風が
雨を弾く
六月が
雨を弾く
雨が
雨を弾いて
少し
激しくなる
君が
雨を弾きながら
向かいの後者に駆け込んだとき
一本だけ切れた弦が
音階を ....
緑の山に響くのは
わたしの声か 呼子鳥
夏の滴りに濡れそぼち
わたしはわたしを呼んでいる
遠い風に乗り響くのは
わたしの夢か 呼子鳥
それともあのひとのささやきが
わたしの耳もと ....
ジョセフィン博士からの手紙
一緒に暮らさないかと
絵画の中での潜水をやめ
あの部屋を飛び出した
久しぶりの空は眩しく
新鮮な空気は21世紀
ジョセフィン博士と再会した
友人として感謝 ....
濡れそぼり張り付く髪もそのままに睫毛重ねて雨を忘れた
あんたの部屋に入ったら
嗅いだこともない香りが鼻についた
こんなんあんたがつけるような匂いやない
どこぞの女が残した匂いや
せやけど、ええ匂い
あんたに抱かれてるとき
....
一
春をあげるよ
ツバキの葉にうっすら積もった春を
人差し指でそっと集めて貴方に
栞にしてみてはどうだろう
本を開くたび春の匂いが漂うように
カーテンにしてみるの ....
ちいさな定規で世界を測る
一ミリよりも
さらにミクロな世界があることに
普段ほったらかしていた
ものがあることに
僕をみていたものが
あることに
ちいさな定規は
うなずいて
そっと教 ....
ゴミはゴミ箱に捨ててくださいと彼は言う
イメージと詳細にしか興味がない彼は
ある日からゴミ箱の中に住むようになった
今日もゴミ箱の中はイメージと詳細でいっぱい
そのことに彼はとても満足している ....
わたしには
こうこうせいのおねえちゃんと
おかあさんと
おばあちゃんがいます。
「おねえちゃん、どうしておけしょうするの?」
「きれいになりたいからよ」
「どうしてきれいになりたいの? ....
あーあ
あーあ
就職したい。
いや、やっぱ、
したくない。
なんて言って
今日も一人で日比谷公園。
何時に行っても人がいっぱい
おじさんいっぱい
空いてるベンチ探すのに一 ....
12枚の羽を持つ天使長ルシファーは神に背いて自らの王国をつくりだそうとした
ルシファーの誘惑によって全ての物体より数の多い天使達の3分の1が寝返ったのだ
そうして天界大戦争が起こった 僕は熾 ....
八月のようなあなたの
意外なもろさを知った
きちんと半円に盛られたアイスクリーム
くちのなかで
はかなくくずれてゆく
朝起きると、
夫の蟹を食べる。
水のきれいな土地で生まれ育った夫の蟹は、
沢蟹に似た味がして、
なかなかの珍味である。
蟹は大抵、
夫が寝ている間に、
湧 ....
五月晴れの匂う
青い空の下
潤いの粒がキラキラ光る
生き生きとした緑の葉っぱたちが
風に揺られて
カサカサと何かお喋りをしていた
何だろうと聞き耳を立てても
わたしは人間なので
うまく ....
ドラムカンの 外にはみだしてくる
火の勢いに のまれてく
窓から見下ろした 交差点
流し込んだ 健康飲料水
一回 千円のカットだけの看板
マラソンの金メダルのテレビ放送
セルフサー ....
庭の木にニンジンがなっていました
友だちは一本もぐと
器用にカッターを操って
舟の形にくり抜きました
池には用水路で捕まえてきた
小さな黒い棒状の魚が群れて泳いでいました
浮くことなくニン ....
今さらながら驚いてしまうのだけど
あなたはまだ生きているのだった
毎日とんでもない数の人が死んでゆくというのに
あなたより年若いバカが自殺するというのに
あなたが死んだという連絡はまだ入らない ....
がんじがらめのこの世界
行く宛てはすべて先取りされてて
俺の居場所はどこにもない
言葉の遊びで自分を表す
そんなのどうってことないって知ってるけど
どうにもこうに ....
「おまえ暗い」
と言われた
ニヤッと
したら
「気味が悪い」
と言われた
暗闇にも
目が慣れて
僕だけには
見えるんだ
あいつらが
いる
....
適当な事言って
軽はずみな事しやがる
そろそろ常軌を逸してきたようだ
もう誰が味方なのか分からない
奴らはばれないようにトラップを仕掛けるらしい
俺はチューニングの合っていない ....
日だまりに溶けたがった
あの太陽は
たんぽぽの色をたたえながら
まだ空に
浮かんでいる
僕はといえば
その日だまりの中で
何にも考えず
ただ
眠っている
太陽が出 ....
足元にあるほこりを摘んで
ふぅっと空まで吹き飛ばした
空には大きな雲が浮かんでいて
あっという間に溶けて混ざった
背中を伸ばし
両手を伸ばし
僕は
空を飛んだ。
夜中
水道から
ぱたぱたとなみだ
海になんか辿りつかないのに
机の上で
しまい忘れたサラダが
哀しい彩りで居場所をなくしてる
きれいに一人分だけ残して
あたたかみをなくしたイスが
部 ....
爽やかに吹く風
そよそよと吹く風
または暴風
果ては台風までを手づかみでちぎりとり
乱暴に白いキャンバスに貼り付けて
「これがほんとの風景画」
などとのたまうじいさんがいる
....
鬼の島に住む鬼は
毎日生活を送っている
朝起きると少し不機嫌で
中には朝から元気な鬼もいるが
多くの鬼は低血圧で
みんな朝ごはんはほどほどにしか食べない
ある鬼は会社に出か ....
強く握り締めると壊れてしまって
口付けを交わそうとすると首の骨を折ってしまって
優しく愛撫しようとすると
皮膚がべりっとめくれてしまって
そんな風になったあなたを
私はきっと愛 ....
マンゴーが坂道を転がっていきます。
南国の坂道をマンゴーが転がっていきます。
坂道の先に見えるのは珊瑚礁を誇る海です。
マンゴーが加速して転がっていきます。
海の薫りで辺りは満たされていま ....
{引用=くりかえされる、すべてのいのちと
いとおしきわたしの二人称たちに}
わたしがあなたを産んだそのとき
それとまったく同時に
あなたがわたしを産んだのです
この、配線だらけの街の ....
最寄り駅にあるキヨスクでは
店員のおばちゃんが詩集を売っている
おばちゃんの書いた詩や
駅員の書いた詩や
ホームの柱に落書きされていた誰かの詩が
そこには載っている
地域住民の出した詩 ....
苺のつぶつぶいくつある
1、2、3、4、5、6、たくさん
白菜、葉脈、町模様
あの丘越えてあの町がいい
わたしはお城に住みたいの
銀色鱗の屋根瓦
町に住むのはまんまる子猫
だけれ ....
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