白く鮮やかに咲きほこる、
一本のモクレンの木の孤独を、わたしは、
知ろうとしたことがあるだろうか。
たとえば、塞がれた左耳のなかを、
夥しいいのちが通り抜ける、
鎮まりゆく潜在の原野が、かた ....
公園の砂場で
車のおもちゃが死んでいた
一度も生きたことがないのに
もう自ら動くこともないのだ
近所の庭に咲く
キンモクセイが香っている
今まで見たことのある死体と同じように
嫌な匂 ....
グレープフルーツ、を{ルビ啜=すす}ると
ゆびさきやら舌先やら
なぜだかきみを、
おもいだして
グレープフルーツ、か
それとも、ぼく、か
においのあふれる
部屋になる
....
ブルーのラズベリーを頬張って
青い汁を垂らす
それを見た老婆が
あんた青い血だ
人間じゃないのかいって
そう言ったんだ
あんたは言い返した
そうさ、俺は人間じゃねえ
....
2007/03/24
まあいいかと言いながら
バイクのエンジンを吹かす
アクセルを吹かすというのが
普通の言い方だと思うのだけと
アクセルは制御のための付属物だ
....
三月も残り僅かとなり
ほころびかけていた桜の花も
一輪また一輪と開き始めてきました
桜の花が満開となり
その花が散り始めると
思いだす事があります
由美子姉さんとは実家も近所で ....
なんでだろぅ
足らない
足らない
満たされない
表情筋は凍りついて
言葉は捨てられたものから
拾い出して
薬を飲んでも
お酒を飲んでも
誰かと寝ていても
足らない
....
人は己の踏み締めた足跡に人生を見る
しかし踏み潰したものを見ることはない
見つめれば脚を踏み出せず
歩を進めれば踏み潰さざるを得ない
人が脚を持ちそれがまた
踏みにじる罪深さから逃れられない ....
盲目の老紳士が言う
君の声はママの声に似ている
私はそんな彼のために
毎日いろんな本を読み聞かせる
昔話
遠い国で起こった戦争のお話
時には絵画を細かく言葉で表現する
....
2000/01/08
素敵なニヒリズム
笙の笛
名も無き馬が
オホーツク海の
放牧場で草を食む
食べ飽きて海を眺める
凪いだ海面は鈍く光り
濃紺の海が見つめ ....
母を想って作った歌を
有線で聞くと心が痛くなる
相変わらずの親不孝で
若いうちに家を出て親など知らぬで
過ごしてきたけれど
親になって
どれだけの愛で子を想うのか
わかるから ....
ぽちむは家を出ました
モスクワに行きました
それで売春婦に会いました
自分もなろうと思いました
その売春婦にいくらって言えばいいのって聞きました
売春婦ははっきりしたことは何 ....
夕暮れ間近に
降りだした雨は
氷のように
冷たくて
見る間にそれは
視線の先を
白く染め変えた
あなたのと
わたしのと
それぞれの窓から
同じ雪を見て
初雪だねって
文字を ....
残り少ないバーボンをロックで飲み
しんみりとした空間に癒しを求め
氷が溶けてゆくように
僕の心も溶け出す氷の様に
しだいに癒されてく
俺ぁね、鼻毛をね、抜いたんですよ
そうしたらばさ
なんともまぁ可愛らしくない
小人がぶら下がっていてね
それはもう凄い剣幕で怒るんですよ
お前は何だぁ
何様のつもりだぁ
わしらの住処がぁ ....
『断れない人』はきつねうどんが大好きでした。
開店早々の立ち食いそば屋に入ろうとしたある寒い朝、
「おはよう 『断れない人』!今日は寒いからタクシーで一緒に行こう」
するとそば屋など無かったかの ....
描いたような月
逃げたい夜
蒼い景色
片腕にロックを歌う魚噛み付かせて
血を滴らせている
犬は走るしかない
疲れたら眠るしかない
蒼い間に魚をたくさん捕まえろ
ブラボー!
物言わぬ獣だってさ
そんなときには
ブラボー、ブラボーと叫ぶんだ
なに言ってんのそんな暇に
自転車ドロボー掴まえろ
2本足なら十分だ
羽根が生えたから飛んでっ ....
旧年来の友人の転職
この歳からの転職
しかも技術肌から営業にまわるという
誰もが驚き諭した
しかし
本人はやる気充分
その意気込みは電話越しからもうかがえる
....
一見、ト音記号のような
タツノオトシゴは
誰のためでもない、その姿形で
何のためでもないかもしれない
秩序を求めて
海中を
ゆっくりと動き回ります。
秩序なんて結局は
....
ふと降りた駅の
何気なく立ち寄ったデパート
入ると食品売り場
別にお腹もすいていなし
お土産にする気もない
通路をまっすぐ歩き
突き当たりそうなところで
出くわした
たった二段のエ ....
風ぬるく不意に響いた蝉の声耳に残るは夏の面影
レール沿い緑囁くさやさやと野分と呼ぶにはささやかな気して
午後3時いつもの場所で待ってます揺れるアカネが撫子にキス ....
愛しい私の娘よと
かあさま まりひとつ投げました
まりはお空に留まっていつも私を照らします
私の愛しい娘よと
かあさま おべべ掛けました
おべべは山に干したまま季節の色に染 ....
みようみまねで
れいぞうこからこおりまくらをだして
たおるでくるんで
いそいそ
おふとんまではこぶ
ねっ きもちいいでしょ
リリコちゃんがわらう
よそのといれは
そわそわ おち ....
砂糖が乾いていく
あるいは溶けていく
運ばれていく
最初からそこにはなかった
かもしれない
舞う風、の風上
私はただ口を開けて
私の中を乾かすことを止めようとしない
追い掛けること ....
地面には
ぺちゃんこのかまきり
おどけた鎌を振り上げて
お前は偉いな
踏みつぶされても
踊ってる
こどもは夢のおとなたち
絵皿の中で遊ぶ姿も
束の間のやすらぎ
緑の風がそよぎ
ミルク色の光を浴びて
こどもたちは目を覚 ....
秋の日差しに照らされた
小さい花をただ見つめ
薄くて淡いその姿
はかない生を手で撫でる
やさしい土を踏み歩き
草の匂いか風が吹く
今だけ香るその世界
心とともに響きあう
空を流 ....
太陽となりて君に熔ける
太陽となりて君に混ざる
荒がうな
爆ぜるな
太陽となりて君に焼かれる
それはとても熱く
それはとても狂おしい
あぁ今日は雨が匂う
太陽にはなれない
絶え間無く巡るめくサークルの中で
僕達は出会ったり別れたりを繰り返しながら
約束の地までの道程を喜怒哀楽を共にして
地平線の向こうまで歩いていく
小鳥がさえずり
朝焼け空 隣 ....
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