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  街路樹が震えている、冬
  あらゆるものに札がつけられた
  ふりはじめた雪に、砂糖菓子に さびしさに……



  水切り台に置かれたきのうのウイスキー
  それに口をつけ ....
  羊たちは口をそろえて
  ここは退屈だ ここにはなにもない と言っていた
  それから達者なムーンウォークでじぶんたちの{ルビ塒=ねぐら}へ消えてゆく
  唇にしまいこまれた狡猾な秘 ....
  きみは自分が誰かしっているのか
  湯で卵のはいったカレーパンを口にほおばり
  買ったばかりの黒い手帳に夢中になっているとき
  見境のない冬の風が 昨日のきみといまのきみを重ね合 ....
  テナガザルが白い顔をひきつらせて けらけらと笑っているような
  摩訶不思議な雨が きょうは降っていた
  いたるところで石を打ち 草を濡らし 心をかなしくして



  きの ....
  今日のことを忘れずいよう
  遠くまで青く 空は澄み
  音楽はいたるところで 風に薫っていた



  何度おなじことをくりかえしても
  わたしはひとを恨むだろう
   ....
  あなたに梨の実を贈りたい
  寒く厳しい冬の夜に
  愛するあなたが
  梨の実の夢を見られるように



  くちづけは消えてしまうから
  抱きしめあった温もりも
  ....
  あなたの椅子が何も話さず
  ただ黙って眠っているように見えるとき
  切り分けられ 椀に盛られた柿の実だけが
  退屈な話を静かに続けていた



  昨夜
  あなたは ....
  夜になっても
  愛はきみの胸にあった
  海のむこうでさびしくともる
  うすぐらい光のように
  いま、雨は
  何処にも降っていない
  ただそんな予感だけが、
  あ ....
  西陽がなにもいわず
  夕餉どきの部屋にはいってくるのが
  わたしたちはきらいだった



  畏れのため
  わたしたちは歌っていた
  それとも、単なるかなしさのため ....
  旅になど出たくなかった
  わたしは 部屋に鍵をかけた
  カーテンをひいて静かな音楽をきいた
  水をのみながら 岩間を抜けるほそい風のような
  詩の言葉を待とうと思った

 ....
  玉蜀黍よ、わたしは考えていた
  家にのこしてきた洗濯物のことや
  背広にしのばせた セブンスターの空き箱のこと
  やがて都市は赤く染まり
  猿はどこまでも愚かに
  皺が ....
  木枯らしに舞う枯れ葉よりも
  宇宙はその日 小さなものだった
  果物の冷めた肌のような けさの通り
  横断歩道を渡っていく {ルビ面皰=にきび}顔の学生は
  なぜ朝がきて夜 ....
  水色のピアノを
  あなたは弾いていた
  獰猛なまでに素早く指をすべらせ けれども
  唇の端にはささやかな笑みをあつめて
  手に負えない{ルビ巨=おお}きさと
  理不尽な ....
  煮豆を口に運んでいるあなたは
  だれかの真似をしているふうなのだけれど
  わからないし どうでもいい
  椀に添えられた手は
  貧乏臭くひび割れているし
  化粧気のない頬 ....
  観覧車の見える場所で 夕陽が落ちるのを待ってた
  きみの左手に巻かれた馬鹿みたいな時計、
  その形が何かに似ていると思いながら



  足元に置いたコーヒーの空き缶には
 ....
  その日、
  蝸牛はコンクリートの塊のうえで
  止むことをしらない陽の光の歌をきいていた
  雨の降らない季節に彼らがどこにいるのか私にはわからない



  あなたの稲穂 ....
  白鳥のいない湖はだれのものだろう
  わたしは随分長い時間待っていた
  藻の緑に染まった水面に 静かな波紋が広がる刹那を
  何かによごされた羽が 目を逸らした隙に
  そっと浮 ....
  蛇口の水を、けさ
  流しっぱなしにしておいたの
  ぼくがいなくても地球は
  わけなく回り続けるの



  寒くてジャケットの
  エリをぴんとたてたの
  尻ポケ ....
  柔らかい毛並みをもつ犬が
  雨降りの日、あなたの家の周りを歩いている
  濡れそぼった人工革の鞄を口に銜え
  みじかい尾を左右に揺らしながら
  あなたはベッドで横になって
 ....
  朝早くに
  古臭い詩をわたしは書いた
  潮水に濡れた岩間を縫って這うように歩く
  数匹の蟹の節足のことなどを



  カーテンのあちら側で降っている雨が
  薄笑い ....
  左手の中で牛が眠っている
  さっきまで右膝のあたりにいたのに
  もう一頭の牛は鎖骨のあたりで草を食み
  けれどもまもなく体を地に横たえるころだろう
  テレビで昔の映画をやっ ....
  冷蔵庫の中で
  鶏卵の形状はときに難解だ
  それは石油や民主主義やマックブックが難解であるのと
  何ら遜色ない次元での難解さ



  女は夜、井戸で桶に水を汲み
  ....
  十月六日
  梢という言葉をまだ
  使ったことがないと気づく
  酢酸オルセインに染められた玉葱の薄皮
  カヴァガラスとスライドガラスに押さえ込まれた
  あの惨めさ
   ....
  森のなかで眠る
  ひどくねじくれた女
  爪に溜った懐かしい土
  {ルビ蚯蚓=みみず}があなたの太腿を這う
  けがれているから葉は美しい
  「たべてよ、
   ねえ、た ....
  きみがすき
  まっすぐな線をひいてみても
  やっぱりどこか曲がってんのさ
  だらしなく
  少し可愛らしく



  想い寄せるときは
  心をしんとしずかに……
 ....
  雲が赤く染まる
  町はうずくまっている
  少し怪我をしているみたいに
  どこかで華やかなパーティーが開かれている
  緩められるネクタイ
  グラスの触合う他人行儀な音
 ....
  ハンカチに指で書いた
  とうめいなそのポエムは
  日なたと影のにおいがする
  歯をみせてわらってよ
  はにかんだきみの口元が
  不思議にうごくのも好きだけど
  高い ....
  老人が籾殻を焼いている
  見えそうで見えない光のような匂いだ
  空は青く、少しあどけない
  わたしという言葉はもう
  ここには似合わない



  赤茶けた四角い煉 ....
  朝がいそいでいる
  子の笑う声のような
  光たちを小脇に抱えて
  ガラスの球は真ん中から
  はっきりとふたつに割れた
  きみが急に
  うたうからだよ
  ゆうべ見 ....
  銀紙のいたみが残っている
  なにをつつんでいたのだろう
  じょじょに
  曲がりくねり ながら
  朝になって夜になって
  夜になって
  夜になって
  言葉はみじか ....
まーつんさんの草野春心さんおすすめリスト(299)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
記憶- 草野春心自由詩413-12-1
羊たち- 草野春心自由詩313-11-30
きみはしっているのか- 草野春心自由詩513-11-27
古くからの漁法を使って- 草野春心自由詩413-11-21
明日- 草野春心自由詩213-11-17
梨の実の夢- 草野春心自由詩413-11-11
静けさ- 草野春心自由詩513-11-11
夜になっても愛は- 草野春心自由詩613-11-9
夕餉どき- 草野春心自由詩313-11-2
- 草野春心自由詩413-10-31
誰が誰かもわからない人だかりのなかで- 草野春心自由詩513-10-31
木枯らしに舞う枯れ葉よりも- 草野春心自由詩413-10-30
水色のピアノ- 草野春心自由詩613-10-28
煮豆を口に運んでいるあなたは- 草野春心自由詩613-10-27
観覧車の見える場所- 草野春心自由詩513-10-20
陽の光の歌- 草野春心自由詩513-10-19
風に似た生き物- 草野春心自由詩513-10-19
ハニー- 草野春心自由詩313-10-14
柔らかい毛並みをもつ犬- 草野春心自由詩313-10-14
古臭い詩- 草野春心自由詩10*13-10-12
- 草野春心自由詩313-10-11
難解さ- 草野春心自由詩613-10-10
語彙- 草野春心自由詩413-10-6
ねじくれた女- 草野春心自由詩313-10-5
きみがすき- 草野春心自由詩513-10-5
パーティー- 草野春心自由詩313-10-2
はにかみ- 草野春心自由詩713-10-2
籾殻- 草野春心自由詩813-9-30
せわしない朝- 草野春心自由詩513-9-28
銀紙- 草野春心自由詩713-9-24

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