傘のない世界で
きみに傘の話をしている
小さなバス停に並ぶ他の人たちも
そぼ降る雨に濡れて
皆寒そうにしている
ぼくは傘の話をする
その機能を
その形状を
その色や柄の ....
なにをやってるんだって言われるよりも
よくできたねって言われるほうに
どきりとするようになった
ほめられていいものだろうかと思うなんて
自分ではうまくやれたって思っても
すんなり認められ ....
あなたの寝顔が愛しくて
そっと頬にふれました
されるがままになっている
あなたがだいすきです
あなたが自分を責めるとき
私は苦しくてたまらない
あなたが振り絞る声が
胸に突き刺さって ....
踊るように、街を歩くひとがいた。
両手首に輪を嵌めた、杖をつきながら。
僕の肩越しに密かな風をきり
横切った、彼の背中はおそらく求めていない
これっぽっちの、同情も。
不 ....
小さいころ、お母さんとデパートにお出かけした時
ハイヒールをはいたお姉さんが、
コッコッと音をたてて歩いていくのが
すごく羨ましくって
わざとサンダルをカチカチいわせて歩いた
....
人がいなくなって初めてその人の価値を知ります
人がいなくなって初めてその人の優しさを知ります
そう思えば
今何気なく過ごしているこの時間も
かけがえのないものとなってゆくのです
ピンクと灰色とブルーが混じり合って
あたりがもうすみれ色になっていた
春にちかい風が吹いた
LEDほどのつめたさが鼻を撫でた
きょうの天気がなんであったのか
わからなくな ....
ダンダンダンダン
ダンダンダンダン
かっちょいー
外国の曲を聴くとよく思う
私はよくそう思う
何言ってるか分かんない
単語のひとつも聞き取れない
だけどなんだかかっこ ....
ごめんなさい とあなたが言うから
ぎゅっと抱きました
生きていたくない とあなたが言うから
なにも言えなかった
息をしてるだけで ごめんなさいと
あなたが手紙に書くから
息をしていてく ....
ガラガラか
もしくは ぐあらぐあら かもしれない老人の
荒れた咳払いがする
すすけた匂いがする
ここは 老人の街
若者は ばかものだなんておっさんが言い
しにかけって よばれているのも ....
夕方はカラスが泣く
夜は犬が泣く
家ではきみが幸せで
家族とスキー旅行の計画をたて
休みには妹とブランチの約束をする
カラスも犬も昔から
ひとりごとなど言わない ....
にんげんの主食はにんげんです
人を食って生き延びています
にんげんはにんげんを探し
食うために挑んでいきます
たまに気に入って
持ち歩いたり
数回に分けて食べたりします
飽きたら ....
ごめんね と
言うためだけのごめんに
意味は無いような気がして
ごめんなさい
と言ってみるけれど
自分の中の洞穴から
寒い風しかでてこなかった
なのに
あなたは
い ....
庭にある植木をみると
綺麗に刈り取られた枝に
雪が積もっていた
縁側のマッサージ機に座っている
祖父はもういないからと
母がカーテンを閉めた
仏壇の祖父に祖母が
またなにか報告してい ....
きみを抱きたい
でもそれはデリケートな問題らしくて
うまくいってない
きみは降水確率0パーセントの晴れの日か
降水確率100パーセントの雨の日にしか出掛けないの
いま ....
あなたの言葉だけが
今の私の支え
あなたの声が
何度も
私の頭の中をよぎってる
あなたのしてくれたことが
私の誰にも言えない秘密の思い出
私は今
学校のパソコンを使ってる
放課後のこの静けさ
この緊張感
体に震えが走る
私の好きな時間
田んぼの
真ん中に
立っている
かかし
なんで
顔が
へのへのもへじなのか
わからない
人間でないのに
傘を頭に
かぶっている
畑の
作物を
荒らされないように
誰 ....
目覚めて闇 朝
まだ夜の明けてない六畳の部屋で
叫びたくなる
何かをしらせたいのではなく
ただ叫びたくなる
背中をつき破って羽化したいんだ
人がひとでなしになるのは
あまりにも世 ....
子犬が母犬にじゃれる様子が
かわいいというあなたをみる私
あなたという母親を見る娘の目で
あなたが私を生んだことは確かですが
私は私の意志で生まれたんですと
いう機会はない
あなた ....
死者の目に
いちにちのうち
なんどかなってしまう
傍観している
肉をもたない霊となって
肉をもたないだけではない
傍観するいがい
なんの術もなくしてしまって
....
私のかいた詩が
読んでくれた人の心に
ちゃんと届いたかな
やっぱり、詩をかくのは難しいな
だけど、何でだろう、かいたあとはすごくスッキリするんだ
だから、やめられ ....
僕の履いてる靴の踵は
ぽっかり穴が、空いており
電車待ちのベンチや
仕事帰りのファミレスで
片足脱いでは
いつも小石を、地に落とす。
給料日が来るたびに
「今月こそ ....
机の上に、一つの箱がある。
密かに胸の高鳴るまま
蓋を開けると小人になった、
星の王子様が僕を見上げて
「ほんとうに大事なものは、目に見えない」
と呟いてから
煙になって、 ....
気付かれないようにそっと埋めた
悲しみを夜中に掘り起こす
僕の愛犬と
別に犬なんていなくていいけどさと
言いながら鎖をぎゅっと握り締める
僕と愛犬は鎖で繋がってる
どちらが飼い主かなん ....
朝からスタンバってる
観光地のもの売りたちを
死者の目で見つめていた
こころがつくる霊性もあるだろう
こころがつくる肉というものもあるだろう
そういうものは
昼や夕 ....
あなたの温もりを知りたくて
陰茎を膣に挿し入れる
じっと
奥にある子宮の温もり
羊水の中で
守られていた頃を
思い出しながら
唇を重ね
舌をからませる
異なる二人の体温が ....
片手ナベに
この世の終わりみたいな白い牛乳いれて
つきっきりで温める
ナベの内側にふくふくと泡が立つ頃
みじかい瞬間の想いを終了させる
いれたココアのせいで
白は濃く染まる
自分のためだ ....
こんな日にはかぜも湿気てて
死んでるのに
生きてるみたいなお昼まえだ
さとった訳でもないのに
さいきん
胸にくるようなことがなくなった
こんな日にはふゆもほどけて
日だまりの影を送りた ....
『あのね、ぼく、おおきくなったらね、まりちゃんとケッコンしてあげるんだ』
小さい時にあなたが言ってくれたこの言葉を
....
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