ひたすら壁にむかって投げ続けた
ひとりだった
みんな学校へ行っていた
じぶんのふるさとをこうして
時々
思い出す事がある
電車が通ると夏草がゆれた
およそ色んなものが
おもえば ....
「メタモルフォーゼ」
虹翻って、音楽。
「砂埃と漂白」
短距離走、すな わち校庭のブリーチ。
「シチュエーション」
引き潮、はだし、見つめ合う、空踏むサンダルよ ....
しずかなる森の梢はミミズクの
可愛い耳のちょん。になりたし
スマホ手に眠りに落ちる人だけの
夢蒐めては花いちもんめ
お早ようと花瓶に朝のご挨拶
こたえて曰く ヒョウメ ....
よく知らないまま
パンダの{ルビ星星=せいせい}のぬいぐるみが届く
朝の番組で
こどもにも大人にも人気らしい
開封し即おもった
「ちっさ」
でもぬいぐるみって大きいの高いし
ギリだよなこ ....
もののあはれとはそれは
風の包帯
先だつ批判をやわらにつつみ
まるで
{ルビ苫屋=とまや}に吸われるもんしろ蝶
ひなたの蜥蜴
春の
ことぶれとも
妙に静か。
シュレーディンガーの雪
カーテンの襞の{ルビ谷間=たにあい}をみている。
鎖で繋がれた折りたたみ自転車(通称キュキュ)を
散歩につれていったアトー
どこか遠くの外国の人のような名前
でもれっきとした日本人
キュキュは電信柱におしっこを引っ掛け
ほかの自転車にううう ....
「蝿」
打ち沈んだ脳梁の遺跡群に一匹の蝿が迷い込む
神経質な迷路は死相を
その顔にふたたび浮かび上がらせる
魘されたアルトーの夢のように朝が来て
朝はまだ夜を殺しきれない
閉ざされたカ ....
人をきずつけ
傷つけたくせに傷付いて
そんなことをかんがえて
夜はまだ更けもしない
とりかえしのつかない
いったいどれだけ多くの
星が空にまたたけば
星座の{ルビ焉=おわ}りは来るの ....
今、生をうける。
今、そのかろく、うつくしくもあるアポトーシスの進行形。
れっとう意識から発せられたものでなくして、
垂直な風の歌
お前はそれを、いつ問うだろう。
この倫理のなにかも ....
喉までせりつめてくる
ものをいなし
喪われた月で首飾りをつくる
詩篇の鉄道は砂礫ですっかり
いっぱいだ
降り掛かる酵母のようであろう
それはやさしげなシダ胞子
副詞に錠をおろ ....
昨年、父が庭に植えたハナモモの樹(桜の時期に前後して紅白のにぎやかな花を咲かせる)がはからずも倒木の憂き目に遭った。特別、大風が吹いたわけでもないが、黒々としたその幹は人知れず根元からボキリと折れてし ....
昔馴染みの店長がいる
地元の古書店へ行った
店長とはたぶん15年以上の付き合い
ひさしぶりにみた店長の声は
若い頃のままだったが
見事な白髪へと変貌していた
梯子を昇り
15年前と配置の ....
プールの底からみえる
陽にゆれる水面
一篇の詩さえ
書けないってどういう事だろう
浮上とは何です、この場合
ミューズよ
今ってところで宇宙のどの{ルビ辺=あたり}
ハシバミ弾けて心臓が痛い
いみなく死んでうまれて散って
いつとはなしに猫ばかし
時それは非生物だ
ああ
深海魚コーナーになりたい
ひさしぶりに古本屋にいき
古本をみてまわった
買う金がないのでおやじと話をした
ひさしぶりに人と話す
しかも本のことがわかる人と話すのは
何年ぶりだろう
数年前の岩波文庫の充実ぶりを褒め
....
{引用=あるものがそのものの底をいっかい弾き、とびあがりじぶんや何者かのもとへ訪ねてくることをかんがえていましたが、それはちがったかんがえでした。だってあらゆるのものが、いったんそのものの底を弾いた歌 ....
{引用=失語です
たんぽぽ珈琲みたいな時間です
シロツメクサと{ルビ勾玉=まがたま}です
万雷の拍手とおく
幕開けしないオペラのひとくさりなのですから
枝振りのかたい{ルビ椚=くぬぎ}は ....
鬼は内しばし歓談{ルビ節分会=せつぶんえ}
福は外外とは誰ぞの家かもと
月兎{ルビ杵=きね}に仰け反る良夜かな
{ルビ聚=あつ}めたる月光きざす魚市場
春一番吹いて耳朶やはらか ....
空という海になれない碧の果て空どこまでも海に骨ぬき
一握の土に賑わうたましいをそっと戻して春風うらら
まあいいさどうでもいいさべつにもうとうていこんなひらがなばかりじゃ
霜とりの篦に ....
十
十の詩を書いたそして消した
これが十一番めだだけど
十のよりずっとわるいかも
もうここにはなんにもなくってあるのは
指に凭れる少しの重力と諦めだ
あんまりじぶんとばかり遊びすぎて何度自 ....
『エデン〈小噺〉』~認識主義的宇宙の蛇~
じつは宇宙の広さは認識により変化してきた、これはちょっとした秘密。
太初。アダムとイブ、この二人が歩き回れる範囲が宇宙の全てだった。 ....
「風理」
退屈そうに
地球儀をまわしていた
かみさまが
ふとした拍子に
ついたためいき
あたし
地図は読めないんだけど
風図は読めるの
ぼく
地理は苦手だけど
風理は ....
雨のおとがした
雨がようやくふっている
この服を脱ぎたい
そうしたら
気のいい単語と
すこしの助詞や助動詞たちを連れ
ピクニックにいくんだ
パラソルの下で
サンドイッチを食べる
貝殻を覗いて
蟹を見つけたり
珊瑚や不思 ....
よいものがよいというのはすてきなスギ木立だね
そうそうフィトンチッドというのでしょう
なつかしくそれは善意のまるで濁点だから
それがそうあることは
いよいよ意味の肌気を脱ぎ始めるというもの
....
空から釘が降って来ます
かなしい月夜の破片のように
眼のない森に歯形を付けて
ひとり眠りにつくとしよう
自分の書いたものが
自分が死んだ後もぜんぶ無意味なら
もう書かないでおこう
そして私は死ぬだろう
私はやんでいる
私は休みたい
私はもうたぶん書かない
私は死んで
生まれ変わりたい
....
貧しいすきとおるようなものが欲しくてさがしまわり、けっきょく無くって、すごすごと帰ってきてみた。そしたら、ぼくのふるさとの図書館(とても腹ぺこなちっちゃな図書館) に、みつけた。
その、薄くてか ....
ああつらいと叫ぶ。そうすると、どうした!と駆けつける。一回や二回なら駆けつける。それがずうっとつづくとする。その場合、駆けつけないこともある。叫んだ人間はその事で相手をなじるかも知れない。そしてなじら ....
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