呟いたことばが届ききらぬままふたりの間で凍りゆく朝
からだから夜を追い出せない朝になけなしの理をかきあつめている
あれ以来
すっかりしなびた果実に
水をやりつづけて
きみの指は
完ぺきにふやけてしまった
(夜よ
やさしさは
こんなにも目に見えるのに)
きみは
まだ自分が
強い人間な ....
冬瓜を煮る。すこし青臭い匂いが指に残っている。
夕方、ディスカウントショップへ行ってハロウィンの玩具をいくつか買って、夫と落ち合って帰ってきた。途中、tooth tooth へ寄ってケーキを二つ ....
はためには曇りぞら
でも
どしゃ降りを胸のうちに
隠しもったまま
それを
愛と呼ぶことに決めたね
あの日は
遠のいていくし
それでいい
のたうちまわって縋ったものを
生活に ....
その死骸はまだ光をみていて
おとのなかを楽しんでいるのに
やわらかなつちをかぶせてしまう
あなたの手のしろさは
ひどいね
宙返りしてみても秋深まらず
空腹に飴をあてがう午前2時
鈴虫よ鳴くは勝手、泣き止むな
うつむせのしずかな背には薄い毛となめらかに降るみじかい死たち
閉じられたまぶた、唇、深い息 明けがたの音が通過していく
触れられず 逃げも進みもできないぼくらを死たちはじっとみている
....
ないしょのことは
ないしょにするから
それまではあそぼうね
夢でも会えるし
いますぐにあいに行くこともできるよ
のぞめば
のぞめば
いつでも
現実は直角に交わるし ....
ひかってたのは
真珠じゃない
水滴じゃない
耳飾りじゃないし
ドアノブでもない
疲れていた
疲れていたし
悲しかった
ひかってたのは
真珠じゃない
泣いていたのは
君 ....
生ハムのあぶらのようにこびりつく濁る合図とするどい刃物
明日にはしなびる青の予感抱き ちんげんさいとふたりでキッチン
よしなさいよと言われても
夜な夜な無意味な逢瀬に応じ
しなしな軋む体は重く
由無い出会いはしだいによしな
女の子が産まれたら
愛子という名前はつけない
愛という字を
書き慣れてほしくないから
女の子が産まれたら
しのぶという名前はつけない
耐えしのぶなら
逃げてしまいなさいと教えたいから ....
ブライアン
ジャニス
カート
みんな年下に
なってしまった
ジミヘン
シド
ジム
みんな年下になってしまったけど
生きてることを
馬鹿にすんなよ
死ぬやつは
....
髪がのびたね、と彼は言って、鎖骨のうえをさらさらなぜる。ばかだ。会うたびにいつもそうする。髪がのびたと言って鎖骨をなぜる。なぜ気付かないのか。なぜ覚えていないのか。なぜわたしだけが覚えているのか。 ....
死はそこにある。いつでも。あるものとして
恐れてはいけない。
おそろしいのは
おびえる心だ。
誰かのために生きられないことは
ぜんぜん悪いことじゃない。
おそろしいのは
生きない心だ。
....
いま死ななければいつまでも死ねないきがする。
猫だって花だってかってに死んでくのに
わたしだけいつまでも死ねないきがする
じゃあほかに
なんて言えばよかったんだろう
帰るひとのいるあなたに
帰るひとのいるわたしに
はじまってさえいない二人に
終わりにするためには
なんて言えばよかったんだろう
....
いったい、「後悔」というものは、どのようにしたらできるのだろう、と考える私は、十分に若く、また、十二分に傲慢であるのでしょうけれど、それにしても、いったい「後悔」というものは、どのようにしたらでき ....
あそびつかれて
うす青いそら
およぐ身体に
においがからむ
見てみな
死は
ほら
すぐにつかまえるよ
体や
においや
声や
温度を
すぐにつかまえるよ
こんなにうす甘い朝 ....
ひるまの電車はがらがらで
まるでちがう人生みたいな顔をする
はれていて
あかるくて
がらがらで
まるで
ちがう人生に乗り込んだみたいな
わたしが
わたしだって
だれも ....
降りそそぐのを
右から整列させる
ぼくはもう
だんだん
目が暗くなっている
あかるいテレビから
もれる笑いごえが
喧騒が
壁をつくる
あしもとをぬらす
ぼくは
もう
だんだ ....
熱はこぼれて
空をはらした
おたがい無傷で
うしろめたくて
喚く代わりに
熱をこぼして
空はみだれて
少しにごった
なんどもしたね
なりゆきに任せて
なんども死んで
生き返った
しあわせだった
そうと気づかないほどに
駅のトイレで歯をみがいた。
わたしは害虫だった わたしにとっての。わたしはわたしを食い荒らしわるいものへとする害虫だった。わたしがわたしを喰らうためには−手っ取り早いのは男と寝ること。どうし ....
わがままで
おろかだった
あの子のこと
ほんとうなら
愛したかったな。
でも
できなかったから
腕も
細すぎたし
すこし
まるくなって
遠くなった
あの子のこと
....
わたしが
波になるから
あなたは
なみうち際になって
いろんなものの
死骸が
流木のように
なめらかにうちよせる
そろそろ
語り合うのは
おしまいにして
あた ....
かたまったぼくのたかまりたかまったきみのからまり夜のまにまに
さんかくにだまって座っているそこの不安ちゃんたちこっちおいでよ
どれぐらいさみしかったら死ぬかなと観察しているなかなか死なない
諦念はナプキンにくるみデパートの女子トイレへと捨ててきま ....
あかるい夜の
かなしい部分が
ループする
いのりは届かず
夜はいよいよ
のびきって
かわいた言葉が
なげ出されるころ
しらじらしい
いたみが
部屋の明暗を
分けていく
....
まずあなたがいて
わたしがいた
そのむこう側に
せかいがあった
空があった
海があった
街があった
人々がいて
季節は移ろい
言葉は交わされた
あなたは世界ではなかった ....
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