いつか森のいちぶだったもの
小鳥をすまわせ
そのうたに耳をかたむけていたもの
みどりの葉をめぶかせ
ゆびさきは空へとむかう
よるになれば流れる星のゆくえを占ったもの
むささびの発射台になっ ....
すべて商品消費物として呑み込まれいく
私の私たちの声は哀しみは何処へいくのか
三人死ねば大変だが、三百人死ねば計算の内だ
この時流を打ち破っていく強さ強度持たねば
私は私たちは只々死 ....
底浅の透き通った水の流れが
昨日の雨で嵩を増して随分と濁っていた
川端に立ってバスを待ちながら
ぼくは水面に映った岸辺の草を見ていた
それはゆらゆらと揺れながら
黄土色の画布に黒く染みていた ....
いつもと同じ道を歩くと
強い向かい風が押し返してきた
風に負けて逆方向へ行くと
風が背中を押してくれた
いつもじゃない道を歩いて
知らなかった景色を見る
背中の風を失わぬよう
流れるよう ....
直進する時流とは
時に垂直に交差し
慎重に回避して
歩みを異にする
子らのいく
途を進めば
わたしの内に
花が、咲く
咲き開きながら
崩落スル氷河の力
見えざる神聖な
純粋思惟力 ....
赤く途切れたブランコ
見下ろしている厚化粧の空
つけまみたいなドローンが落ちた
鳥だったころを忘れ
祈りは地べたを這いまわる
時代のツールが暴いたものは
スキャンダルでも陰謀でもなく
ぼ ....
朝 起きたての髪は
しんと冷えている
よるじゅう
冷たい部屋の空気を吸っていたから
櫛でとかされて
ようやく息を吐く
命は死んだように眠り
またかえってくる
朝の儀式
寝 ....
夏
白い夏
思い出の夏
反射光
コンクリート
クラブ
ボックス
きみは バレーボール部だった
きみは輝いて
目にまぶしかった
並んで
腰かけた ぼく
ぼくは 柔道部だった
ぼ ....
悲しいですね
人は誰でも独りで生まれ
独り死んでゆく
後ろ姿を追いかけても届かず
想い人が亡くなっても日々は変わらない
☆
楽しいですね
....
雨降りの日に
部屋に篭もり
ひとり積み木を
積んでいく子に
涼やかな風、
すーっと一筋
網戸から
まばたき
二度、三度
見開かれた眼、
積まれゆく積み木
色とりど ....
蛇が布団の上で死んでいる。いつから死んでいたのか知らない。腐ってはいないが干からび始めている。とても大きな蝿が一匹ぶんぶんと飛んでいる。開け放しの窓から風が激しくて臭いを感じることができない。反故紙が ....
地の悲しみの澱を素足で吸い上げて
嘔吐する
花びらの金魚
収めきれず
破裂するまなざしの気配
その歌が流れると
わたしの中に風が吹き草木を揺らした
ことばは糸でつないだ骨片や貝殻のよ ....
むかし戦争があったなんて
――きっと嘘だ、
円柱型のチョコレートを
小さな花紋のある包み紙を破って、
贈り物だと信じて食べた
チョコを食べると、熱くなって
自分が強くなるのを感じた
....
ディランの「風に吹かれて」は
黒人の女性フォークシンガーの
オデッタが歌った
「No more auction block for me」って
知ってたか?
黒人奴隷の人身売買を歌ったや ....
白髪の
髭もじゃ博士、
白い回廊渡りゆく
〉光の翼に乗り押し寄せる魂の波〈
受け容れ生きて
渡りゆくト
白い回廊輝き始め
白髪の髭もじゃ博士、
ニヤリ純白ト輝き
....
体重は五キロ、性別はオス、黒い猫です。
もし見かけたらこちらまで
どうか連絡してください。名前は
「うに」お願いします
雨はふらないよ
うにお願いします
ご飯に困らないよ
うにお願い ....
鱗が汚れていく
星の夜を引きずって
感電した右腕
噛まれた跡に注いだわけは
一夜だけ咲いた青い花
未熟な声だった
猫にまで満たない
瞳に映る色が
深呼吸をするたび
境界線で揺らいで
....
ズンチャ ズズンチャ
ズンチャ ズズンチャ
ハナノイロハ
ウツリニケリナ
イタズラニ
ワガミヨニフル
....
焼き尽くす炎の渦中に
棺は持ち上がり
立ち上がる死体
残余に拾われる白骨、
物質に打ち勝った〈私〉の証。
あなたたちは
何処にいても何してても
居場所を探す
中心は生きているけど
沿岸が死んでいる
人が暮らしている姿を
美しいって
評価して評価されて
人の中でだけ生きる
目が死んでいるん ....
独りとしての私に
充足しては震え慄き
震え慄いては充足し
ひかりひと吹き
ひと吹きひかり
沈黙の内にいつしか
真紅に燃えるガーベラの
花冠、ひたすら見入る
深い森の奥処 ....
あれは 昨年の秋のこと
サバトラ猫のアタシが居候している
竹薮と雑木林の土手の裏にある大きな家の
離れの建物の中庭に行くと
「あ、鈴ちゃん来たわ。」
迎えてくれる おばあさ ....
「はじめまして。」
こんな所で、突然
自己紹介させてもらうアタシは
サバトラ猫よ
「サバトラ」というと品種のように聞こえるけど
これは毛色の名称でね、鯖に似てるからなの
....
グラスを傾け
独り歌う子守歌
母が教えてくれたあの歌を
酔えば 酔うほどに想い出す
あれほど美しいものはなかった
こんなオレでもあの歌は忘れない
酔ってこそ普段は語れない物語がある ....
頭のなかの片隅に出現した小さな黒点
日に日に大きくなり
蜘蛛の巣のように広がりだした
不安と動揺が胸の中を走り回る
解決策はわかっているのに
言葉が出ない ....
梅が散った今はもう春だというのに
肩を抱き締めながら
五月がやってくるのを待っている
月の光に照らされた夜に
レタスが芽生えて
ぼくたちを祝福してくれるだろう
花咲く牧場のソフトク ....
ひかり
ひと吹き
するたびに、
白い小部屋の戸口
開きゆく拓きゆく
ヒビキ輝かせ
時空切り裂き
宿る悪魔,,、
吐き出し
魔と魔のまん真ん中、
大きな巨きな律動の渦 ....
三月に降る小雪をつかまえようと
手のひらを天にむかって
差し出せば
どの子もふわり、
風にひるがえりながら
上手にわたしをよけて
アスファルトへと着地するから
こんにちはも
さようなら ....
口を開こうとしてやめ
口を開こうとしてやめ
そのうち億劫になってごろ寝をする
現実が早すぎる
明日も生きるはずだった人たちの時間が断ち切られ
まともな水も食料もない
そんな日々が続 ....
瀬田川に架かる鉄橋に軋む音
光の帯は今を、過ぎた
引っ越し祝いで友人宅を訪問した帰り
瀬田唐橋の欄干から眺める
そこに 拡がるものは
時の流れすら呑み込んでしまいそうな ....
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