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昔の友人と長い話をした夜
帰りつきアパートのドアを開けると
一面に緑の草原が広がっていた
いつかのグラウンドのような匂いがして
至る所に
なんだかよく分からないものが転がっている
友人との ....
非常階段で待ち合わせ
そんな滑稽さでもって
世界から逃げている
きみとわたし
日中の駐車場で
眩しいくらいに飛ばされた
二人の立体感が
遠い
ふれている間だけ
呼吸するのを諦 ....
あの空は
ぼくたちにとってのどんな色で
何かを忘れないための色になったりするんだろうか?
つきぬける青に白い雲ひとつ
思いかえせば、
この変わらない空の下を
ながい間、 ....
きみはひどく咳き込み
すぐに踞った
今日は風がつよいね
手をつないで
髪を
なでた
すきだよ
あまく
湿った声は遠く
いつも
おびえているみたいだった
....
「急に泣きたくなる」
という設問を読んで
泣きそうになる
つきつめると
あふれてしまうので
空みみのふりをして
「いいえ」に丸をつける
+
淡い花のきもちになって
窓の外 ....
さびしさばかりがおしつぶすぼくのかんじょう、うねりだしていつしからせんじょうになり、そらのほうにのびてけむりになる、ぶあついあまぐもをつくりだすと、とたんにあめがふりだし、あめはつめたいので、くう ....
もうすぐモズクの季節
あれは海そのものの一部分
命のスープを濃縮して濃縮して
煮凝りを作ったらあんな感じ
もうすぐスクの季節
あれは押し寄せて来る海の命
岸へ向かって岸を目指して潮の息 ....
かくしごとなんて
はじめからなかったはずなのに
生きてると
知られたくないことの
ひとつやふたつあるものでした
できることなら
椅子に生まれて
何も思わずにただ生きて
人を支 ....
放課後の教室で
きみは階段をつくっている
けしごむやペンを並べて
足りなくなると
ぼくのまで使って
ふでばこも教科書もかばんも机も
なんでも使って どんどんのぼる
きみが あんまり必 ....
夜の暗さ
海の暗さ
そこのあるものの 暗さ
波が
うねりを繰り返し
何度でも打ち寄せる
夜の海
釣り人の
投げた重みが
ふかく沈む
あなたと
指を重む
その温度の確 ....
なだらかな曲線を描いて
時間が蛇行している
本当は
霧状のものなのに
浮揚している
空虚な意識を投げ込んで
思考は楕円形のひもの上を回り続け
輝きを薄めていく
....
新しい人が来たので
かじかんだ指を暖めていた子は
背中をまるめてそっと
席を立った
それは
あまりにも静かに行われたので
だれかが席を立ち
新しい人が座ったことに
だれも気づかなか ....
いつかわたしも
潮風になる
いいえ、
それよりもっと目立たない
砂の声かもしれません
潮風が
きびしいながらも心地よいのは
おそらくそんな
匂いのせい
わ ....
買い物に出かけた初冬の街角で
あのひとの姿を見かけた
両の手のひらをパンツのポケットに入れ
開店前のパチンコ屋に並んでいた
私の姿に気付くこと無く
他愛も無い夢と引換えに大切なものを ....
こもれび/こもれび
紅く小さく南天の実
こもれび/こもれび
足元に散らばる団栗
うたっているのは ひばりか
うたっているのは すずめか
こもれび/こもれび
軽いハレーション
....
適当なメロディを口ずさむ
何もない 白の午後
どこへでも行けるから どこへも行かない
円を描くように
歩いて ただ 空を見上げる
少し休んでみてもいいと言われて 休んだ
....
咳がふたつ
階段を上ってきた
夜の真ん中で
ぽつり
行き場を失ったそれは
猫の眠りさえ奪わず
突き当たった扉の
その向こうで
遠慮がちに消えていく
八十年余りを働いた生命 ....
書くことが多すぎて彼女は手帳を黒く塗り潰してしまっている。目の前で起きていることを記さなければならないという気持ちに突き動かされて、あるがままをあるがままに写し取ろうとし過ぎている。対象に目を奪 ....
青くて透き通っているけどどこか昏い
鳥たちの顔
仄かな灰の匂いを降らす翼
その背に戴いた空
かぜと名づけられたものがまた去っていった
羽毛の温もりを滑って
私の傍らを
見上げることが ....
小学生の時
わたしは薄水色だった
黄色のハンカチ
黄色の傘
黄色のお気に入りの服
だけど、わたしは
小学生の時
薄水色だった
黄色の長靴で
水溜まりに入るのが大好きだった
....
近所の用水路で小さな魚を捕まえた
家にあった水槽に放し
部屋の日当たりの一番良いところに置いた
魚は黒く細っこくて
その頃のわたしは
なんとなくまだ幼かった
+
....
うまく思い出せない
見送った後ろ姿なら
鮮明に焼きついているのに
君の笑顔が好きだった
それは本当のこと
なのにうまく思い出せない
強がってさよならの言葉の最後に
わたし ....
人間は固体だから
何とかして分かりあおうと
言葉という液体を使うんだ
それでもなかなか混ざらないことがある
だから根気強く
私の液体を君に降り注ごう
いつか混ざりあうことを期待して
呼吸を確かめるように
胸の一番奥から
茶柱を吹くように
耳元にささやくように
わたしの呼気は
シャボン玉のように
きらきらふわふわと舞って
パチンと消えてしまう
不慣れなかたち ....
おそらく
だれもなんら関係のない所に
夜のキリンは住んでいる。
林の隙間から
青い光がぽっともれるのをみて
月が恋しいとなく
センチで風変わりなキリン。
恋しいと鳴いているうちに ....
色鮮やかな薄衣をまとった山あいは
戯れて欲しいと無言でせがみ
得も知れぬ愛おしさと
恋の味とは甘さばかりでは無いことを知る
その味わいのほろ苦さよ
古い峠道の傍らで人知れず朽ち果てた祠で ....
ひとさし指で手紙を書く
砂のうえに
潮が引くときだけ
ゆるされる
返事が来る
潮が満ちるときだけ
あなたから
光と光の
波にさらわれる
こぼれた文字の
貝殻をひろう
....
きみとぼくはいまここにいない。
いない、いないから
なんとなく、すきだなって
おもうんだと、おもう。
ほんとうは、ほんとうは
たださびしいって、だけ
なんだと、おもう。
・
一か月が
余りに速く過ぎ去るような気がして
どうしようもない
服を着替える間もなく
あっという間に秋である
外ではまるで軍隊のように
流行なのか
同じ型の服を身につけた女子が
勇 ....
分からないことが
きみの
口に
つめこめれて、むきだしにされた
まま、きみは運ばれていった、
夜には、
わたしの口に、きみの死が
押し込められて、
何もできないということの ....
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