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すこしもやいでいる朝
木々から蝉たちのこえがふってくる
絵にかいたらこんなふうかな
まる
ひとさしゆびでそらにたくさんのまるをえがけば
きみもちいさなそのゆびで
せいいっぱいのまるをえがく ....
もぐら掘る掘る
命みじかい始原菌に鎧われて掘る
太陽を感じる見えなくったって
もうすぐ夕暮れ土の中が一番熱くなる時刻
頂点は一瞬だけど
その前後の緩やかな丘に沿って掘る
青いトンネルい ....
新鮮なみのりを睨む
可憐な枝の先っぽで水や 蜜をたっぷりたくわえ光と風にゆれ
何かに咥えられるのを待つ 豊かさを睨む
窓をのぞいたら 朝
朝は苦手、って 言ったらすこしは好きになってくれる ....
かざぐるま、
塩化ビニル製のお面とともに、
ズラリと屋台にならんで、
カラカラと回っているもの、
とてもにぎやかな八月の祭りのひ、
ほとんど蒸しているような、
なま温い風を、
涼しげな、 ....
Opus Primum
鳥籠に春が、春が鳥のゐない鳥籠に。
(三好達治『Enfance finie』)
Ⅰ 初めに鳥籠があった。
Ⅱ 鳥籠は「鳥あれ」と言った。すると、鳥があった ....
こよりのヒラヒラをいっしょにもって、カシャカシャ、クモの足みたいなところがすきでお母さんとしゃがんでその橙を眺めた。
無常のすき間にある一瞬の灯、みえなくなっても終わりではないこと
傷から炎をぽと ....
街の通り花壇周りの草むしりするおばさん達、
ぽつぽつと明かり橙に灯る小さな美容室、
青いバット握り締め素振り繰り返す少年、
サイレース貰いに早朝のバスに乗り込む私、
この街の営みの傍らに殺 ....
みんな 考えることが
おっくうに なったので
頭を はずして
かわりに 肩の上に
鳥籠をのっけて 歩いてた
鞄を抱えた 背広姿の人も
バス停でバスを待つ 女の人も
みんな 肩から上は ....
息するイメージの数々、
裸木の枝群れ陰影に消え
死の影の谷をいく光輪、
断崖絶壁の底迄眼前にし見据え
虚無の相貌に恐怖することなく
真夏乾いた庭に舞った狂女の如く、
自ら ....
君の肩幅に
まだ幼い
春の光
僕は壊れた掌を
修理しながら
真新しい
君の名前を
口遊む
(初出 R6.3.15 日本WEB詩人会)
枯れ枝の
相貌
読み取れば
、
古月のゆっくり
凍り付き在り
水晶にろ過された水ほど美味いものはない
ある天竺の行者が言った
彼は24日間水だけを飲んでいた
それを知るために20年の歳月を費やした
誰に指図をされた訳じゃない
ただ行者の言ったことを ....
黒人さんも乗って居た
死んだ叔母さんも
乗って居た
その車に、
私は今 飛び乗る
思惟、燃える
アッフリカの太陽!
宝石箱ひっくり返り
無数の宝石の煌め ....
はる、
にちようびのそくどで走ってゆく、
ひとときの、
ゆるやかな午睡、
草木は徐々に生いしげってゆく、
山沿いの線路で集約される、
一両の田舎の電車、
ちいさな無人駅のような、
ささ ....
オレンジカクテルの空が
家々のむこうに沈んでいく
どこからともなく飛来した
小さな黒い鳥の群れは影絵
ゆったりと宙に張られた電線に
互いに平和な距離を開けて
つぎつぎにとまれば
みんな
....
生まれ与えられ育てた愛娘は
意識の視界から消えてゆき
雪降る三月初めの東京、
流氷の次々押し寄せる如く
時のうねり過ぎゆく速度の異様
細き橋の真っ直ぐ
伸びゆ ....
耳をとざしたほうがいい
ことばを思わないでいいから
目もひらかず
ただ触れていたい
指で肩で舌で
そのからだの奥を覗きこむような
こまかな息づかい
一度は奪われた草木を甦らせ
半透 ....
黄金の鱗粉、散らし
遠去かっていく
冬の投影に踊りながら
意識の視界に
明るむ場所が在るのなら
きっと君にも観えるだろう
黄金の唸りが
黄金の感触が
黄金の蠢きが
永久な ....
意味する処のゼロ地点に身を置き
自分を肉身としてだけ意識する
に、何か異和を覚えるのなら
アナタの勝ちだ、哀しみすり抜け
ゼロ地点より一歩と 取り敢えず
銀河の岸で
小鬼が一人
青い小花を摘んでいる
小鬼は気付き
私に手をふる
古い家だった
古くて大きな家だった
子どもの目には
それはとても怖いものだった
しかし、大人になったぼくの目には
それは、それほど大きくはなくって
子どもの頃に描か ....
自らの肉の
細胞という小部屋の
内に鳴る鐘の音、耳澄ませ
次なる時の訪れ
努め憧れ懐かしみ
従容と待つ 哀しみよ
近江屋の旦那様のお部屋で
拭き掃除を済ませた おりん
その書斎には お嬢様のお部屋にあった金魚の
水草浮いた陶器鉢が移されていた
今は 黒出目金と赤い琉金が数匹泳いでいる
お ....
朝に 歓び光の輪舞
凝集し揺らぎ充満し
異なる様相 滲み出し、
在る人、在る人
それぞれの相貌 露わに
朝に
異なる光の歓び
浴びながら、
自らを自ら、
乗り越えんと ....
連れていかれた羊
針をいれられる雲
糸をくれるのは
知らないでいい人に決まってる
流氷にまつわる伝承のように
幼児のおでこで移ろっている
南国語で聞いても
腸は抜かれている
イ ....
「お前さんも一端の深川の、のらねこになったじゃねえか。」
おきぬに勝手口の木戸を開けてもらって近江屋から帰るトラの前に
表通りの天水桶の陰から現れる 長楊枝咥えたイワシ
「あんた ....
むかし、むかし
いました
あるところでした
そんなものでした
流れていました
よく見てください
あれは桃です
大きさを見てください
あれは大きいです
味が想像できますか
ジ ....
地に舞い降り
地に溶け入り
天に昇りゆき
天に溶け入り
また再び、
地に舞い降り
前へ前へ、
ぺしゃんこでもまえのめりで
前へ前へ只進むんだ
遠い遠い遥か芳しいこ ....
蒼白い雪のゆらら舞い降り
ふわわ地に落ち溶け
次から次に絶えず
浮かぶ相貌にて
眩む意識の
凍結し
今に覚醒スル
純白に力動する思考、
新た観る 顔の威容に
異なる魂達の刻印 ....
地球という星がある
国境はない
猫に餌をやってから
今日のことを考えよう
子宮から出てきて随分経った
時々帰りたいが
もう帰れない
もう帰らない
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