光が渦巻いていた
熱風が絶えず吹いていた
人々は絶えず歩き過ぎ
俺は串カツ屋の前で
アイスコーヒーを飲んでいた
とても苦い味がした
身体が熱く飢えていた
生きることに飢えていた
す ....
夏の汗ばむ憂鬱が
青い大空に溶けていき
肉感的なこの季節を
今日もまた掻き回す
物憂げにゆっくりと掻き回す
私の双極性障害は
このもったりとした視界のなか
ふるふる震え記憶を辿る
....
都市伝説じゃなかった。
文字通り、地方か田舎の伝説。だから、信じるもよし信じてくれなくてもいい。
俺の父親はちゃぶ台のひっくり返しが好きだったみたいだ。頑固一徹で癇癪持ちで我が儘で無類の酒好き ....
雨でひんやりした湿気の壁から声がした
私の錯覚が返事をした
夏を越えてぼんやり名月の香りがした
季節は空色に染まり風に運ばれてくる
差し支えのない刹那を1つ盗んで流れてゆく
ただ感覚1つ ....
小雨は
薄日を乗せて
銀の色
美しく
濡れて照り映えるのは
君のふくらはぎ
白く優しく季節に溶け
小雨は
薄日を乗せて
銀の色
夏の予感を
貪婪に膨らませ
....
雨が降ります
草木濡らし
風が吹きます
草木揺らし
)私はひねもすベッドのなか
)のっぺらぼうの死の幻覚に
)さ迷い目覚めてまたさ迷い
雨が降ります
草木濡らし
風が吹 ....
茅葺家ぬ 無ぇんなてぃん
胆ん中今とぅ 在ゆるしまぬ
赤ん坊ぬ ぐとぅぬやる
胆ん中今とぅ 残てぃるむん
手捧ぁさや うーとーとーんでぃ
手捧ぁさや ぐすーよーんでい
忘 ....
まじょが
カレーの皿を割っている。
いつか出逢えるあなたを
この屋上で待ちながら
もう出ない声を絞り切り
歌う歌がある。
もし空を飛べたなら〜
あなたに会いに行きますよ〜
....
さようなら
静かに落下してゆく
少し前までのわたし
頑張りましたの
はんこを押されもせず
1日が終わってしまう
ねむたいと
感じることを忘れてから
そんな儀式を繰り返して ....
何ら事前の相談もなく、いきなり現れて解雇通知を渡された。
お前はもう要らないお払い箱だと言うわけだ。
定年延長も再雇用も
しないという訳だ。
年寄りに高い金払うなら、若い人材を安く使いたいと言 ....
光溢れる夏の午後
庭の梅の木が微かに揺れて
三才の僕はその瞬間、
〈じぶんは自分なのだ〉と不意に気付いた
なにものにも替えられ得ない〃この私という存在〃
その認識が僕を稲妻のように打ったのだ ....
病院の午睡時は
誰も居なくなる
ただ人の気配だけ
影絵のように残り
自分が此処に居ることが
怖いくらいはっきりと浮き立つ
病院の午睡時は
誰も居なくなる
ただ人の気配だけ
影絵の ....
歩け、歩け、
ひたすら前へ
母語に吃り言葉を失い
途方に暮れて立ち尽くしながら
貴女の後ろ姿を不意に見い出し
ひたすら前へ
歩く、歩く
木霊し続ける声の方へ
今日も巨 ....
ほんとうは
言葉にしたくないんです
大切なものなのです
それは確かにありました
わたしの胸にありました
おいてきた思い出
わすれかけた純なこころ
ひみつのわすれもの
と ....
雨と紫陽花と書きかけ
わたしはドクダミの花をチョイスした
白い十字のドクダミの花が雨に濡れ
美しく光っていたと書いてみた
それだけで、ほっとした
梅に桜にツツジ、ハナミズキ、五月の薔薇
そ ....
今日は雨
いつのまにか
緑を濡らし
緑に濡れ
あじさいの花、
鮮やかに咲き誇る
私はぼんやりと
病院のホールに居る
立ち働く看護士や介護士達、
立ち歩く患者達、
窓ガラスに映り ....
浮き沈む鳩の斑な声に文を書く手も唖になり
犬連れの人々が屯う辺りへ角張った眼差しを投石する
紙袋を被る息苦しさ己が手足を喰らう祈り
内へ内へと崩落しながら書くほどに死んで往く
薄緑のカ ....
雨と雨との距離を測りかねて
戸惑いに揺れる傘は
五月の鋭敏にやられた心です
ビル街はところにより墓地のよう
予報どおりに雨は止みました
枯れかけた花束の空ですけれど
新緑が瑞々しいですね
....
ぎらぎらと陽が照っている
草木が緑に燃えている
世界はゆらゆらと揺れている
折しも二匹の紋白蝶が
絡み交わり輪を描き
白々と視界を過っていく
いったい何処へ行くのだろう?
自ら描 ....
なにもしていないとき
いえ
なにもできずにいるときの
わたし
秒速ゼロセンチメートル
部屋にうずくまって
きれいな体育座りの姿勢で
うつろな世界を
うつろに見ることもしな ....
花をみんな枯らした薔薇を見た気がする。野の薔薇か花壇の薔薇か。或いはそんな悲しい物はまだ見たことがないかもしれない。
幼い子供らは走りちりぢりに消え笑い声が耳の奥をくすぐる
手品師が飲んで ....
女 男 女 女 男
私の父親と母親の間には五人の子供がいた
一番上の姉と一番下の私とは十歳離れていた
長女が二十歳を過ぎた頃私は小学校の五年生だったと思う
実家は農家で 母親は農婦父親は農 ....
{引用=ふるいふるい くさばな
わたしをみながら
なにを はなしているのか
わたしに きこえない
おそろしい こえで
(いのることができないのです
す ....
ランドセルの 中
風の背を 乗せ
揺れる ブランコ
淋しい 音
割れた カスタネット
紫いろの 真珠
これを 彼女に
何千という 空の裾を截り
赤らむ 校舎の
大きな 時計が ....
よっちゃんは母子家庭の子供だった
お兄ちゃんが一人いて、中学を出てすでに働き出していた
よっちゃんは小学校の四年生で、俺は五年生だった
俺とよっちゃんの家は近かったけれど、ほとんど遊んだ事は ....
濃灰色に、重く雲があって
息苦しいような午前中に
雨がふりだした
傘が咲くだろう ひとはそのひとの人生のために 雨の底を歩いてゆく
歩んだ歩数のおおさ すくなさ おもさ かろさ
かろやかにた ....
手のひらの小鳥が
命を使い果たしていくとき
呼んだら
返事をした
それは
声にならない声
音を失った声は
振動だけになって
手のひらをかすかに震わせた
あれはやっぱり声だった ....
締め方の緩い
水道の水が光っている
一滴、二滴 光っている
僕は梅雨入りした街を行く
水滴は相変わらず光りながら
ぽたり、ぽたりと 落下し続け
僕は離れていく、無限な思い出を溢れさ ....
「だから、おじいちゃん、もう運転免許返納しなよ」
「大丈夫だ、50年前ハコスカで
峠を攻めていたじいちゃんを、なめるんじゃねえ」
「ランクルからプリウスに乗り変えた時
もういい年だからって ....
声という声を泳ぎ切った星は
「優」という島に行きついて
そこからも笑いながら
切りすて別れあう
どっちつかずなため息は
底のない海に
小さい赤いシールになって貼られた
そこに何も ....
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