水たちは
むつみ合って
盲目の昼間をこえていく
青とも赤ともつかない激しさを湛えて
おそろしくさむい夏のうえに
あなたは骨みたいに立ちつくし
透明に透明を塗り重ねる
世界は頭から窒息する、
いま尾びれがさいごのふるえをして、
そして
天使の絵をくれた
女の子は
七年たって
三度堕胎を経験している
嫌いな子の
上履きをなげすてたあの子は
ふたり目の女の子を妊娠している
あかい眼鏡をかけていたあの子とか
いつも違う ....
プールをつくった
朝 手をどろどろにして
四角く つめたい プールをつくった
君を浮かべる想像をする
想像のなかで
君は元気に死んでいる
夜空に
虎たちはみごとな円を描いた
あなたが笑ったので
電波は世界のすみずみを叩いた
たくさんの点で構成されるあなた、
膨大なたんぱく質で構成されるあなた
この世のなにかが
まぼろし ....
日が暮れるみたいにわらうのね
すばらしい夜と夜明けが待っているみたいに
すばらしい一日が終わっていくみたいに
静かに
きっぱり
わたしのいないところで
きみはあまり泣かなくなった
うたもうたわなくなった
ほほえむ時間が増えた
笑いごえをあげなくなった
花はすべてドライ・フラワーにしてしまった
部屋からひとつずつ色が消え
そしてすこしず ....
からっぽをからっぽで埋めからっぽで蓋をしててもあふれるからっぽ
ぎらぎらと夏枯れの咲くカウンター 汗ばむ肌はななめに剥けて
別れ際はいつもうそみたいにすがすがしかった。
うしろ髪をちぎれそうなほどひかれながら、それでもひとりで帰っていくこと。
もともとひとり同士のものが、いっときそばへ寄って、それからまたひとりへ戻 ....
人びとが輪郭をつけた街とゆうのは
たいていどこかで矛盾していて
ビルのうらがわにまわってみるとよくわかる
ありえない影のおちかたをしている
景気よく噴き上がっては散る水の向こうがわで
....
宇宙をてにいれて
ほっとして
ベランダでハンカチはかわいている
背のたかい鳥
ビル
扉
三角形にきりそろえられた意味
ピアノ
ほっとして
ベランダでハンカチはかわいている ....
しわをつけたたんぱく質
に管をとおして、
ビデオを返しにいくあいだに
血をすわせる
わたしでもなく、
だれかでもない、
しょざいない命にたちむかう
そんなことができるかどうか
....
空には
なみだが
すこしうつっていた
みぎ側が夜で
ひだり側が朝だった
きみに 僕がすこしうつっていた
じたばたと蜜に絡まる水黽よ 飛ぶがはやいかそれとも死ぬか
なめらかな言葉をめくる指の香の 甘い匂いは罪か褒美か
ものいわずほどかれるのを待つふたり あやつなぎしたみはうつくしく
咲けばこそ散るや実のなる花たちの つぼみでいれば摘む指もなく
仕事場のちかくにはおおきなイベント・ホールがあるので、駅からつづく大通り(コンクリートで整備された、大きな歩道橋、その上にばかばかしく華やかにちらばる噴水とか、見せびらかすような緑)は あ という ....
ミニカーみたいな自動車のうごきが気色悪いので、思想をちぎってはなげふるえている。
これは、(こんな)くもり空いちめんのま下に、ビルを行き交うわたしの愚直としてどうぞ。
半とうめいに透き通ってい ....
手紙が送られてくる
まっ白い文面で
わたしはあなたの名を抱く
そうすると世界は痙攣しはじめる
口ぐせもふせたまつ毛が濡れるのも汗ばんでたのも全部うそだよ
痛いほどきらめきながら死んでいくさかなの群れは空を飛びながら
結びめのきれいにできた関係を断ち切るはさみは錆びてかなし ....
わたしをAと見たて踊らせるのは
おそろしいことにちがいなかったが
おかげで血はとまった
うすばかげろう、
知らない言葉を育てることで
知らない自分を見捨てることができた
(辞書はよ ....
だれがわたしを見捨てたか
指さしや目線の鋭角
とりどりの基準のなかで
きちんと焼却してください
水に落ちていく墨か、
あるいは墨に落とされた水滴か
どちらも、
すぐにそれとはわからな ....
ま夏の背中よろしくこぼれおちる曲線は
ぼくのよろこびにまっすぐに突きささり
それらはやっぱり放物線をえがいている
きみの曲線のおしまいにくちづけをする
そんな目でみたってだめだよ、もう ....
ことばはとめどなく産まれるけれど
ひとつもどこにもとどかない
やわらかい壁がゆれる
わたしがあなたのそばに落ちるとき
きっとひとつも言葉をもたないで
まばたきだけでやりあうような
....
ま昼にうす闇の絶望をえがいて
えがききれずに筆を折るのはおよし
空はまいにち傾いて
だんだんに染まる木々や青を
眺めている場所がちがうってだけだろう
筆を折るのはおよし
ま昼にはま ....
いったいこのうすきみわるい街道を
やつらはどうやってあるいている
死ぬだけの生をよこたえたらば
文句のひとつも言えようが
あまつさえ感情を行き交いし、
それでいてうつむいて泣いている
....
小鳥にパンを投げてやる
あるかなしかのわずかのくちばしのために
この子らはやすやすと川をこえるのに
わたしはまだその手前で積木をしている
あなたの庭はなんの匂いもしない
野球中継
祝日
汚れたスニーカー
擦り切れてゆく生活のなかで
煮える卵
砂壁
青空
だれがわたしたちを救えるだろう?
液晶モニ ....
あなたが眠るのを待って
部屋じゅうに花を飾ろう
あなたが起きるまでには全部捨ててしまおう
一瞬にからめとられるまえに
病室を出るのだ
花瓶を窓から投げて
割れる音の一瞬まえまで ....
すぐにあしたになってしまう今日 は黒くて、生えている星はぬるい。あしたになったら手に入らない、それとか、夜のたべものとか。背中にはえていたのは、よろよろした壁 ・ だれもいないから、黒を白にしても ....
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