠くに並ぶ影が羨ましかった、よ
あれから、数年
オシロイバナは ....
真夜中
港まで自転車で走る
橙のあかりが点々と
その下に一人
また一人と
釣り人が並んでる
釣れますか
聞いても誰もこたえない
みな透明だから
二人乗りしてきた友人も
いつのま ....
自分よ きみ 恋にへこたれるな
こころざわめく思い もう すぐにでも遠くに行ってしまいそう
好きだってことさえも言えぬまま
旅立つことを見送るの?
そのまま失うことに慣れていくの?
....
五月が
裏口から入ってきて
玄関から出ていくところだったので
私は少し呼び止めて
今こうして二人でお茶を飲み
別れを惜しんでいます
何もはなさずに
はなすことなどもうなくなったから ....
{引用=
静かの、川が
逆流する
しなやかな動きの連続で
えたいの/知れないものたちが
反射するから
少女は、もう一度
夜を怖がらなくてはならない
そういうものなの
と、 ....
本心では好きでもない男性と
体を重ねるのは
汚い事ですか?
不潔
だね
と答えは言う
ならば、どういたしましょう?
この欲求は
どこへ追いやりましょう?
何処へ封じ込め
どこへ ....
まもなく夕焼けが訪れる
傾く陽射しが街を玉子色に染めると
空の木々の道路の色が深くなって
陰影を纏いながら豊かに発色するのだ
図書館で見かけた風景学の本が気になって
娘のミュージカル ....
「言葉」を書いてはいけない。
そう聞いたとき、私が一番恐れていたことが、今、起きてしまった。
「言葉」が書けない。
いままで、キーボードの前に来れば、私の指は知らず知らずの内に、キー ....
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