枯芒今日も見たよ幽霊を
{ルビ天=あま}冴ゆる我は天使を空に見し
寒さに負けじとの思いが我を推す
たま風や遠い亡霊を訪ねおり
燗酒をあおる父の背は寂し
....
凧あがる間青空衰へず 🪁
漱石忌猫にあらねど居候 🐈
水鳥の少し沈むは陽の重さ 🦢
ひとつ浮きひとつ沈みて{ルビ鳰=かいつぶり} 🦆
柄じゃなく星に願ひを流れ星 🌠
我と ....
霜月の初めに思う来年の賦
秋の夜も残り少なし仰ぎ見る
孤独とのはざまにあるは若煙草
夕暮れて秋の雨降る庭の隅
時雨れては{ルビ首=こうべ}の垂れる文化の日
孤独との架け橋 ....
一本の抜歯におののく冬初め
子の未来見守る婆や年の暮
これといふニュースなきまま冬来たる
こつこつと積み上げしこと冬娯楽
侘しさと平穏にひとり小春かな
けふは晴れ{ルビ軽 ....
枯葉散り時の遠くに色忘る 🧸
無事もどり片手袋の旅終はる 🧤
狩りをする狩人のゐる壁画かな 🧌
あたたまるこころ手袋ふたつ分 🧤
三島忌やたまにミサイル飛ぶこの世 🚀
不 ....
一心に香を見つめる土くれの犬
カラカラとスケボー鳴っているシャッター街
石垣を温める冬日
雪虫もコンビニに入りたそうに
子供たちにつられて駆け出したくなる夕暮れ
白い花 三句
花びらに冬の蝶置き白い花
その下に白い花あり冬の蝶
弔ひに似て冬蝶と白い花
冬 四句
「ふゆ」と言ひ吹く口笛は暖かく
盲導犬静かに主人 ....
唯一樹赤き実映ゆる冬の庭
強く弱く風の機嫌や{ルビ杜鵑草=ほととぎす}
晩秋や鋤きたる畑にチマサンチュ
要らぬことつい口出しす婆の秋
○「霜の朝
子らの声聞く
床の中」
さよならと冬にゆっくり回す鍵
優しさを冬の儚き者たちに
侘助や涙はただの水でなし
吾亦紅咲きし日数をこぼしけり
冬の雨相傘のひと羨まし
幼日の名残り微かに枯野原
古 ....
振り向けば枯葉遊ぶ音
怒髪天一手を悔やむ棋士の悶
菊香る我{ルビ佇=た}つ庭の此処迄も
{ルビ漢=おとこ}{ルビ四人=よたり}庭木を伐るや秋曇
山眠り鳥の静かな子守唄
忘れもの落葉踏む音に思ひ出す
廃校に淋しく響き踏み落葉
押し花やあの日の紅葉今も生き
薔薇わたす時に転んでだめだこりゃ
心頭を滅却しても、ああ寒い ....
まひる日にやすらに睡る長ゐ髪
ひとり起きてやすらに睡るきみの髪なで
口無しぞ海を眺めて海にとられむ
磯に火を焚け濡れしきるわれときみのため
天にも陸(くが)にも来ずふるへる海明 ....
林檎の樹を眺めきみ何おもふ
ひらけた地より林へあるくふたり
海そのままに日は動かずふたりで居る
樹によりてきみ何おもふ海のおと
われに罪あれば日はそのままに海よ鳴れ
....
【俳句】 船曳秀隆
筆先に 宇宙の春が 溶け落ちる
桜には 天馬の翼 生えている
花桜 地平線まで 散り敷かれ
花吹雪 冥王星へと 降りしきる
花吹雪 地球の裏へと ....
凪ぎはてた海よわれは哀しむ
忍びかにわれ哀しむ凪はてた海を
忍びかよりさつそう飛んで啼きつめる鳥
まどふこときみの乳(ち)の辺(へ)に痣がある
きみの乳(ち)の辺(へ)を眺め下 ....
おもひみをつれゆかむこのたましひは松林へ
おもひみつれゆかむこと海辺をゆかむ
道におる玉ひかるましろの小鳥
かすかましろの小鳥の羽音
さびしさは海のなせる
青海なせる ....
父の祈り母に添いたる秋の夜
秋を見て父を見てただ心静けき
送りまぜ今日はかくやと嘆きおり
父の背に後の月を見し夕間暮れ
十六夜の月は空にはとどまらず
この雨を人にそむいてわれゆかむ
茫々とときに朗々とひかりをひとりゆかむ
雨に海に身をさらす赦されない身を
海よ空よゆるせよわがこころ人に赦されず
ふたり夜の海見るたましひと ....
海をみてひとりと思うわが性は
哀しみとして海にほほえみつつ泣く
海の面にうつりこむかみなし児のわれ
わが性は孤独でありしまた海へいく
松林を海へ突っ切るひとり
カモメはや ....
数珠玉を見ずとも秋は深行けり
紅葉葉の落ちるはいずこ思い出か
栗を刈る季節をひとつ通り過ぎ
三日月にぶら下がるのはネックレス
眠りのなか秋の色にわたしも染む
海哀しこの身たよりに恋をおもう
あめつちもなしこの身がたより
海、山哀しここにぐっとこらえる
恋のひとみの焦点のうるむ、山
風わたるくさはらのくさが避けて
はつなつの青空 ....
私はうたおう哀しみどものわけ捜す
酒にもひとへもいかぬ哀しみをこらえる
おとなりのピアノのおとに酔ってしまうよ
燃える若さもなし智慧を武器にいく
艶やかな妻の髪と鬱屈しているわ ....
薄紅葉家の庭にもあったっけな
惚けてはうつつに帰る秋の昼
母の味欠けていたのは椎茸や
そぞろ寒戸外に出るも少し震え
果てしない夜中にまんじりともせず目覚め
秋の朝見上げる ....
虫の音にこの世の昼夜入れかはる
お先にと言つてるやうな落ち葉です
式部の実こぼさぬ枝の撓みかな
ありったけ秋をぶつける秋の雷
聴き慣れぬ歌声嬉し小鳥来る
粕汁や来世も ....
雁の使はるか果てまで独り言ちて
蓑虫のなつかしさかな手を伸べて
愛らしや鶏頭の声千の風
渡り鳥今はまだ季節に遠く
悲しみの扉を開けて秋静か
玩具箱固い扉に秋深く
風の色移して小菊白々し
一瞬の風にぐらりと庭芒
しなる{ルビ枝=え}の{ルビ熟柿=じゅくし}たわわや{ルビ狭畑=さばたけ}に
秋寂びや始発列車に去り行く子
わたりたり雁の旅路はせつなくも
涙もてただ拝顔すべし秋の田を
心を晴らす種はいずこへ秋の空
牛蒡引く手も借りたしや忙しなく
秋空に思い叶わず暮れるまま
冷たいと思わず手を ....
秋雨となりて思いは空に浮かび
留飲を下げて南へ鷹渡る
悲しみに溶けない氷はどこにもなく
どんぐりの転びて惑うわがしるべ
悲しみも秋の宵には消え果てて
木犀の海に沈むは思い ....
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【俳句】季語を含む17音律「5.7.5」の俳句と、その形式を崩した自由律俳句、無季俳句などの俳句作品のみ受け付けます。俳句批評は散文のカテゴリへ。
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