夏の空、玄関口
立ち尽くす己
庭木の揺れ、うねる大気、光の庭
ああ世界が広がっていた!
己とは無関係に
何処までも眩しい異郷が
五歳の時のその体験を私は決して忘れない
じぶんとは ....
長閑な昼下がりに私は私を感じている
私という心 いや、魂のからくり
そして色 何層にも重なった記憶
またDNAにより受け継がれた連鎖のストーリー
それらを断ち切ることのできない無力さ
なるべ ....
静けさ
ちょこんと
座っている
気付けば
夜底に
座っている
私は寝床を整える
不眠の昨夜を払うように
新しいシーツで敷布団を包み
黄色い朝の喧騒に
心の奥処の祭壇が
荒らさ ....
ぽかんと ひとり
立っている
新緑繁茂する森のなか
ひとり ぽかんと
立っている
群れなす緑は
遥か空の青みすら
呑み込むように絡まり合い
旺盛なその生命力を
風に吹かれ ....
ビルの窓に褪せた空の青さ
夜のままの側溝の饐えた臭い
音漏れしている流行曲
眩暈のするようなデジャヴ
なにもかもが痛くて堪らない
肉体は暴力である
殴打された何十億光年の静寂に
雑踏 ....
ちいさな手がタンポポを摘む遠い日だまりに
開けられないガラス壜の蓋を捻じる
地平は終わらないラストシーン
エンドロールもなくただ風だけが映っていた
たわわに飾られた花籠に果実のように豊満な ....
疑問符を売っている店がある
品揃えはなかなか豊富
大小さまざまな?が
所狭し、と並べられている
用途はさまざま
小さいものはカバンにつけたり
部屋のインテリアにもよい
摺り下ろしてスープ ....
例えば今、息を吐く。
そして、二度と吸うことが無くてもいい――
結論からいえば
その日は私の声音に含まれる死神の衣擦れが
転覆病の金魚の側線を掠めただけだった
パクパクする半透明な唇を読 ....
洗面器の中に
水を張って
浮かべた夜空は
もうひとつの庭
駆け回りながら
届かないと
諦めてしまった
心に集まる
大地の音感
聴き返す時間を
貰えるのなら
門限は破ら ....
刻一刻と
孤高のままに拗らせた
紺を纏った恋煩い
鼓動の行方を知らずして
声無き鼓舞を繰り返す
声無き鼓舞を繰り返し
金平糖を転がした
今宵の月は弧を描き
木枯こぞって吹き荒ぶ
....
この花は永劫の畔にゆれている。
あまたのうつろいをながめ
蕾という名の一輪となって。
風よりもとうめいなあなたの声が、
水面をやわくなでている。
どことも知れずに吹いてきては。
....
たとえ
俺が歩けなくなったとしても
路は途切れないさ
たとえ
俺に朝が来なくなっても
街路の樹木は立っているさ
たとえ
俺が夜に溜め息をつけなくなっても
繁華街の立て看板に明かりはつく ....
のつのつと雪が降る
一本のモミによって辛うじてこの世とわかる風景
冬至の果てしない沈黙といっしょに
空が少しずつ崩れてくる
血の滲みだす包帯の一瞬の純白を地上にとどめながら
やがて凍えるよう ....
浮遊している座布団の上に立っている
長い長い
己が棹を鯉のぼりに見せかけようとしている
水門の釣り人たち
正面に回り込めば
身が引き締まるような旧い見事な水茎
細い道が出来上がって
シシ ....
ただあるがまま
ありのままに
この不安定を
巧みに乗りこなし
絶対未知の際へと至る
(薄明の稲妻と雷鳴は
常に不断にこのあばら家を襲い)
日一日を乗り越え乗り越え
見も知らぬ神 ....
夢の中となりに座ったあなたと話すことが出来なかった
夢でもいいから会いたいと願ったあなたがすぐ横にいて
あなたはもはやあなたではなくわたしの心の影法師なのに
あなたを知りあなたの心を慮ることで虚 ....
蒼いテントが揺れている
ドーム状の岩峰が聳えている
真っ黄色な空!走る稲妻!
強烈な雷鳴、耳をつんざき
落雷の波動、脳髄を貫く
割れる、割れる、割れる、割れる
この大地!
....
雪のふりつもる音を
私の耳はとらえているのだろうか
青い夕暮れに白い雪ぱらぱらふるふるもっとふれふれ
夜 雪は少しの光を乱反射してほのかに明るく
しずかに しずかになっていくけれど
....
ぶらんこぶらんこ
揺れている
風もないのに揺れている
ぶらんこぶらんこ
揺れている
誰もいないのに揺れている
ぶらんこぶらんこ
揺れている
言葉のとおりに揺れている
荒れ狂う海を見た
防波堤は決壊し
穏やかな海に遊んだ
日がな一日泳いで泳いで
甘やかな海を味わった
夕げに貝をほじくり食べ
律動絶えない海を聴いた
夜の浜辺に蟹を追い
太陽を溶 ....
般若心経と法華経の違いもわからない
仏様の教えに全く関心も興味も持たない私の
耳と言う小さなグローブに時々思い出したみたいに
彼女は言葉のボールを投げてきた
「ネェ、あたしの事愛してる?」
....
ぼくのこえはぼくのうで
きみのうではきみのこえ
もじをうつ てをたたく
うたをきく ゆめをみる
よるはいつでもまっくら
あさはいつでもまっさら
そらをとんでくひこ ....
何も説明しなくていいんだよ、
とジャズは言った
何でも説明してごらん、
とジャズは言った
一度忘れてごらん、
とジャズは言った
いつか思い出してごらん、
とジャズは言った
....
電車という文字に普通が乗ると
普通でなく思えるのは普通じゃないのかな
もしかしたら私は意味不明な存在なのかも知れない
それはともかくとして
滅多に乗らない電車にその日乗ったのは
東京に行 ....
必要なものが心の奥にはあったのだ
そして 戻れない道を 歩いていた
たどり着けない場所に しかし 目を開いた 僕は
光に憧れた子供の頃の目をしていたのだ
僕が定期が無かった時に歩いた道 ....
川は切り立った山肌に沿って流れていた。
夏になると近隣の子供らが集まって水遊びした。炎天の空の下。子供らの歓声が山あいにこだまする。
山肌から突き出た岩の周りはかなり深くて、自然とその辺りが子 ....
くろめ川の水底は
ゆらゆらゆらゆら揺れ動いて
澄んだ水面の影呑み込み
そうしてなおいっそう透き通り
底なし底抜け 師走の大地を震わせる
もうきすしたい冬なあ覚えているかいむかちで真つ白なこころのいく先はいつだつてかなしみの真つ白な翼がなくてはいけないところだつたからふたりはいとくの真つ白な翼を生やしよごれたあきらめ渦巻く風吹く迷宮 ....
やわらかな肉に
流れる
清冽な水を
むさぼり飲み
やわらかな宇宙を
貫く
輝きの光を
集める
ことば、コトバ、言葉 を!
欲望の卑猥を魂に焼き
スコンとまっさらな地平から
....
遠くの森はいつの日か
愛娘と歩いた森
今頃木々が色づいて
キラキラ綺麗に輝き出し
二人で辿ったあの道を
艶やかに照らしているだろう
娘よ、お前は元気かい?
今頃二十歳のその道を
....
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