職場のデスクに掛けたカーディガン
華やかな色に埋もれたグレーは
女性らしさを遠去けてくれる
着心地の良い制服みたいだ
自然と集まるグループの中で
どこにも属さず孤立していても
小さなマ ....
年を重ねる度に見なくなった
鏡は曇って裸を隠す
芸術家は生と死をなぞり
命を燃やして作品を残す
誰かと争っているのではない
ただひとつの肉体に宿る
パレードをこの手で掴みたいから
....
暗く清い女の子だった
こんなに、水のように柔らかい裸足では
どこへも逃げだせないだろうと思っていた
彼女は星の連なりを蹴飛ばし
夜の幕を裂いて、去った
綺麗な笑顔の残像は流れ星のよう ....
「何処へ行くの?」
「病院だよ」
わざわざ服を着替えて
ドライヤーで髪を整え
かしこまって行く先は
毎月の定期健診
ばかばかしくて
貴方を見る目が細くなる
昨日を捨てて ....
【チンダルのはしご】
●●●●●●●●
●●●●●●●
●●●●●●われ
●●●●●かい無
●●●●つまりは
●●●てがかり無
●●いままで苦 ....
街の廃墟に
ネオンだけが点いていた
残された無数の足跡に
波があふれ 消えていった
人々は荒れ地を進んでいた
空を覆う霧には
ここで終わる
と書かれていた
....
悲しい日が続くと
通り雨を期待する
淀みを防ぐために傘をさしている
だけど、まだ日はさして
道化師の様にたたずむ毎日
待ちくたびれた頃に、心を洗うように
雨が降りだす
川面に跳ね ....
グレーチングに足をとられて
突然 目の前の女性が転んだ
最強の赤いピンヒールは 雪の中では
通用しない
美しさが万全なら
どんなことも快調な街が
ひっくりかえった
蛭みたいに艶やかな ....
五時間に一本のバス錆び付いた車窓の外にひろがる田畑
田園のかなたに案山子見える朝わたしも案山子に見えるのだろう
遊ぼうよねぇ遊ぼうよと絡みつく室外機には幾百の蔦
ひとりふ ....
スカバロフェアに行ったことがあるかい?
ケンジが訊くから、ベンが待っているならね、と答えてやった。
ケンジは、ん? という顔をして犀のような目でわたしを見つめた。
ただでさえさえない顔が、間抜 ....
青鷺は、一声鳴いて、大きな翼で空をたたいた。翼のひとたたきで、番人の本来あるべき位置にもどったとき、「二人とみんな」の姿は見えなくなっていた。
茜色になった風が、吹いてきた。
番人は、口を大 ....
白い光があなたの耳を透かしている
あなたの血管が浮かび上がる
透けた肉は赤く
あなたの心臓はいま動いている
あ、また、つい、なんて凝視しては
なんでもないよと手を握る、握り返す
あたた ....
くすり、
笑うのだ なにかが。
ほら また 小さく。
虹の根元を掘っていると かすかに 聞こえる。
やはり、今日という日は、なにかを捨てる日だと、笑うものがいる。
佇む風は とまどいを隠 ....
シャンデリア
空のにおいが
なないろの真珠になって
くもの糸にきらめく朝、
なつかしい音楽を
聴いた。
それは
くさむらか ....
それから空は夏雲湧き立ち、風は川を越えて丘を越えて、それから線路を越えて団地を越えて、それからあの家の窓を抜けて、あの白い壁の部屋をぐるりと回る。部屋には檻があって虎がいて、虎は檻の中で待っている。誰 ....
夕闇にテイルランプをみつめては逃げ出すことだけ考えていた
居場所などどこにもないとひとりきりみんなと違う空を見ていた
さよならと書き殴ったページには余白だけがやけに多くて
目の前に別 ....
冬の城明け渡すとき水中で愛を交わしてウンディーネのように
雨そして夢から醒めた余白には君のではない愛の降りしきる
君の目に春を捧げる、遠い日に誰かに焦がれ散りし花びら
海 ....
離別すること
それははじまりである
丸い空が
しわがれ声をあげて
許しを乞う
そのとなりで
友はしずかに
そして
激しく雨になる
空がにわかに
なまりを
たくわえてく ....
今日もまた打ち捨てられたあの部屋であなたと行ういけない遊び
なすがまま私はあなたのお人形何をされても動いちゃダメよ
窓ガラス映るふたりのシルエット誰にも言えない秘密の儀式
しっとりと ....
それはひとつの水だった
ある日流れるようにわたしに注ぎ込んだ
それはひとつの風だった
吹き過ぎてなお心を揺さぶるのは
少女は春の花を摘む
長い髪を肩に垂らし何にも乱されることもなく
....
今日はぴかぴかに舗装されているから、うつぶせのままで背中の上をどんどん歩いていっていいから。夏になればまた雲が次々とやってきて積み重なるから、ふわふわと背中のほうからすこしあたたかくなる。街路樹の根っ ....
誰も知らない そんな夜、
少女のぽっちり開いたくちから一羽の蝶が
それはすみれいろの 夢見るひとのうすい涙のような
蝶が飛んでいった 音もなく
(恍惚めいた ひみつの儀式)
....
星さえも見えない夜の底にいてお願いシリウス僕を照らして
暗闇に瞳をこらせば見えて来るきらきら光る僕だけの{ルビ星=スター}
流れ星どうかお願いここへ来て君のしっぽに手が届くように
君 ....
最後には閃光、そしてエンドクレジットになるのだけれど、胃のあたりですっぱくなって、のどの奥から舌の上、牙と牙、唾液のにおい、鏡の向こう、気づいた時にはすでに遅い、そう気づくまえに服を着なきゃいけない。 ....
しぼりたてオレンジみたいな夕焼けに明日の分の元気をもらう
まだ青い林檎のような君だから紅くなるまで待つことにする
初恋は甘くて酸っぱいストロベリーそっとキスして涙の痕に
特別な果物だ ....
わたしたち、ちいさな山のちいさなおうちで、朝食のお皿を並べて二枚、三枚、並べているうちに足りなくなって、並べても並べても足りなくなって、テーブル継ぎ足しても足りなくて壁つきやぶって外に伸ばして、それで ....
くちびるから悲しみのエコーもう二度とさよならなんて言いたくないのに
金色の雨になって会いに来て閉じ込められた私はダナエ
ひとしずく君の涙がこぼれたら小瓶に入れて取って置きたい
聴こえ ....
ピンク色の絨毯がひかれていたので
汚してしまわないように慎重に歩いた
気まぐれな家主が
明日にでも片付けてしまうから
喫煙所の緑は
所々穴が開いている
この細胞を奪ったのは
私だろう
欠損を埋めることも叶わず
奪われながらも唯生きる命は
美しいと
云う賛辞を受けとるだろうか
今日も
命を削る白煙を呑む
私は
私の ....
きちんと 信じるべき唯一のかみさまを持たないわたしたちは
そして争うこころがわからない
殉ずるなら何に
死して何処へ行くのか
それはいつも朧気で
知らないことが
いつも対岸を火事 ....
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