毎日どこかが痛い
日の出前
生命以前の静寂
ただ刻々
事実だけが降り積もり
上滑りしていく感情
淀んだ意識のまま
時間をやりくりし
このような自分だ
と凝視する朝
いちゃもんを
自分で自分に
つけ ....
あー あー きこえますかー
こちら、地球です
地球です
けっきょく滅亡はしませんでした
とくにおっきな変化もありません
いつもの日常でしたー
....
犯人に告ぐ
おまえのお母さんの従姉の娘さんの
ご主人の母方の祖父の弟にあたる人
と昔付き合いのあった八百屋の常連さんの
山田さんの甥の二号さんから
おまえに話があるそうだ
よ ....
雨が街を一斉に叩く音で目が覚める
億劫な、暗い灰色の朝に
独り、目をこすりながら時計を見た。
午前5時半。
雨が降ったって
雪が降ったって
強風に煽られて
....
自転車で冬至の坂をくだってく
誰かが
だましているんだなと思う
ぽかぽかとして
冬なのにこんなにあたたかい日は
だから
あたしは
まーだだよと言う
あわてて
かえるが起きてこないように
誰かに
だまされ ....
良い人は扱いやすさで軽んじられる
良い人は時に利用されて捨てられる
良い人はもてない分だけ深みが増す
男女交際において
良い人という呼称は決定的なダメージの象徴だが
良い人が好きだ
....
貯金通帳振り回しても投句料出ない
生命線の短い人が
やたらはしゃいでると
少し悲しくなっちゃって
涙出ちゃうけれど
その一方で
きみはいくら頑張っても
そんなに長くは生きられないんだよと
教えたくてウズウズしている
悪 ....
その金曜日の午後
いつものように黄色いスクールバスから降りてきた
娘達の笑顔を確認してから
思い切り抱き締める
「ねえ、ねえ、今日学校でこれを描いたんだよ」
私の腕を振り切る勢いで バックパ ....
呼んでないのに来た
冴え々え光る三日月と
冬の冷たい夜気の風
今一度(ひとたび)正常な神経を戻せるようにと
ただただわたしに降ってくる
(赤子が欲しけりゃ薬など
飲まん方がいいんだけども)
あれほど ....
なくならない
昨日のむなしさも
紅すぎる夕日の色も
いつかみた映画の感動も
ありがとうっていわれてドキドキした鼓動も
失恋ノナミダも
やさしくしてもらったことも
あのときこうしてれば ....
冬は突き放すような抱擁
軽くドレスの裾を振るだけで
白い吹雪が真昼を閉じ込める
冬は火傷するほど冷たいキス
サイドミラーの氷を指先で落とすと
風の中 君の声が聞こえてきた
子どものころ ....
何もかも、失ってしまった。
そう思えてしまった時には
自分の手のひらを、そっと開いて見てほしい。
確かに、その手のひらには何もないけど、
だけど ....
弱として
私の子宮が主張する
私は所詮女であると
別段愛撫がしたいわけでも無く
だが時たま
私の子宮が
「私は女だ
私は女だ」
と主張する
....
空を切り裂く
稲妻のような
赫い時を駆け抜けて
蒼く険しい道を
手探りで辿ってきた
背中には黒い影法師が
張り付いていた
コンクリートの孤独が
骨を溶かしていく
そして今は
....
冬の朝に目覚めた
私はちっぽけで空っぽだった
息を乱して駆け抜けた
白さばかりを焼き付けて
滲むのは眩しいからだと笑えたよ
その音の先を追って
夢中で走るうちに
泥を跳ね上げることに ....
お品書きに
あなたの名があった
あなただけが
それを知らずにいた
もしかしたら
わたしの名も同じように
あったかも知れない
あなたはそれを
思案していたかも知れない ....
セックス好きかと聞かれて
まあ、好きは好きなんだけどねえ・・・
なんて点々つけちゃうのはね
やっぱりこの歳になると
あっちこっち痛かったりさ
ちょっと動いただけで
すんげえ疲れちゃったりす ....
日曜日の夕方
群青色の冷たい空
閉じ込められたような
地平線の端がじわりと燃える
正解がないのは
どの道を選んでも同じ
世界を美しいと思うのは
積み上げられてきた
歪な歴史 ....
{引用=
「 月曜うまれの子は、器量がよい 」
―――――― マザー・グース
マザー・グース、 マザー・グース
お前はなんでも しっている
....
昨日汚れた
白い食器
それをシンクに
溜めたまま
母は朝から
テレビゲーム
理想の親を
想像しながら
幼いボクは
小さな身体で
大きなため息
一つ吐く
....
子狐のきょうだいが じゃれあっている
とんで
はねて
おって
にげて
まちぶせして
かみついて
雪を蹴散らし
狩る者の本能を
喰われる者の宿命を
疑似体験をしている
思い切り ....
横浜市戸塚区の伊太利亜料理屋で
{ルビ葡萄酒=ぶどうしゅ}を一飲みした後、トイレに入る
*
薄明かりの狭い空間で
{ルビ蔦=つた}の彫刻のからまる壁に凭れ
鏡に映る
....
水龍飲み干して美味い
鏡の前の
リクライニングに座り
鋏を手にしたおじさんに
全てをまかせて、瞳を閉じる
ぱさ、ぱさ、と切り落とし
頭はだんだん軽くなる
ぱさ、ぱさ、と切り落とし
心はだんだ ....
凍えた体を温めてくれと願ったのは、あたいの罪
躊躇なく温めてくれたのは、あなたの罪
そんな罪を、微妙なあたいたちは愛とよんだ
小路の角を曲がると
家並みの
屋根の傾きの下で
格子戸が眼をつむっている
晴れても明るくならない
印画の街
軒と軒とが接するように
建てこんでいる
植物は軒下におかれた
盆栽 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37