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長い歩道が
河馬のようにみえる午後
男はあおいホースで車を洗っている
ふたりの老親と数十万程度の借金と
慣れ親しんだ不眠とが彼の歪な肩に載っているが
飛沫のな ....
金魚鉢の水が
飴色によごれていく
たくさんの人がおもてを横ぎる
近所じゅうの家で年の瀬の支度がはじまる
取り返しのつかないことや
取り返しのつきそうなことで
....
誰のものともしれぬ侮辱が
枯葉とともに足元に落ちていた
ひからびた爪をもつ獣が屋外の
潅木の陰で忍び笑いをしていたけれど
あれで聞かれていないつもりだったのだろうか ....
雨はいつ止むのだろう
あなたの柔らかな胸のなかへ
いっぴきの野犬をときはなちたいのに
この雨はいつになれば止むのだろう
決意にみちたやさしさよ僕を睨め
凪より ....
あまい針を舐めながら あなたは
世界の骨に温かな肉がともされるのを見ていた
だれかがあなたの内側に積もった雪を道の傍に退ける
そしてもう一人のだれかがその雪をさらに傍に退 ....
ひかりが鉄柵をすべりぬけ
あなたの膝を白くよごした
煤けた骸だけがあるく目抜通り、
彼らのうたう寧ろふくよかな夜想曲に
暫し立ち止まったのだろうか、あなたも
....
つまづいた
冬のバケツの
かたちをしたわたしたち
は、先のとがった言葉がいくつも
しろい雪にうまっているのをみたんだ
わかりあうことの嘘をしっているから
血 ....
しろい舟に
あなたの息がかかる
草の影をそっとゆらして
一日がまえにすすんでいく
わたしたちもすすんでいくのだ
かなしいことがどれだけあっても
あなたにはかならずつたえるから
....
ずっと、
戸は開いていたが
入ってくる者はない
おまえの魂が、刻一刻と
アケビの形に変わっていくのが
ここから見えているだけだ
夜以外の時間を少しでも
....
四、
という数字は
光線に貼付きやすいのかもしれない
高架橋のナンバープレート群が何故か
西洋の婦人画をおもわせる夜、
わたしの精神はまたひとつ
緑色の ....
半刻ほど前から
組んでいた指をほどいて
あなたが落とす銀箔に似た笑み
ガソリンじみた水溜まりにひとつ、
爛れたショパンがしゅんと跳ねた
科せられた罰もないので
皿の芋をとって齧る
女より甘い肉のないことを知りつつ
透明な箱の戸をあけしまいこんだ一輪のすみれ
壁をうつ夕立ちのつめたさだけで
すぐ ....
積まれた雑誌のうえに
毒茸がひとつ置かれていたはずだが
きょうは、かげもかたちもない
隠したのが彼女だということはわかるが
肝心の方法がわからないから憤懣やるかたな ....
日もくれているのに
女の子たちが鬼と遊んでいる
鬼はわらっているようにみえるが
ほんとうはぜんぜん笑ってはいない
むらさきいろの心がわけもなく歯ぎしりをする
....
敷布に押しこまれた
あなたのからだは私が
思ったよりはるかに固かった
きたない床をつま先でやりすごす
垢のういた日々が私たちの居場所だから
言葉のなかにかくさ ....
秋の町は、
くれないのさざなみ
思い出はずっと乾いていた
ポケットのなかの木の葉
あのひとからはもらい損ねた
微笑みの匂いがする
きみと帰る ....
歓びはなかった
とはいえ哀しみもなかった
わたしたちはベンチを分け合って座り
冬の始まり、辺りに人影はなかった
言葉はさっきまで……あった
今は沈黙さえ、ない ....
敷き詰められるように並んだ
黒い車たちは、なにものかの無意識の
先遣隊としての役割を負っていた
砂の詰った頭蓋で老人が嗤うが、
可笑しなことは殆どひとつもない
....
飛び降りてみるのもいいかもしれない
きみの昔話は、ちょうど開けた土地を過ぎ
ひどく思い切りのいい 崖に着いたところだった
足もとで禿鷹が喰っているのはなんの屍肉か
....
恰もみずからが
一つのテーゼであるかのような
岩の静けさ……けれども
誰にも触ることのできない
あおい歌が、あおい、うたが
きみのなかでふるえているのをしって ....
夜の芝生で
いるかは一度だけ跳ねた
手に拾えそうなほどの光が今日、
とおくの月やら星やら町やら、そんなものから
迷いこんできていたから、けれども
そのなかを泳 ....
なかば開かれた窓の傍ら、
揺り椅子で膝を抱えあなたは風を舐めている
なにもかもが 透明なジャッカルと化して
あなたの内なる屍肉を貪っているのだろうか
みどりいろの西 ....
土嚢でも背負っているのだろうか
きょうの町は、肩の辺りが硬く強張っている
木陰のところで音楽は重なりあって死んでいる
物欲しげな野犬は吸い殻に鼻を近づけやがて立ち去った
....
しろい頬をこちらにむけて
月が肩をふるわせている
窓の外から、じっと
石でできた町がぼくを見上げる
けれども雨がふっているのはまだ
きみの瞳のなかでだけ
....
入り口の方にあなたが立っていたが
出口の方にも同じようにあなたが立っていた
べつに邪魔をしているわけでなくただ立っているだけのこと
そういえばそのような薬物をわたしはどこ ....
一日中、
こわれた雨樋をみていた
網戸にささって死んだ虫をみていた
あなたがこのよにいきているなら
わたしがしぬことはぜったいにない
わたしたちのなかで 言葉 ....
夏影を
蛇の身がなぞる
あおじろくつめたく
すべての陽がきえていく
汗が鎖成す、おまえの鎖骨
はきつぶされた靴は
あなたの手にひろいあげられ
鳶の影は 青い空を円の形に縫う
午後、けれども其処彼処の綻びから
光は果物のように落ちてくるのだろう
宇宙船は庭にうかんでいた
宇宙船はトマトのように赤かった
宇宙船は言葉のようにつめたかった
どうでもいいが窓際でティッシュペーパーをしいて
二週ぶりに伸びた爪を切っ ....
陽の光があふれるところで
あなたのからだを抱いていた
影は こまかい枝のようになって
わたしたちに踏まれている
世界から背をむけてまで
夢見ることを手放してま ....
まーつんさんの草野春心さんおすすめリスト
(299)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
敗北
-
草野春心
自由詩
4
15-1-9
金魚鉢
-
草野春心
自由詩
3
14-12-28
潅木
-
草野春心
自由詩
4
14-12-28
雨の歌
-
草野春心
自由詩
7
14-12-23
あまい針
-
草野春心
自由詩
6
14-12-21
空耳
-
草野春心
自由詩
3
14-12-20
フユノバケツ
-
草野春心
自由詩
3
14-12-6
しろい舟
-
草野春心
自由詩
3
14-11-29
魂
-
草野春心
自由詩
6
14-11-18
四
-
草野春心
自由詩
3
14-11-3
爛れたショパン
-
草野春心
自由詩
9
14-10-29
罰
-
草野春心
自由詩
2
14-10-26
硝子の音
-
草野春心
自由詩
4
14-10-23
鬼と遊ぶ
-
草野春心
自由詩
5
14-10-23
雑巾
-
草野春心
自由詩
5
14-10-13
さざなみ
-
草野春心
自由詩
4
14-10-12
街路樹
-
草野春心
自由詩
6
14-9-28
先遣隊
-
草野春心
自由詩
2
14-9-21
崖にて
-
草野春心
自由詩
3
14-9-14
あおい歌
-
草野春心
自由詩
3
14-9-14
夜の芝生
-
草野春心
自由詩
7
14-9-7
嗤うジャッカル
-
草野春心
自由詩
4
14-8-31
移住
-
草野春心
自由詩
8
14-8-24
砂の城
-
草野春心
自由詩
5
14-8-23
悪魔
-
草野春心
自由詩
7
14-8-20
雨樋
-
草野春心
自由詩
8
14-8-10
蛇と鎖骨
-
草野春心
自由詩
5
14-8-3
綻び
-
草野春心
自由詩
5
14-7-25
宇宙船
-
草野春心
自由詩
4
14-7-24
からだ
-
草野春心
自由詩
5
14-7-21
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
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