『沢村忠、知ってるか
「キックの鬼」で
漫画にもなったんだけどな』

『俺もキックボクサーだったんだけど
ブームが去ってしまって
試合も組まなくなったから
地元に帰ってきて
トラックの ....
何もない交差点
小学校のプール脇に位置する
小さな静かな夜の交差点

闇に溶けた
黒のワンボックスカー
その周りに五、六人の男女
小さな声で
今日を振り返ったり
明日の予定を話し ....
食べごろかな
そろそろいいころじゃないかな
独り言を重ねながら
ホットプレートで

今夜は焼肉
ワイワイガヤガヤ
人の声は全くしなくても
ワイワイガヤガヤ
具材たちは小気味よくや ....
いつからわたしの体に紅い血が流れ出したんだろう
一度流れ出したら
とまらない
とまらない
とまらない
とめたら
お終いになるだけだし
振り出しには戻せない

充たされない思いがたえず ....
私の家だと思っていたものは
貴方の家でもありました
「お帰り」と聞こえた気がして
戸を開けて目にしたものは
みんな知っているものばかり
なのに
みんな
私を初めて見るような目をしてた
 ....
急がなきゃ。
と思うのだけど暗い。
思うように進めない。

 あたりはいちめんの草むら、猫じゃらし、
 ときどきひょいとバッタが飛ぶ、
 川の向こうには何かが明滅している、しかし
 その ....
炎につつまれて
咲いたのだろうか
悪夢にうなされて
散ったのだろうか

頭を垂れる姿は
動物のようでも
壊れた傘のようでも

水の真似をすればいい
高いところから低いところへ
流 ....
いつかよんだ
すてきなしょもつのなかの
どこか
いこくのひろばには
しゅろのきと
みなみかぜと
なみのおとがありました
だれかさんは
ひとりぽっち
そして
まんげつでした
さあ
 ....
だれにだって好もしいものはある
それをつまんでちっちゃな卓に載せ
しげしげと眺めてみればいい
むこうだっておんなじことをするだろう

そのとき
好もしいものをえらぶとき
虚飾は無しだ
 ....
おまえの首筋は、薄氷のような
心もとない血管を浮き上がらせて
口もとはうわ言のように
ニール・ヤングの古いメロディを口ずさんでいた

空はどぶねずみの
毛並みと同じ色をして
悲しみに ....
カップ麺とパンと珈琲のわたしの荒い解像度
アルコールと肉とスナック菓子の同僚のサイフと体を思う
半年前に店員のおじさんは割引の始まりを教えてくれた
甲高い声で客と掛け合ったパートのおばさ ....
かなしみの
青が降る
透明、
ただ透明に
なっていく
己の体
幾億もの幾兆もの者達が通った道
途、未知、溢れ
枯れ果て、移行する
光の奥の
ふるふる震え揺れ
時の間隙縫い
開く ....
ビールを飲めば
ハットトリックを決められた
リカーショップで買った
日本酒には
一本だけ買うなと記されていて
無礼にびくびくする私が居た
肉だけを食べてニイニイ(兄)は去って行く
私は二 ....
新築の家のリビングの壁を少年は金属バットで
ボコボコにした

家庭内暴力の嵐は始末が悪すぎて手に負えない
父親は少年の家庭内暴力を見ないふりをした
逃げたのだ
母親は直接的な被害者になって ....
誰もいない部屋の
片隅にある写真
女は若く
俺も若い
確かに1/4世紀過ぎたのだ

時間は相対的だというのが
本当ならば
俺の時間は長い
砂丘で作った巨大な砂時計

夭折した者た ....
 クジラの胃の中で溶け始めたような、そんな朝だった。朝になりきれない重い空気の中、歩き出す。歩くことに違和感はないが、いたるところが錆びついている気がする。明るい材料は特にないんだ。アスファルトの凹ん ....   あさりの朝


(浅蜊、蛤仔、鯏、浅利:学名: Ruditapes philippinarum)の味噌汁を
いつだったか おいしかった
朝だったような
記憶は積もるほど夢になる
素直 ....
大ちゃんは
いつもエプロンをして
前歯は二本抜けていて
何も聞いても
「ゴーオッ。」としか話せなかった

「大ちゃん。おはよう。」

『ゴーオッ。』

「今日は、何の作業するの?」 ....
僕が世界と繋がるために
涼やかな夜風を浴びながら
今日も一つの詩を書き留める
それは静かな吐息をついて
雨降る白壁に投映される
夢の間に間の幻灯機
巨大な毒蜘蛛を追いやって
雨滴を溢す紫 ....
音楽の途中でぼくは飽きてしまう
本当は好きじゃないんだと思う
無理してるんだ、きっとそう
だってまた別のこと考えてる

ゆるやかにリムーブしていく
ああ、ああ
こんなはずじゃなかった ....
夜風がすぅすぅ網戸から
入って来ては肌を撫でる
その微妙な心地よさに
うっとりしている午前三時、
電車は大通りを走り雪山へ
凍り付くよな身震いを
誘いぐんぐん進んで行く

鈍色空を背景 ....
ついこの前まで
白い花を咲かせていた木が
早くも新緑へと移り変わり
午後の日差しに照らされて
青々と輝き揺れている

その木の根元を
春の青大将の群れが
唸りを上げて進んでいく

 ....
昔、17の頃
漢検2級を取ったことがある
余命わずかの父は
送られてきた賞状を
額に入れ壁に飾った

ぼくはすこし嫌な気がしたけど
今そのことがふと思い出され
父の心がスっと入ってきた ....
闇夜に
突き刺さる
サイレン

神々は未だ
現れず
嘔吐感だけ
せりあがる

千の眼が
砕け
残骸を咀嚼する
音が鳴り響いて
十四歳のある日
ぼくは
あらゆるものが
きっとこのままなのだ、ということに
気がついた
ひとは、ある種の
限られたコミュニテイは
このまま
もう
どこにも
行くことはないの ....
居場所がなくなって
途方にくれてしまいかけてる

キスなんて一度か二度しただけ
そんな唇を舌で舐めても
そりゃ渇いているだけさ

日は落ちて
周りは昏くなっていく

ためしに心臓止 ....
昔、愛した女の庭には
大きな花桃の木があった。

その木は
春になると
その女の唇のような
濃い
桃色の花を枝いっぱいにつける。

その花びらひとつひとつは
どうしてもその女の爪の ....
廻る廻る大地が廻る
壊し創る力は無尽蔵に
無作為に選ばれた人々の
哀しみの雨が降り注ぐ

(世界は只残酷に美しく)

廻る廻る大地が廻る
次から次へと命は芽吹き
哀しみの雨は
もう ....
やあ
おはよう

詩集を読んでいるんだね

リルケか
どうだい感想は?

そうか
つまらないのか

世界には
リルケを楽しめる人が
大勢いるのにね


そう君は
リル ....
久々に訪れた病院の園庭は、
十数本の桜の木が
無数の赤い蕾を膨らませていた。 

その生命力は、
春の大気に漲り震え
園庭という枠を獰猛に
突き破っていく不穏さを含んでいた。

膨ら ....
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漢検2級を取ったことがある- 道草次郎自由詩11*21-4-11
サイレン- ひだかた ...自由詩321-4-10
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見えるもの・見えないもの(改訂)- ひだかた ...自由詩921-3-12

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