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それはやはり
そうだった
{ルビ伽羅=きゃら}を{ルビ焚き染=たきし}め
熱き胸を{ルビ鎮=しず}める
秋の夕暮れ
あれは小学2年の夏休みのことだった
隣の家の姉さまは
白地に花菖蒲の浴衣を纏って
細い躰を座敷に横たえ
静かに扇風機のぬるい風にあたっていた
ぼくは庭にあったシーソーに乗りたくて
姉さまの ....
山を登り
渓に入る
木漏れ陽に照らされた緑は鮮やかに
日々の些事を追い払い
火照った胸を癒してくれる
水晶にろ過された水ほど美味いものはない
ある天竺の行者が言った
彼は24日間水だけを飲んでいた
それを知るために20年の歳月を費やした
誰に指図をされた訳じゃない
ただ行者の言ったことを ....
黒曜の空に
梵鐘を{ルビ撞=つ}く音が満ちている
一年の煩悩を洗い流すように
来る年が平穏であるように
森羅万象に響いている
{ルビ諸行無常=しょぎょうむじょう} (全ては変化するのだ) ....
ふたりで拾った
透明で硬く紅い卵
ぼくが生き物係になって
手のひらで暖め孵化を待っている
何が生まれるのかわからない
虫眼鏡で眼を凝らしてみると
真ん中がトクトクと脈動している
....
鯛 花は桜いろ
サワラ 甘やかなピアノのメロディーは
赤貝 血潮の香りが胸を刺す
はた 深く広がるハーモニー
つぶ貝 彼方を眺め噛みしめる
え ....
ほら、見てごらん
指先が少し光っているよ
表情のない肖像画が呟いた
ベランダに出て
夜空に透かしてみたけれど
少しも光っちゃいない
ん… 指が石化している
でもキーボードを打 ....