俺ってこんな感じだ
牛に乗って
花のついた帽子をかぶって
顔だけ影を差し入れて
崖したの小道を牧歌的にゆく
そらは青いのか、曇りなのか
緑はまるで六月の闇のようで
今だによちよちやっているん ....
三十年ぶりに会った母
記憶の片隅にも無い母
けれど会った瞬間に
本当の母なのだと実感した
今まで母(と呼んでいた人)に感じていた
違和感の訳がわかった気がした
何故だかはわからない
....
真っ青な空
ぽっかりと浮かぶ白い雲
この景色を
切り取って折りたたんで
紙飛行機にして
あなたに送りたい
少しだけの
メッセージを添えて
「ありがとう」
生まれた命のかずだけ
追憶はある
みんな誰かしらの
何かしらの追憶なのだ
この夜も、あの朝も
昼間もあったか、夕暮れもあったか
七千年まえのナイルの少年の
....
おとうさん
そう呼ばせてください
あなたをおとうさんと呼んだ記憶がないのです
おとうさん
こっちをむいてください
あなたと視線をあわせて話したことがないのです
おとうさんの娘として ....
腹の肉 尻の肉
ぶよぶよと揺れる肉
だらりとたれる肉
肉はどんどん増殖し
私の心を包み込み
内臓を圧迫し
そしてついには
心臓をも締め上げる
そして私は
ただの肉の塊に成り果 ....
『もーマジ最悪』
『げっこれ最悪』
『やだー最悪』
・
・
・
本当の『最悪』はどこだろう?
暗いことばっか言ってるから
お前は暗いんだって
あんたは言うけど
それならなんであんたは
さみしがってんの?
日の当たらない場所を陣取って
背中丸めてうじうじしてる
思うだけでう ....
ぼくらはリレーする
きれいごと
というバトンを継いで
ゴールのないトラックを
ぼくらはリレーする
ぼくらは時間に負けてゆく
バトンには実体がなくなってゆく
....
言葉たらずとは
なんの例え話なのだろう
言葉を見つめている
言葉もこっちを見つめている
言葉たらずの愛
目的や嗜好やタイミング
そんなのが合わない
合わない気 ....
ちぇっ!
右肩に強い衝撃を感じたと思ったら
見知らぬ男のひとの舌打ちが耳奥にまで突き刺さる
ちぇって言われてもね
いつもと変わらぬおっちょこちょいだから
うっかり階段踏み外して捻 ....
海で、逢いましょう
オカリナ石を
見つけましょう
もう冬の、
灰色の海では
ないでしょう
子供は海へと
駆けて行くのでしょうか
猫は波に
怯えるのでしょうか
海 ....
夜明けのサンマルコに風が吹く
恋人達の残り香を拾い
集めながら朝を、呼び込んで
頬を掠める
微かな潮の交響
幾つか期待を散りばめて
ときめく、
アドリアの海
....
言語学者は
なゐのある国に住んでいた
繰り言を操り
魚たちを漁り
縹色の鰾を解剖し
暗闇の中に二つあるものを
その音を
いつも探し求めていた
文字や表記よりも
音声記号そのも ....
まるで何事もなかったように
日常の分だけとおり過ぎていく
愛情は誰も手にすることができない
静かな凪の海
私をおきざりにしたまま
潮も今は遠く引いている
深海の青のような音楽
三日月が ....
暗黒の
無の空間に ひんやりと
寂しき星の 青がしみゆく
慟哭はたちまちの内に凍りつき
ひとつの惑星になってしまった
あまりに穏やかなその姿を
僕は畏れた
◇
硝子ほど鋭利ではないけど
涙ほど優しくもなくて
だけど人を殺すことはできる
....
死ぬことを考えてきた
死ぬことを考えてきた
いつのまにか
生きることがわかってきた
自分にとって
生きることがわかってきた
眠る前に
朝がこないことを祈り
朝になって
今日が ....
真白な卵を
あたためて
ぐつりと
穴をあけたい
わたしの体は
やわらかいので
殻に
すきまなく
はまるでしょう
爪先まで
生成したら
やっと
あなたと
お話しでき ....
フィクションに
幻を信じた女たちは
二日酔いの朝の様な
気だるい脱力感纏い
眩しそうに太陽睨む
フィクションに
疲れ切った男たちは
優しさに飽きた様に
冷たく無表情を装い
蒼い満 ....
くるくると光り解けて
流れ往け
幾千の揺らぎ瞬き
降り仰ぐ
劫火の尾根の
爛漫難し
....
音もなくカルナヴァルはやって来た
花吹雪の中をカルナヴァルはやって来た
爪先立ちで熱狂する
サンバ
魂を奮い立たせる
アンゴラのリズム
髪にまぶたに乳房に腰に
音も楽器もなく花は降りそそ ....
ひかりが冬の風をほどいていた
物かげをみつめながら
たばこの灰を風にながしていた
ふくらはぎには陽があたっている
車にもどることにした
後輪の日なたに雀が
ちょうど ....
しずかにやんだ川を
木につるしてから出かける
まだわからずに
陶器の横顔
すれちがう人を
飲み干した
だけの流れ
持てやしないまま
垂れおちるときの膨らみ
あらわれた褐色に
もう私 ....
あなたの青は わたしの青ではないのだろう。
あのとき選んだコトバは わたしのものであって
そうではなかった。
水に水がとけてゆく
そのオトが 耳を塞ぐ。
沈んで沈んで沈んで ....
純粋に真っ白な雪たちが
ベールを覆うように積る
切なさも淋しさも
穢れすら隠そうとする様に
身も心も凍りつく前に
あなたに会いたい
早くあなたに会いたい
ゆっくり雪を溶かすように ....
暹羅(シャム)猫を飼うのは難しいから止めたほうがいいと友人は言っていた
でもお前を飼って正解だったと今は思う
私はこの2年仕事を終えると一目散にお前のもとに帰ってくる
ソファに寝そべって愛しい茶 ....
舐めて顔がなくなったサンタクロースにさよならを言う。今日わたしがきちんと成し遂げたことといったらそれだけ。石油ストーブが空気を換えろとうるさいので窓を開けた。冷たい、冷たい空気。山茶花の薄いピンクに西 ....
うたうことで
なにかが変わるのだろうか
私の 今日も
信じるか
信じないかを論じることは
生きるか
ゆくかを 問うことに似て
どちらの答えにも納得できず
赦されたいという
....
瞳の中に鳥が住む
求める実をみつけると、鳥は飛び立つ
こんな光の白い日には
たくさんの鳥が飛ぶだろう
鳥はよびよせられない
そのくせ、いつか瞳の中に入りこむ
眠っているときにでも、 ....
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