浮き輪をもって海へいく約束だったのに
この夏もお父さんは
白い雲になったままです
空は海よりも広くて青いと言いながら
地べたと空のあいだで
両腕をまっすぐに伸ばして合図して ....
酔っ払ったみたいに踊る僕の手に
気が付いたら君の手があった
変な言い方だけどそんな感じ
おでこをくっつけて微笑みあった二人が
そのまま見つめあって
溶け出していく夏の夜の匂い
細波 ....
たくさんの思考の間に挟まってくるもの
君が
私の知らない場面での
面白そうな企みを
どんなに楽しそうに喋っても
私はぜんぜん楽しめない
わかるかい?
逆の立場だったら
そう思う ....
静けさに
包まれて夜は
雨はとどまっても
星はみえない梅雨の空
肌の湿りは
空が落とした夏の皮膜
それとも重ねた体温
外灯が滲んで見える
青く蒼々と
今を映すその目に
私の ....
朝が死んだ と
夕飯時に連絡があった
その時の晩御飯はカレーだった
私は一晩じっくり寝かしたカレーが
好きだったので
とてもショックを受けてしまって
あぁそう
....
駅を出る
左に見えるカフェDesign
カプチーノと今日買ったB級雑誌
ここでのヘッドフォンは邪道だ
聞こえるのは心地よいお皿の音と
少し大きめのコップ
油紙に包まれた店名入り ....
母は
随分と老いたけど
声は変わらない
母は
もう私に「早く早く」とせかさなくなったけれど
私に「早く」とせかされる
母は
なぜか私よりスタイルがいい
ちょっと癪だけど
ちょ ....
じいちゃんが夕涼みしてる
静かに 静かに 黙って 黙って
ぼんやりと煙草を吸いながら
縁側の無くなった都会の隅で
ガードレールに座って
車道を眺めながら
時折道端の排水溝辺りから
....
掃除夫は掃除する
私は挨拶しない
掃除夫はいなかった
私はいなかった
私はどこにもいなかった
掃除夫もどこにもいなかった
私はしばらくして
掃除夫の存在を消してしまったことを恥じ
なん ....
すごく好い風が家中を吹き抜けて
玄関のドア飾りが
「ちりりん、ちりりりん」
ひっきりなしに、綺麗な音で鳴ります
気温も例年より低めで
少し肌寒いくらい
部屋で本を読んでいると
....
ひとりの人間の個体がこの世から存在しなくなった日の空は
ただただ、白かった。骨みたいに。煙みたいに。
早朝から喪服に袖を通す。
日常が非日常を内包する。
生きているから人は死ぬ。
....
ぼくは詩人
実現とは次への目標への
起点でもある
今日もまた
夜の散歩をしていると
川に流れる月に出会いました
水面にゆらめく銀色は
ゆるく流れる水に洗われ
その姿は静 ....
うるおいのある
くちびるを
舌なめずり
黒ふちどりの
うるんだ瞳を
ぼくにむけ
なぜか
因幡の白兎を連想
してしまう
きみの
なまなましさが
生のにくのにおいを
周囲にただよわ ....
お魚を食べなくなった猫は誰
一人で眠る猫は誰
君は猫で
私は友達
時間はぎりぎりに削って
人間の振りをする猫は誰
贅沢なお皿を平らげる
猫は君で
食べ残 ....
ある日ひょっこりと
君から連絡があるかもしれない
そう思うと
携帯を家に置き忘れた事が
不安で堪らなくなる
そんな事ある訳ない
分かってるけど
胸ポケットに
願いを一つでも ....
見慣れた君の手に
初めて触れた夜のように
触れた瞬間
想像がはじける
たった一度きり
二度とはないよ
生きた時間を
静かに込めて
見慣れた君の唇に
今初めて
....
雨が降ったあとに
小さな水たまりができました
大きなナマズが2ひきと
小さなナマズが2ひき
ナマズの家族が泳いでいました
泳いでも泳いでも
同じ場所をぐるぐる回るば ....
今朝のおまえの目が
あんまり緑だから
どうしたって聞くと
やっぱり風邪だ
普段体調がいい時は
緑に茶色が散っている
水の底に見たブナ林のような
おまえの目
それが濃い緑に張 ....
青空を見上げれば
真っ赤な太陽
木陰に入れば
セミの声
ランドセル降ろして
木に上る
基地を作り
一人だけの世界
メメちゃんが擦り寄ってくる
かまってくれと膝に上る
のどと ....
しらばっくれるなよ
大型水槽のガラスにも
人息れで滲んだ世界が
ぼんやりと時を刻む
エアコンに負けて
透明になった世界には
勝つか負けるかの打算が
手段を選ばぬ精神が
ワールドサッカー ....
カステラの
下のほうについてる紙を
取るの忘れて、そのまま食いちぎって
それでも
牛乳と一緒に
流し込んでしまえば
おなじこと。
あの子だけを愛するつもりが
ほかの ....
少女の小さな口がそれを求めると
恥ずかしげもなく身を開いた
それは若草を容赦なく踏むような音だ
それは若者の肩のような噛み応えだ
林檎には別の名を与えた方が良い
狭い路地にたくさんの人々
外は馬鹿に明るいのに
中をちょっと覗いたら
鬱蒼とした密林のように暗かった
幾つも林立している黒と 対比している明瞭な白
誰かが何処かへ運ばれていく
黒い ....
どうしてあのとき
空に手が届くと思ったのだろう
空を隠していたのは
紛れもなく
僕自身の手のひらだったのに
早朝
カーテンを開くと
蛾が一匹
網戸にへばり付いていて
不愉快だから
乱暴に網戸を開き
勢いよく締める
羽をばたつかせ
それでも飛ばない
白昼
食事から戻っても
蛾 ....
愛し合いたいと思うことはあまりにも簡単で
それでも消えないのが憎しみや怒り
今も高いビルのうえから
誰かが飛び降りて死ぬのだろうか
自分で死ぬのは勇気がいることだと
誰もが口をそろえて言 ....
お前にそっくりな
ひよこ豆をゆでる
おまえにそっくりな
ちいちゃな鉤鼻と
これまたおまえにそっくりな
ちいちゃなおしりがついている
圧力釜なら早いが
ああ、
それはぜんぶお ....
右足の甲に落ちた水滴が
全身のわずかな震えを止めて
律儀な夜は昼となり
見知らぬ今日が明るみにでる
私の琥珀色の影は
夢遊病のような顔つきで
あなたの記憶のどこかに
住 ....
********
『もしも私が死んだなら』
『心臓は息子に』
『両腕は娘に』
『薬指は妻に』
『唇を弟に』
『耳を妹に』
『そして』
『彼女に』
....
僕達の造るものは
猥雑で 見苦しくも見えますが
汚いものでは 決してないので
どうか 愛でてあげてくださいね
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15