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神の名に似た少女は
雨の日のこの晩に
ぐんなり冷たくなった
私の終わりの姿を
写真に収めに来たのか
買ったばかりの
慣れない手つきを片手に
塩化ビニールの匂いがする
傘を持って君が ....
そして、
めまぐるしい呼吸に
ふさがれる 漂白された個室
あなたは白と孤独を分けいる
つながりは水平線のほつれを装って
回廊の花びらを屋内に引き延ばし
いちまい 一枚
見た ....
火と踊る 少女
薄い幕の向こう側で
遊ぶシルエット
僕は触れることができない
この薄い幕さえ引き剥がすことはできないのだ
音もなく
熱もなく
おそろしく暗いゆめで
見ている
火と ....
砕けた石英の剃刀を
突然の風が巻き上げて
私の頬をかすめる
誰に届くわけでもないから
名前まじりのため息は
手のひらで温かい
癖毛のように渦巻く黒雲か ....
花に触れると
花びらにつたう雨の雫は
お前の
淵で溜まる透明な雫を見た
花びらに伝う雨の雫は
お前の涙
涙を止めてあげられないまま
君を家に帰した
僕の胸で泣き崩れる君に
大 ....
殺し創めた殺し屋は
殺すことに
慣れ始め
殺し慣れた殺し屋は
殺すことに疲れ果て
殺し疲れた殺し屋は
人知れず
己を殺す
殺し屋は
人知れず
産まれ落ち
人知れず
殺されて ....
月の影は悪戯に 遊ぶ心をけしさらう
夜気の味なら心まで 味わう思いを流しさる
夜の花というものは 香りで人を貶める
夜風の心地が分かるなら あんこの心もわかりょうか
見えない雨 ....
透き通るような白い肌に
私の爪で痕をつける
君が私だけのものになる証で
君の君だけの証
今度は君が私の白い肌に
歯を立て痕をつける
私が君だけのものになる証で
私の私だけの証
....
あしたも
そのあしたも来るということを
簡単に信じちゃ
いけなかった
その言葉は
重ねた過去からの
甘い憶測で
あしたが今日までと変わらないなど
保障されない
懐かしさは
....
あした
死刑を待つような気分の夜をあきらめて
もう死んでもいいやと
睡魔に身をゆだねる
いくつも死んでいるはずなのに
あしたも
そのあしたも生きている
分厚い小説の
だらだらとした ....
寂しい亡骸を一人抱いて
浜辺を歩いて一回忌
君よりも一つ多くの夏を知り
君のいない夏をまた一つ多く知った
おかげで
その夜
人間は初めて
魂を分かち合った
誰もが泣いた
泣かない人間はいなかった
ひとしきり泣いたあと
その罪の重さに耐えかねて
誰もが死んだ
死なない人間はいなかっ ....
退屈なボサノバを漂わせて
引き寄せるダイエットコーラ
夜に取り残された部屋で
キチンドリンカーになる訳にはね、なんて
うそぶく わたしは
右党なこども
あなたの世界はきんいろなのに、
....
なりひびくたびにきみのことばかり きみのことばかりかんがえてしまう まだすきだ
きみのこえをわすれてしまいたいのに きらいなきみのこえばかりずっとこころからはずれてくれない どうにかして
なきたく ....
雨の降る夜は凶暴になる
叫びは声を失くしていき身体は揺れる
昔からそうだった
何度自分の血を見つめたかわからない
夜明けの冷ややかさが最高の快楽だった
誰かが立っていると ....
あたたかさは痛み
つめたさは痛み
肉のためではなく
風のためだけに用意された穴がある
肩の上のものたちは再び去った。世も肩も結局は自分を苦しめただけで何ももたらさなかった。目覚めは長くなったが、終わりはさらに近づいた。
雪が空にもどるのを見て泣いた。 ....
肩の上にまた幽霊が戻ってきた。昔と同じ重さと痛みが、どんどん自分を夜へと持っていく。まだ眠りは来ない。自分は在りつづける。あの何も無い所に近づくことなしに、自分に向かって歩むこと ....
肉が裂かれる予感がする。内蔵ではなく、表皮のすぐ下の肉がまっすぐに裂かれ、虹色の壁が刃に映る予感がする。薄暗い景色のなかに、さまざまな色だけが見え、どこからか来る強い光のために全体 ....
調子のいい別れ言葉なんか全く思いつかなくて、
ナイフを垂直に落としてゆくようなものだと、
先生に教わった。
扇情の末、夜の雷が地面に突き刺さる
故郷のような
異国のような
そんなどこかの路地裏で
「こういうことか」と嘯きながら
もうすぐ彼は
終わるだろう
二階の窓を
閉め切って
眼鏡を外し本を閉じ
フィラメントの熱の下
....
ドアを開けるとそこには海が広がっていた。
あまり風の強くない日、浜辺に立つ。
波打ち際には近づかずに遠くで眺めた。
水平線は、左から右までずっと続いてて、ゆっくりと曲がっていた。
右に ....
赤い花を摘む男の指に見惚れてしまった
ゴボウ色に染まっている自分の指先を見つめながら女は赤い花を積む男を見ていた
男は何事も気にしないまま赤い花だけを摘んでいる
ゴボウ色の指をした女は自分に向け ....
嘘くさいキャラメルは甘ったるいばかりで
それで退屈をしのごうとしているのね、きっと。ばかな女。
春はこの街にも雨をもたらす。
屋根の上のカラスが濡れて鳴いている。
しっとりと、痛く
そし ....
僕の消えていく闇の名前
石炭ボイラーの匂い
江浦路の路面電車が踏みつける
レールの間で腐っていく{ルビ瓜=うり}の皮
入り口だらけの逃げ場所
擦り切れた人民幣
二十五元五角の片道切符
....
私の渦よ
手のひらをゆく
雲にふれるな
落葉を裂くな
くるくるまわれ
息をきらして
ぎやまんの光
おまえにやるから
私の渦よ
死にそこねた蝶よ
....
鴉を一度に十羽眠らせ
ごみ捨て場の連なる通りへと
傘をさして歩いてゆく
手をたたけば眠りはさめて
他の十羽が眠りだす
食事はたくさんあるのだから
あせらなくてもいいのだ ....
死は 私のもの
死は あなたのもの
死は 何もなく
死は すべて
死は そのうちに
死は 今すぐに
死は 高くなく
死は 低くなく
死は そこにある
....
どこかの国で 単眼症のやぎが生まれた
彼は見世物になって、きっと将来はホルマリン漬けになる
死してなお、見世物になるのだ
彼は未だに、その単眼で
自分の行く末を冷静に見届けていると言うのに ....
すべてが虚しい
その原因は僕が何一つ手に取ろうとしないから
何か一つ手に取ればそれが大事になって守ろうとするはず
なんだっていい
何か大事なものをこの手で守りたいとさえ思えれば
この虚し ....
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