観覧車の見える場所
草野春心



  観覧車の見える場所で 夕陽が落ちるのを待ってた
  きみの左手に巻かれた馬鹿みたいな時計、
  その形が何かに似ていると思いながら



  足元に置いたコーヒーの空き缶には
  ぬるい液がまだ、ほんのしるしぐらいは残っている
  けれどもそれを拾い上げて きみは煙草を突っこんだ
  時間が 透明な砂になって
  透明なざるをさらさらとくぐりぬけて
  肩の上に積もっていくのをぼくはわかっていた



  観覧車の見える場所で ぼくたちは観覧車を見てはいなかった
  それにたぶん本当は 夕陽を待ってたわけでもない
  きみの左手に巻かれたものは何かに似ていた
  何もかもに 似ていた





自由詩 観覧車の見える場所 Copyright 草野春心 2013-10-20 10:43:59
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