ダントン課長は本来は古いタイプ
事務職の姉さんたちがウルサイから
お茶を自分で入れて飲んだ
ノルマのこなせない私に
容赦なく怒鳴るくせに
飲み会ではセクハラ
帰り際こっそり
「仕事な ....
この花は
この花は
もう
やはり
枯れてしまう
水やりを
忘れただけかな
わから ....
昔の女と話をする
昔の女は昔を知らない
ふりをして
少しだけ話す
サンダルから
知らない親指が生えている
尻の形は
変わらないのに
愛されたかった
わたし
壊れた
粉々に砕け散った
もうどこにもいない
探しても
見つからない
まるで4階から
地面に
パソコン本体を
落っことしたみたい
音は聞こえなかった
ゆ ....
わたしがそれを見つけたとき
わたしは28歳
離婚したばかり
バイトを3つ掛け持ちし
年下の男と暮らしていた
年金なんて払えなかった
でも先のことを考えると不安で
毎月5000円ずつ郵 ....
女の残り香が飽和した部屋の片隅のベットを
夏が来る前にシングルにしよう
と決めてから
もう何度も朝日を浴びて
僕が寝返りを打つたびに
ぐっと沈み込みながら
男臭いにおいを嗅ぎ続けてくれ ....
さびしさに
ひざをかかえて
タオルケットははいだまま
「る」の字でねむる
あの{ルビ娘=こ}は今頃
遠い空の下
今夜も誰かに抱かれて
求めあう「る」と「る」を
くみあわせてる
....
ことばは
たましいを
つれてゆくよ
ひとつの
ぶんに
おもいを
はせて
ひとつの
ぶんに
きょうを
のせる
ひとつの
ぶんの
なかにも
ぼくは
いきて ....
銀河の天秤がゆっくりと傾いて
月がかろやかに昇ってゆきます
夏の星座の中心へです
澄んだ湖面は夜空をうつし
魚が背びれに月明かりをうけて
チカリ、チカリと輝きながら泳ぎ
まるで流星のよ ....
どうしたらいいのかよくわからない
ので
眠れるように激しく
どうか
お願いします
はりねずみをなでなでしてくれる
奇特なひとはいませんか
手のひらが血だらけになるかもしれないけど
....
たぶん
いつでも泣いてる僕よりも
いつでも笑ってるアイツの方がモテる
いつも泣かせてばっかの僕よりも
いつも笑わせられるアイツの方がモテる
今度
葬式にでも連れ ....
「いらっしゃいませ〜。」
友達に誘われた飲み会を断って
仕事場を後にした
通り雨の後の歩道は
すっきりとしてたけど
私の気持ちはぜんぜん…
聞いてみたいけど
聞いてみたくない ....
深緑の
深くなる光を
鉄筋コンクリートの箱の中から
眺めています
時計の針は
ここを刻むと
それ以上は動かなくなるのです
取り残されるように
私と空間は
どこか
こころ ....
何故この歌を今、口ずさむのか
ひたすらに月光
わたしの影を薄く掬う今宵
開襟シャツの綻ぶあたり
さすものはある、何故
を問いただすも
虫 ....
もう何年も前のこと
ある夜のブラウン管の中
孤高のステージで
赤毛を振り乱して歌う{注ジャニス=アメリカの歌手}
夭折した彼女の生涯を
ナレーターが語り終えると
闇の画面に
白い文字 ....
母方の祖母の雪江さんは
70歳くらいでガンで死んで
お通夜の次の日に突然生き返った
その時なぜか僕1人しかいなくて
雪江さんは自分の死化粧を見て
「えらい別嬪さんやなぁ」となぜか ....
「ほんとはね」
爆弾を仕掛けてるの
あなたの急所を
探り当てたよ
遠まわしに少しずつ
見えないように
わからないように
気づかれないように
ねえあなた燃えちゃうよ
燃えち ....
みんな石になる
みんなみんな石になる
おやきょうだいしんせき
ともだちだんなおくさんこども
ただのしりあいそしてしらないひとたち
いつかいつかみんな石になる
何色のお墓にしようか
変 ....
∧表∨
やぼったい
ねったいぎょ
やっぱりぜったい
やりたいさかり
さっぱりばっさり
しっぱいばっかり
やぼったい
ねったいぎょ
ていたいてったい
ふんだりけったり
いっ ....
女は
胎内に新しい生命を宿したら
「母親」になるというのに
男は
新しい生命が誕生してから
「父親」になる権利を得る
のだろうか
それは
目の前に細く頼りない道が一本
....
心も体も逆立って
どうしても眠れない
汗だくになりながら
何度も何度も寝返りを打ち
記憶を掻き毟る
流れる血の色は
見たこともない
どす黒い色で
こんな満月の夜にきっとわたしは
....
ここのところの暑さは
かなわんね、と
足元で声。
室外機のうしろ
干からび寸前の
トカゲが
ペラリペラリとにじる
爬虫類系、得意じゃないけど
手のひらにのせてやった。
こ ....
----今日はどうされましたか。
ええっと、こころにぽっかり穴があいてしまったんですか。
----で、いつごろからそうなりましたか。
覚えていない、物心つくころから何となくずっと、で ....
箱の中身はからっぽだ
いつの間にかからっぽになってた
いつから箱を持っていたのか
四角い形、色、におい、ずっとそばにある箱
何も入っていないこの箱は
箱のまま、ここにあり ....
気がつけば
眼があなたの姿を探す
気がつくと
眼があなたの姿を追っている
いつの間にか
startを切っていたこの想いの
諦め方など
知るはずも無く
忘れる術を
知ることも無い
....
漢字の
「小」って
お母さんが真ん中に寝て
子供が両脇に寝てる様子に
似てるね
まいばん
そうやって
寝ています
心の中の本棚に
私小説が増えてゆく
主人公は
いつも不器用で
哀しいほど
いつもみっともない
誰が読んでくれるでもなく
ただ
収められてゆく
落胆のため息とともに
それは ....
夕暮れのスーパーマーケット
では
いろんなものが
安く
売られていて
わたしはカゴを持ち
ぼんやりと
歩く
お金を出したら
いくらでも
買える
ものたち
ほんとはあ ....
信号を無視してあらゆる交差点を渡った 緩慢な自殺未遂もことごとく失敗に終わり
裁縫バサミで刺した腕の傷も今はもうほとんど目立たない
つながれた大型犬が吠える それにつられて隣の家の
つな ....
お前はなぜそちらにいってしまう
なぜ嬉しそうにそちらにいってしまう
私の手をなんて簡単に離してしまったんだ
あとではぐれたてもお前なぞ知らないぞ
お前はなぜそちらにいってしまう
なぜ嬉し ....
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