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 わたしたちの 静かな部屋は 青かった

 ポケットに入れた 痛みたちは つぎの日には
 砂にまぎれ、洗濯機ゆき
 やだなぁ。

 {ルビ溢水=いっすい}を 眼にとかして
 わたした ....
 亡者に似て言葉たちは
 あおい廊下を徘徊している
 床に雲までもが
 映り 流れていくから
 滑りやすい 廊下
 谷間に
 爆撃のように空が落ちてきた

 カラン、と音がして
 貧しい僕らは 拾いたくて
 枯葉のまえでうずくまった
 つぶれた靴を
 見ていると雨を思い出す
 ほの明るい 窓硝子のむこう
 僕の心が僕の心に変わっていく
 その間も絶えず 雨は降り続けている
 中空にほうった
 ボールが手元に戻ってくるように
 一日が 終わった

 熟れた光が実をつけては
 落ちていくのを
 潰れるのを

 目で 追っていた
 銀の線を引いていく飛行 ....
 魚が数匹
 日の光になって
 頬の上を泳ぐ

 問われては 答え
 答えてはまた 問い
 感情の影に貌をかくして

 問われては 答え
 生まれてはまた 息絶え
 命あるもの ....
 何も言わない
 読点のような皿を洗う
 燃え終えた数本のマッチに
 年々似てくる
 僕の記憶

 日をうけて
 影になっていく 木
 振動する沈黙 かなしすぎるほどに
 決して ....
 赤い葉が 二、三枚
 枝に残っている

 ここに
 光が建っている
 秋 水辺にいるみたいに
 薄く 目を開けて
 飛沫を 頬に浴びて
 無害なことばかり話す有害な人
 舌先から 論理が涎のように垂れて
 皺くちゃのスーツに染みをつくる

 キミに足りないのは嫉妬心だよ
 そう言われた 丸ノ内線の車内で
 他人か知り合 ....
 アーケードを沢山の人が歩く
 なにも考えていないときの
 脳内のような光景

 半透明な意識が血管を流れていく
 言葉がダマになってそこかしこで死んでる
 ふと 誰かの気配を感じて振 ....
 昨晩 新宿で友人と呑んだ
 バーでは若い男女が
 資本主義の終わりを論じていた
 会計前に女はキスをせがんでいた

 友人は家庭に問題を抱え
 僕は三十七で 家庭を持たず
 僕らは ....
  淵にいて
  くるくるとまわった
  すごく晴れてた


  池があった
  水に 日もぼうと浮いてた
  ぜんぶ本当にあった


  淵にいて
  かなしさから
 ....
  忘れたものだけ
  見ることができた


  床に張った
  埃 夕日の格子型
  蛇口に残る 唇のような水
  言うことができた
  言い尽くしたことだけを


  ....
  約束の時間にすこし遅れて
  寂しさの続きのような場面が始まる
  駅舎の街灯に羽虫が 丸く 集る


  高架下 ラーメン屋に入る
  やがて感情は数枚の貨幣に似てくる
  ....
  川を越えて
  戻ってこなかった
  砂利になった言葉ならば
  ひとつかみにして 気のすむまで
  玩んでいられるのだが


  駅の屋根に
  ふる雪のかなしさ 静かさ ....
  読みさしの本に
  めがねを置いて

  電気をけして寝る
  かぜのたたく
  春のよる

  飼っていた 小さい いぬ
  ゆめのなかで やわらかく
  きみの手にだかれ ....
  笑んでいた
  旋律のような歯
  高層ビルが 欠けた明かりたちを
  組みあげていく わたしの書く風景
  潮錆びた 港湾都市の
 窓際にいて
 日差しが区切れていく
 とどめられた 文章
 なにか 約束のようなものを
 忘れるときのにおいが この世界
  みぞれ雪が 都市に注いで
  ごくすみやかに歌となる
  その疾さで のどがかわいていく
  煙草を 二口 吸う
  毛皮のコートを着て出かける
  ねこが
  しみこんでいる路地
  空がきれいだ
  電線が微かにたわんで
  ビルのむこうまでみえる
  わたしたちが死んでいくのがみえる
  あなたがきて
  雨がふった

  かなしくはない
  幸せでもない
  木がゆれた

 
  日が落ちる
  あたりがくらくなる
  街のかげが 夜になっていく
  ....
  わたしを欠いたまま
  わたしを欠くことで
  蛞蝓は 祭り路に垂れて

  三十二歳の
  女の唇のようなかたちの
  乾きが 丸くひらく

  信念の青さで糊をした
 ....
  糸球になって いつしか
  あお空へうかびあがっていった
  幼年期のぼくらのなさけなさ

  小さな 薄明るい唇の
  きれいなおさげ髪の女の子
  もう 全然 うつくしくは ....
  どこかの駅で
  列車や言葉や人影など


  待っていた
  観念的な雪を肩に
  積もっていくにまかせ


  けれど沈む日の悲しさだけは
  わたしたちを灼いてい ....
  見えつつ
  あるものの内壁へ
  つたう光へ、冷えた天使をみつめていた
  腫れ房を成す、{ルビ硝子景=ガラスけい}の、あなたがたの
  優しさから眼をそむけた
  見えつつ  ....
  把手こそついていたが
  その壁は 扉ではなかった
  今のわたしにはそれがわかる
  たわわな果実のように 美しい 直方体の
  寂寥だけが 向こう側の 壁際に置かれている

 ....
  山道の草木を横切る
  ギンヤンマの蒼い複眼に
  私たちの過去が沈んでおり
  どうやら今も放熱を続けている
  遠く 手放してしまったものも
  未だ近く 触れられるものも
 ....
  わたしは座る
  青空がゆれている
  かなしいという言葉がなぜか
  小さな虫みたいに空気をうめていく


  なつかしい歌を思いだして
  気持ちだけが静かになっていく
 ....
  青毛の馬が 風にまかせ
  わたしたちを連れてきた
  潰れかけの酒場はまだ 開くには早い
  空き瓶が入っていない 汚れたビールケース
  うるんだ眼がわたしたちを睨む
  わ ....
  天使は窓の縁に座り
  少しずつ透き通り 外の闇と
  見分けがつかなくなってしまった……
  バッハの遺した鮮やかなコラールが
  床の木目に 僅かな痕をのこした{ルビ後=のち} ....
まーつんさんの草野春心さんおすすめリスト(302)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
Overflow(2025.01.09)- 草野春心自由詩325-1-18
亡者(2024.11.30)- 草野春心自由詩425-1-10
貧しい僕ら(2024.12.09)- 草野春心自由詩3*25-1-9
自分(2024.11.29)- 草野春心自由詩324-12-19
軌跡(2024.11.10)- 草野春心自由詩5*24-12-14
魚(2024.11.06)- 草野春心自由詩524-12-10
何も言わない(2024.11.03)- 草野春心自由詩624-12-2
プールサイド(2024.11.24)- 草野春心自由詩5*24-11-28
涎(2024.10.31)- 草野春心自由詩424-11-25
アーケード(2024.10.30)- 草野春心自由詩224-11-24
資本主義の終わり(2024.10.27)- 草野春心自由詩424-11-21
淵の話- 草野春心自由詩324-5-14
果物籠- 草野春心自由詩1123-11-14
羽虫- 草野春心自由詩523-11-6
歳月- 草野春心自由詩923-10-9
託す- 草野春心自由詩323-5-24
風景- 草野春心自由詩222-9-24
文章- 草野春心自由詩422-6-25
みぞれ雪- 草野春心自由詩322-6-4
ねこ- 草野春心自由詩9*22-2-23
あなたがきて- 草野春心自由詩3*18-5-24
- 草野春心自由詩218-5-3
吹替え- 草野春心自由詩218-1-21
冷たい駅- 草野春心自由詩416-7-18
冷えた天使/見えつつあるものの内壁へつたう光- 草野春心自由詩816-6-4
把手- 草野春心自由詩515-9-22
過去- 草野春心自由詩415-7-26
青空- 草野春心自由詩615-7-12
青毛の馬- 草野春心自由詩215-7-12
Choral- 草野春心自由詩515-7-4

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