駅でたくさんの人が下りたあとの座席に
包みが置かれている
忘れ物だ
ぼくはあわてて取って
フォームを歩いて
事務室にいって
遺失物の届出をしようとしたのだが
形のあるものでないと受け取れ ....
いま項垂れているきみ
少しだけ顔をあげてみないか
いま立ちすくむきみ
少しだけ踏みだしてみないか
世の中は確かに酷い
世の中はとても苦い
でもね
ぼくもきみと同じだった
だ ....
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ゆるりゆるゆる ひらきます
さむさのゆえの ゆるやかさ
ゆびさえふれず ながめます
ゆうやけいろを すこしだけ
もらいこくなる ....
見上げる星よ、きみであれ
痛ましいほどに
疑いようもなく
きみであれ
忘れてくれるな、
燃え盛る目を
忘れてくれるな、
恥じ入る肩を
かろうじて ....
右目からレーザー出てるオジイチャンどっしり座る優先座席
紅いやら
黄色いやら
騒いでるんじゃない
山の中に勝手に入ってきて
ジロジロみて
写真撮って
弁当食い散らかして
ゴミだけ残して帰る
観光客たち
俺は
おまえらに怒って
....
ひとの哀しみを
知りたい
深く…より深く
青いビーズの散らばる
大広間に
君と寝そべっていた
手を…手を繋ぎたい…
....
スマホってのが
スマートフォンの略に決まってる?
てめえ、調子にのってんじゃねえぞ
俺の言うスマホはな
スマトラ半島掘り出し物件のことなんだよ
インドネシアの人口
無駄に多いわけじゃねえん ....
「もも色の風だよ もも色の風だよ」
と誰かが言った
そんなはずはない
冬の真っ只中なのだ
「もも色の風だよ もも色の風だよ」
とまた誰かが言う
窓を開け のぞいてみると
確かにもも ....
座礁した船に乗っている
船は岩に乗り上げて
じわじわと水も浸食してきている
私は生と死を同時に思う
におい
においが違う
磯のにおいと共に
「喰われ ....
皆が助けてくれる。
皆が声を掛けてくれる。
皆が救ってくれる。
死んではいけない。
2時間も電話で話して
くれる人がいる。
心配してメールをくれる。
本をくれる。
本当に俺を救える ....
も吉と歩く
何もない冬の午後
も吉と歩く
はたちの頃 一年ほど日記をつけた
何も残せず ただ消えてゆく日々が
とてもこわかった
時間はたっぷりあったのに
いつもの散歩道
....
てのひらひらひら
紅葉ひらりひら
ほぅらほら
どこかでだれかが呼んでいるよ
重なり合った呼吸が
色を濃くしはぜる音
夕焼けが沈んでいくように
どこかに吸い込ま ....
ことばは
しょうじきなのだ
できないときは
できないと
わたしにいわせる
むりなことは
むりだと
わたしにいわせる
わたしよりさきに
いきものなのだ
ことば ....
月曜日が休みになった
連休などありえない流通業で日曜の休日も
夕方は次の日の積み込みに時間を割かれる
小学校と中学校の転入手続きが残っているのだが
嫁さんとの勤務シフトがあわない
ま ....
いろんな天気があって
いろんな空があって
自分で選べるわけじゃないから
ただ黙って歩くしかない
ひとりだと思えばさみしい道も
みんなおなじと思えばがまんもできる
不特定多数のだ ....
その日消えそうなわたしは
透明になって歩いてた
通りすがりの犬が
おん!
と、高いような低いような声で
わたしを見ながらひとこと吠える
“しっかりしろよ”
曲がり角を曲がったら
突 ....
まだ半分しか生きていない
葉書は、
白い壁の長方形の紙の家
うすい、
厚みしかないためにひとりで立つこともできない家
寝転がったまま まだ見ぬ遠い街を夢みているのだろうか
小さな窓がある
そこに灯されるのは あかり ....
みずたまりに映ったあなたの顔を風がゆらす
泣いているようにみえた
笑っていたのに
時のひずみに落ちた時 泣きたくなるのはなぜだろう
水は知らぬまに何処へか蒸発していく
最後に残った泥のよ ....
両手をそっと前に組み
瞳を閉じる少女は
窓から射す日に照らされた母が
膝の上に開いた本の言葉を
じっと、聴く――
*
数十年後、大人になった彼女は
街中のとあ ....
私は亀ちゃんを生んだ
亀ちゃんとは本人の前では決して使わないあだ名
亀ちゃんは本当にゆっくり成長していく
初めて歯が生えたのは一歳三カ月
初めて歩いたのは一歳八カ月
二歳になって ....
スペインで
闘牛反対の活動家の列に
牛が突っ込んで
負傷者が出たという
ニュースは
なんとも
痛微笑ましいものですが
反捕鯨団体の
オーストラリア人船長500名が
抗議船内 ....
閑散とした海辺のペンションのように
広々と逸脱した時が迎えてくれるのなら
片手間に解いてみるのも良い
この絡まった七色の意図を
だが
雨の指で打たれ続けることばは嘘
....
濃い目の紅茶をひとくち舐めて
すすけた砂漠でくるくるとステップを踏む
気をつけて
地雷に触ると危ないよ
金ぴかのさそりに心を噛まれたら
白かった地図がなんとなく退屈になっている
....
あたし ハイヒールの
似合う女になりたかった
白い開襟シャツのブラウスと
黒いタイトスカート
BLUE NOTE クール・ストラッティングの
レコードジャケットみたいな
美しい脚の女に憧れ ....
のぞまれない悲しみは
きっとある
のぞまれない優しさも
きっとある
ひとつ残らず
のぞまれなくても
わたしはここに
立っている
言えず終いの
いたわりがあ ....
緩やかなカーブを描いて
走って行く
空気の波が幾重にも重なって
丸みを帯びた優しさを生成する
気をつけてと
柔らかなハミングで
空気の波は震えて
白いガードレ ....
私達の間を
短い、短い手紙が
暗号の様な手紙が
いったい何往復した事だろう
ひとつの文字の背後には
何倍もの文字が群れなして
文字にならない感情が
行き場を失 ....
あなたが珍しく
自ら自分のアルバムを持ち出してきたから
少し不思議だった
「なんとなく」
なんて言うけど
これまで一度も
開いて見せたことなどなかったのに
あなたのアルバムには
当 ....
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