父は歩き続けた
角を曲がったところで左腕を失い
コンビニの前で右腕を失い
市営住宅の駐車場で両足を失った
やがてすべてを失い
最後は昨年まで歯科医院があった空地で
一輪の花になった
....
たとえば勉強すること
勉強が大切なんじゃなくて
勉強することが大切だと思う事
たとえば人を好きになること
好きな事が大切なんじゃなくて
好きになれることが大切だと思う事
たとえば父 ....
ほとんど一日家にいても
腹は減る
そんなときの食事は妙に豪勢にやりたくなる
肉も魚も野菜もたっぷりと食べたくなる
そして食べ過ぎたと思う
気持ち悪い
それでもまた ....
逃げる羊を追いかける。
嫌がる羊を追い詰める。
怖がる羊をあざ笑う。
とても とても 弱い羊は逃げ出した。
抑圧されて逃げ出した。
逃げて 逃げて 逃げて
思い切り逃げたのだけど
....
悲惨なニュース
雨が止まぬ
今夜もきっと
分かりあえない
夜雨の中で
殺された手の
ぬくもりだけが
街にヤサシイ
欲しくない靴、どれも汚い
笑えてるけど、なぜ不満足
十字路 ....
1、
ある朝起きたら母さんが
顔を剥がしていた。
止めようとしたけど怖かったから、柱の陰に隠れて見てた。
あちこち痒かったから(かいたら芽が出るわけだけれども)「痒い」に集中してお ....
静かなそらを見上げると
無数に星がみえました。
東京では息がくるしくて
毎日仕事に来るたびに
目がかすんでしまいます。
故郷はどうだったろう
そんな事をおもってみた ....
心に空いた穴を埋める様な長い雨
哀しみの様に地に響く{ルビ鎮魂歌=レクイエム}
出勤に向かう車達の排気ガスの匂い
錆びの匂いに似て懐かしさを思い出させる
子供の頃に秘密基地として遊んだ ....
君は甘いお酒が好きで甘いタバコが好きでやっぱり僕のキスが一番好きで
意味のない行為 一人きりの部屋で膝抱えて座る
君の小指の爪を噛む癖 続いて噛み切ってから少し顔をしかめる癖
ロ ....
誰かを思う、優しい手つき。
頭を撫ぜる。
互いを繋ぐ。
頬に添う。
滲むいとしさに胸を打たれ、
降り注ぐ想いのシャワーを仰ぎながら
昼しずりのそんな日に、
「ああ、あたたかい」
そ ....
にわか雨は窓ガラスを叩く激しさで
海辺の汐臭さをわたしの部屋まで連れて来た
波音のひたひた寄せるテーブルで
いつか拾った貝殻の擦れる音色がする
ハンガーにかけたわたしの白いブラウス
温もりの ....
寂しい亡骸を一人抱いて
浜辺を歩いて一回忌
君よりも一つ多くの夏を知り
君のいない夏をまた一つ多く知った
すきってきもちだけでねむれたらどんなにいいことだろう
君が たゆたう衝動の 可燃性の衝動ならば
私がマッチを投げ入れてやろう
私の くすぶる衝動に 燃え尽きかねる衝動に
ロシアのウォッカを注いでくれよ
{引用= あのひとの記憶がしずむ海は、いつしか防砂林で見えなくなった
越えられない高さに、すこし安心した}
砂が、降って
深く深く沈んで 底まで
皮膚 ....
深き森に眠る姫は
子どもの頃の夢を見る
夢に堕ちたアリスは
眠る姫にほんのりと頬を寄せ
狼を犯した赤ずきんが
ゆっくり、ゆっくりと
月を仰ぐ
満月が見た夢 ....
窓辺に鳥籠
君に届け
手を伸ばす
モノクロの空
いつか
僕は
事故で
死ぬだろう
そう
遺言
しておこう
いつか
君が
流すであろう
涙を
今のうちに
見ておきたか ....
死んだら天国にいけるんだ、と、その少年は笑って言う。あたしは、そうね、あなたは良い子だから、きっと天使が迎えに来てくれるわ、と答える。ねぇねぇおねえちゃん、天国ってどんなところなの、と少年が訊ねた。 ....
「この花きれいだね」
あなたは美しさの形を指先でなぞると
風の誘うままに微笑み
未だ慣れぬ白い感触を確かめながら
おぼつかない足取りで
わたしの半歩先をゆっくりと歩む
....
生きてさえあれば
悲しむことだってできる
君の涙をそっと弾いて
星にだってしてあげられる
生きてさえあれば
将来だって泣けるんだ
それがどんなに悲しむべきことでも
消えてなくなること ....
私は今日始めて子供を生みました
長い長い道のりで初めてでした
想像以上に重く
想像以上に暖かいものでした
私は今日二回目の子供を生みました
とてもとても短い道のりでした
想像以上に軽く ....
一人の詩人が詩を書くことを終えた
私にとって重要な日になるだろう
空を魚が泳ぐように
海に人が住むように
知りえない世界を詩と言うものにしていた
此処に私は住んでいる
だからこんな ....
大気中の酸素濃度が高いと生きてはいけないように
世の中が綺麗過ぎると、人はきっと生きてはゆけなくて。
少しだけ汚れている方が 生きてゆけるんだ。
透き通った水のようには なれないんだ。
眠れない夜に読経が聞こえない和尚も坊主もくんずほぐれつ
あしたから猫になるから恥ずかしい名前をつけて呼んでもいいよ
泳ぐ魚 無意味と知りつつ死ぬ君の欠片が♂の形をしてる
....
好きなものを好きと声を大に
欲しいと喚きながら手から奪って
泣きながら抱き締めて首を横に振る
それだけで あたしのもの。
戻れるのなら
どうか
醜くても 無様でも
....
誰か知らないけど
ホームから電車に突っ込んだ
鈍い音を立てても
微かに電車は動いていた
小さな四人分ぐらいの椅子に座り
誰かの生き様を見て
彼の輝ける瞬間を見れた気がした
隣の人 ....
君と僕とを繋ぐのは
見えない手錠の様なもの
かなり前から付けていた様で
もう、付けている事すら忘れていた
最近気づいたんだ
少し右腕が軽くなっていることに
歩く度に右手が自由なことを
....
第六ニューロン「小田急線」
散々前戯だけして、本番もしねぇで言うのもなんだが、
舞子に口づけた俺に、恐いモノは殆ど無い。
俺と舞子は新宿に向かう。その間、俺の手はずっと舞子の髪に触れてい ....
第五ニューロン 「史上最悪のクソったれ」
どうも、時間の感覚が思い出せない。
いつ頃、何が、どの順番で発生したのか。
それらひとつひとつは思い出せても、全体の順番がわからない。
言い換え ....
第四ニューロン 「新宿」
朝早くから、家族に嘘を付いて家を出た俺は、待ち合わせ時刻の30分前には、
新宿駅南口改札の前に突っ立っていた。せわしなく煙草を吸い散らかす。
どうでもいい話 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14