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高校生のとき、
まだJRが国鉄だった時代、
三十日間三十万円日本一周鉄道の旅を計画した。
青春18切符があれば、不可能事ではなかった、
東京を通過しないとどこにも行けない関東圏、 ....
日が暮れていく、僕の脆弱な血管の中を
翼よ、あれがパリの灯だ
けれど、僕の翼はじゃがいもでできている
ポム・ド・テール!
大地のりんごよ、大空を飛べ、飛べったら飛びたまえよ
....
[水道管は、壊れています。前の駅を発車しました。]
水圧で 蛇口が外れそうになってるじゃないか!
こりゃいかん、いかんぞっ
「垂直に、屋上より、103号室まで
特急 ミズカモ ....
ビタミンが不足しているのは百科事典に住んでいる僕の妹
い、いえ、祖父だっただろうか、毎晩旅をするんです
一人残される僕の血糖値は急激に低下する
い、い、いいえ、血糖値が低下しているのは叔 ....
いつまでも
と誓いをたてるにはあまりに幼すぎたのだ
姉は朝食の後片付けをしながら
思い出し笑いをする
覚えてもいない妹は
今年初めて夏服に袖をとおした
ざ・・・ざ―――ざ・ざ・ざ――
雲っています。どんてんです。
いちごが売り切れています。
横断歩道に吸い込まれそうです。
いつものように歩くと
危うく、車に引かれたであろう雀を
踏 ....
吉岡君
電車の中で思わず声をかけそうになった
よく考えてみれば
こんな時間、こんな場所に
吉岡君がいるはずもないというのに
あの日と同じ顔
学生服のままで
そんな僕はまだ
....
つゆやみの夜
降りしきる蛙の鳴き声
このたくさんの鳴き声の中にも
さみしい蛙はいるのです
呼ばれているような気がして
サンダルを履いて庭に出てみると
蛙の鳴き声が辺りを包みます
白い ....
1
旅行者のトランクの中には死者が入ってる 閉鎖された事務所の机の下には死者が入ってる 金庫の中にも死者が入ってる 下水が道路と交差する暗くてよく見えない場所には死者が入ってる 重たくて動かす気にも ....
食卓レモンのかなしみは
食卓ってなんだ?と
となりのワサビに聞かれたり
きいろの表面に こまかい凹凸
みどりのふたが 大きすぎても
レモンになろうと
もがいているようで
かなし ....
昨日 いつも市場で会う少年と水遊びをしたとき
「お兄ちゃん、腕まくりが似合うね」って言われて
戸惑って
戸惑ってしまったまま 朝が来て起き上がる
いつもと同じように寝床に向かい
膝を曲げ 腕 ....
1
真っ青に透き徹る海が恋しい
真っ白に焼けた砂浜が恋しい。
湿気の多いべたべたする嫌な日
何でも有り余る肥大した無慈悲。
何故か連続して襲い来る不幸
大地は割れ火を吹く山 ....
この世に存在するキリンは全て
生きてはいない。と主張する宗教
雨の中、母親に甘えて
濡れた服を更に濡らす叔父さん
叔父さんのリストバンドには
叔母さんの写真
都会の人らも
....
オニグモは働き者です
毎日夕方に網を張ります
まずはゆるりと何本も糸を流して
どこかに引っかかったら網張り開始
手始めにいちばん外側をくるり張ります
真ん中から放射状に足場を張ります
....
朝、とても慌てていて
とにかく、慌てていて
うっかり捨てそびれていた
穴のあいたパンツをはいてきてしまった。
気がついた時には
私の体は宙に舞っていて
遠くで
誰かの叫ぶ声がして ....
爪を切ろう
明日から新しい仕事だ
こんな夜中に
手の甲を
濡れ遅れた微熱にあてがう
初夏だなんて
初夏、だなんて
密度を増しゆく空や緑を背景にしても尚明るく
誇るように明るく無数の二の腕が溢れていて
その無邪気さ、罪は無いけれど ....
すっかり草に覆われた
ぼくらが秘密基地と呼んでいたここに
今年もまた暑い季節がきました
打ち捨てられた自転車が
見捨てられたこの場所に
あの頃のまま忘れられて
なにが秘密だったんだろう ....
:うっかりおとした粗塩
:お砂糖小さじ一杯
:醤油大さじ三杯
:みりんキャップ一杯
それぞれ玄関にならべて一晩ねかせます
羽虫やアリが運びます そして よくわからない虫も
お ....
郵便屋が大きな声で歌いながら
手紙を一通
白いペンキのはげかかった郵便受けに
置いていった
さっきのは春の歌だったなあ
と思いながら
熱い夏の太陽の下
僕は草をむしり続けた
....
おれは海を釣ろうとする
海からおれを釣ろうとする
あなたは海を産もうとする
ひとの不思議を産もうとする
ぐるり
この星が太陽をひとまわりして
海辺の町に
また
桜が咲いた
....
僕が6分かけて君が どうして間違っているか
ていねいに 論理的に説明しても 君は
「だってキライなんだもん」
僕は コッパミジン
君の理不尽さは いつでも的を射ている
メ ....
あまりの暑さにクーラーをつける
よほど暑かったのだろう
いろいろな動物たちが家に集まりはじめ
またたくまにいっぱいになった
長い部位をもっている動物はそれをたたんだ
肉食動物は捕 ....
ときおり うなずく
うっすら目をあけて
アリでも ながめているのか
ここからは遠い
灰色の眼鏡には まぶしすぎる
桜の羽毛
さわっても怒りもせず
ときおりうなずく
貝のようなオ ....
あなたの好物を作ろうと
夕暮れ
サンダルを引っ掛けて買い物にでる
昨夜の 些細ないさかいの 償いに
海老の殻を
無心でむけば
いとおしさに変わるような気がして
という
無邪気な ....
にゃんでか知らにゃいけど
「にゃににゅにぇにょ」
が言えにゃくて、全部
「にゃににゅにぇにょ」
ににゃる
日常生活に支障はにゃいもにょにょ
こにょままでは
僕が僕でなくなってしまう
....
(言葉遊び無しに書くのは
貴女に贈りたいのでは無くて
示したいから)
貴女は唐突に現れて、僕に新しい知覚を与えてくれた
それはとても魅力的だった 第二の告発の声だった
そうして僕ら ....
駅ビルの屋上から飛び降りてから
地面に落下するまで
ずっと一人だった
公衆便所の個室から伸びて外まで出てる
トイレットペーパーが
雨に濡れて溶けそうだ
....
名前は?
いちおうクサノダイゴという記号はある。
どこから来た?
あの空のむこう。
歳は?
知らない。
仕事は?
ささくれ屋本舗
具体的には?
心 ....
どうしても手放せないものがある。
直径二十センチの海だ。
四キロを泳いで持ち帰った
はたちの俺だ。
ごろり
机の上にころがる
うす水色の{ルビ浮子=アバ}をまえに
いま、俺は ....
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