過去なんて見えない
私のいない思い出なんて必要ない
大事なものは
いま目に見えるもの
今は必ず過去になる
未来は絶対 現在になる
新しい過去はいくらでも作 ....
天気予報は曇りのち雨
冬晴れ続きで
乾きすぎた雨女は
その唇に
無色透明のグロスをさす
鞄の隅に折畳みの傘
忍ばせてはみたけれど
きっと今日もそれを
使うことはなくて
濡 ....
ひと気もまばらな公園で
湿った土の上に落ちた椿の花は
どこか心細げにこちらを見ていた
ささくれたこの景色には眩しすぎるので
その紅色を熱でとろとろに溶かして
指ですくいとりたいと思っていた
....
東の空はすでに白々と
断末魔の星屑 儚い光
やがて朱に交われば明けの海
入り江にかすむ靄 侵食の色
島に夜明けがまた今日も来るたび
緩やかに繰り返す日々
日常の光 営みの光
家捨 ....
横断歩道を
舟が渡っていく
あの生まれたばかりの
小さな子供は
その隣で雑談してる
サラリーマンの男たちを
いつか脅かす存在になるだろう
そしてあの年老いた
一艘の ....
俺には
たくさん
傷跡がある
喧嘩に
明け暮れていた
あの頃は辛かった
辛いとは
わかっていながら
素直に言うことすら
出来なかった
自分で
自分を
あとで
考え ....
どこまでも行くんではないですか?
そんな囁きがきこえそうな
森ではいつも会議が行われています
人類について
世界について
生命が
生まれては飛び立ってゆく
後ろも向かず
こんこんと ....
私たちが見ているものは
わずかに違っている
原事実と
そこに見えるものとの差異で
私たちは
困り果てている
だが
それは嘘なのだ
私たちは
原事実をしっかりと見ている
春は夏を ....
悲しみを食べきれなくて
お腹いっぱいで
ほら、涙がひとすじ
しんしんと静かに
静かに舞い降りて
人々を銀世界へと連れてゆく
そんな凍てつく夜に
この胸の想いを
何と詠えばよいのでしょうか
凍てつく様な闇の中
月光を乱反射させながら
尚も ....
風に煽られて髪をかき上げ
傾斜約20度の坂道を登ろう
優しく広がる見慣れた景色
又独りここへ戻ってきたね
傷つくことに慣れてしまい
こころは冷めてゆくばかり
会いたい時 ....
無条件に抱かれることが愛だなんて
知らなかったよ
なにかを果たせないと
たとえ子供でも
愛されないと思ってた
顔色を伺ってるって
こういうことを言うんだって
知らずに生きてたから ....
夜霧よ
立ち上がりなさい
朝露をくばれるのは
お前しかいない
滑り台に登り
寝転ぶスペースがないので
座って 空を眺める
オリオン座を探してみた
瞬く四角は輪郭が歪んで
中にある三連のはずの星も
つながってしまっている
耐えきれず ....
実に面倒臭い生き物です
ミルクともヨォグルトともつかぬ雲が
蒼白い画用紙にもっさりと乗っかっているだけの空
針の匂いの突き刺さる景色はただ想像するだけで
心は常に深淵に投げ込まれてしまう ....
触れられたくはないという傷口を
あなたは紅く晒している
こまかく震えるそれは
風がふいても激しく痛む
泣きながら
叫びながら
それでも隠そうとはしないのだ
まるで
勲章のように胸をはり ....
凍結は純物と不純物とをろ過し
流れのうちに凝り固まった粒塵は
根を下ろした水草に溜まりをつくり
小さな凍土を作る
足のつま先をそっと浸せば
無数の細かな波紋が
ぷつぷつぷつと
干渉し ....
あの日二人
言葉を惜しむ程に
見つめあった時を
昨日の事のように
想い出しているわ
どうしても
時間を止められず
唯それが悔しくて
泣く事も出来ずに
笑って見送ったの
時空 ....
大切に育てたモノは
誰にも見せられない
丁重に外を睨め上げて
時折祈るのは空が落ちること
暗く湿った風を蔑んで
耳に残るは静かな破裂
命は吐き気がするほど柔らかく
言葉は寒気がす ....
あなたという ゆりかごにのって
ゆらり 揺れています
あなたが どんな風に想い
どんな風に泣いても
ゆりかごに乗った私には
見えません
ゆらり ゆらり
通用しないといっては ....
らっきょ の め
らっきょ の かわ
らっきょのしん
らくあればくあり
とはいうけれど
らくてんてきにいきていこう
おれはなんにもかわらない
らっきょ ....
エミリ、お空でお絵かきしてる
雪のような白の絵の具で
まっ青の空のカンバスに
ときどき 熱心に
ときどき 気まぐれに投げ出して
絵の具だらけの足でかけまわり
白い雲たちとかくれんぼ
....
遠くで踏切りの音が聞こえる
どこに向かう列車だろう
真夜中すこし前、
僕にはもう
行く先なんてない
ここが僕の終点だもの
音量を絞ったラジオからニュースが聞こえる
君の
眼を細めて ....
「睡魔のように、食欲のように、定期的に絶え間無く襲ってくる殺人意欲の抑え方を僕はよく知らない」
初めて出会ったときに言われた彼の、冗談にしか取れない戯言が、本当は言葉以上の重みを持っていたの ....
高層ビルを
見上げながら
家路につく
街は高さを失いながら
広がっていき
やがて私は
空を見上げている
今日も日が沈む
路地を曲がり
その先に辿り着くと
温かい光が灯る ....
おいぼれのわたしは四六時ちゅう呟いています
空(くう)にむかって永訣を
古血のなかのかすれた声で
「いまはただ ただ時にすがっているだけです」と
遠くで救急のサイレンが
蚊の鳴くように
....
雨ばかり続くせいか
部屋の天井と壁の隅
3本の直線の交わる所に
黒いカビが生えたようだ
一人ぼっちの僕
人に聞けない事
カビに聞いてみた
「僕みたいなダメな人 ....
愛といのちは似ているかも知れない
どちらも永遠ではないところが
どちらも生きることそのもののようなふりをしているだけで
なにかもっと大きなものの仮の姿のようなところが
自尊 ....
どんな風がすき?
その風が
吹くわけでもない こんな日も
どんな花がすき?
その花に
育つわけでもないこの花も
意のままに
したいか 空の色までも
どんな人がすき?
そ ....
あのころの今
こんなふうにしていたから
こうなれたとかじゃなくて
あのころの今も
こんなにふうにして
どう転ぼうとも頑張っていた
暗中模索、徒手空拳でやっていた
....
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