葡萄の葉陰に{ルビ抱=いだ}かれて
青い果実のひとふさは
日ごと重くなりました
花びらのかわりに
熟れた種子をいっぱいにして
向日葵は皆うなだれました
高い空
すうと流れる
赤 ....
ブックカバーは不思議な覆い
一度本に被せれば どんな本も同じ顔
シャナイでなにを読もうとも 誰にも何にもわかりゃしない
ブックカバーは不思議な覆い
しんしん表紙に降り積もり の ....
脚を折りたたんだ正座で
あなたはラーメンを提出し
わたしがお品書きのとおりに
並べていく
合間合間に広がっていくものが
チャーシューの色や野菜に似ていて
わたしたちの中心なのだと気づく
....
ぴかりと光る輪郭
来る日も来る日も
ボロ雑巾で磨いたのだろう・・・
乾いた雑巾をバケツの水に浸し
力強く絞る
その表情は
鬼の面
何を睨む
血しぶきを撒き散らす
その部 ....
左まわり
やいばの先
痛みは光る
膝上の花
陽の差さない夕暮れに
何かがこぼれ 生まれる水紋
うすく うすく
つらなる水紋
誰も何故かを問わない日
醒めた ....
あかいひかり
てをおもいきりふって
ねがいごとをさんかいとなえたなら
そらからはきらきらのきれいななみ
ざぶんざぶんとおしよせます
いつかのなみだはおほしさま
みみたぶにかざって
お ....
都会の夜に出る月は
ひんやり冷たいムーンライト
街角に漂うほのかな香り
そして誰かのひとり言
街の明かりに人影ひとつ
後ろの正面だあれ!
目隠しをして逃げたのはだあれ
ひちりぼっちの影と ....
バスの停留所に
動物列車がやってきた
乗ろうとするけれど
人間はお断りです、と
動物の運転手に怒られてしまった
レールも無いのにどうして
そう思ってよく見ると
窓から次々と動物たちが ....
喪服の婦人が森から出てくる
入れ替はりに
首うなだれて一羽の鶴が
森へ吸ひ込まれる
霧たちこめて
婦人も鶴も胸まで霞んで
二者はどこで擦れ違つたのだらうか
ともにもういづこに ....
幾枚かの{ルビ花弁=はなびら}が舞い落ちる
淡い光のあふれるいつかの場所で
あの日の君は
椅子に腰かけ本を読みながら待っている
いたずらに
渡した紙切れの恋文に
羽ばたく鳥の ....
「そうだね」
君はかるく頷いてまたテレビをみた
くだらないニュースが何度も繰り返し流れていた
償いきれない罪はもはやそれは罪ではなく
一種の善のように思えた
欠 ....
薄暗い軒先の蔓薔薇が
絡みつき
傷跡を残して散っていく。
滅多に部屋を掃除なんかしない僕が
部屋を掃除したんです
「明日は雪でも降るんじゃないか」
なんてつぶやきながら
ついさっき
ラジオで流れた天気予報を思い出し ....
タヌキのことならまかせてください。
他のことは何一つ分かりません。
どうやって生きていって、
どうやって死んでいくのか
なんてことはもちろんのこと、
どういう思考がどういう行動と
巧く ....
カタツムリは
どうしてあんなに大きなラツパを
引き摺つて歩くやうになつたのだらう
身に余るラツパの大きさに
閉口してゐるのはよく見かけるが
いまだそのラツパが吹き鳴らされたの ....
朝起きると天使が僕の顔を覗きこんでいた
「あなたはイエス・キリストの生まれかわりです」
そんなバカな
僕は煩悩のかたまり
罪もたくさん犯してきた
「そんなわけないで ....
いらっしゃいませ
私は涙のアメ屋さん
このアメはいかがです?
悲しみの涙を集めました
しょっぱいけれど
スッキリしますよ?
このアメはいかがで ....
ただある花の
ただある自分
色は淡く
微かにゆれる
ただある空の
ただある自分
雲は薄く
静かに流れる
ただある時の
ただある自分
脈は弱く
僅かに刻む
見るもの全 ....
(かじって
すてて)
レタスを洗って
いたい
今日はずっと
レタスを洗って
一枚一枚
丁寧に
拭いて
いたい
今日はずっと
知るのがいやで
本当はもう ....
大好きな88円のぱんがあって
忘れてはいけないと思うことが
毎日いくつかあって
でもどうしても忘れてしまうことが
毎日
いくつもあって
泣きたくなるような事ありますか
大好きな人 ....
胎盤干からびろって罵られたって、
わたしは
歯茎の色が不愉快だって言われたって、
わたしは
いつまでたっても黄色、モンゴロイド
ひっぱたかれると痛い
誰かの ....
今道端で
鳩が死んでました
通りすぎる誰もが気付かなかったので
ぼくはその鳩を。
とにかく
詩的だと思った
擦ったら君が出てきてくれないかな
コーヒーの入ったただのグラスに
奇跡が起こることを ひたすら
ペンが進まなくて 紙は白いまま
今日は目も合わなかったね
顔をそらしてたのは僕だけど
....
雪だよ
ねえ、 かあさん
白い絵の具は
雪だよ
紫は
くさった雲のにおいがした
ひとびとたちは
黒々の影に
青々のお ....
空があんなに高い
高くまで煙
樹々は赤や{ルビ橙=だいだい}に燃え拡がる
燃える燃える
火葬場で一服
雨が上がると
空気が透明を増して
夏の名残と夢とが冷まされ
水の中を歩くように九月
夏服の明るさが
どこか不似合いになり
息を潜めていた淋しさだとか
熱に乾いていた涙が
堰を切 ....
秋が訪れれば またひとつ
目じりに刻まれる年輪のようなもの
早いもので開け放した窓の外では
秋の虫たちが鳴き始めている
この様に季節が巡るのであれば
歳を重ねてしまうのも致し方無い事
抗っ ....
金平糖の故郷はどこにある
ご主人様の命令で
落とした飾り羽根を探し
少年と少女が町を爆撃した
美しい焼け野原を眺め
満足そうに微笑んでいる私
(大きなお釜の中で)
グルグルと ....
ゼロになりたい
無ではなく
確かに存在し
しかも
姿はなく
誰も傷つけない
影響もされない
ただ
存在する
消え去る必要もない
見えないから
たとえば抱き合っても ....
お店を出してくれたあの人は
やさしいひとでいい男だけど
私の好きな人じゃない
5年もごまかしてきたけれど
もう、避けられないみたい
貴女はそういうと
二人きりになった店の灯りを落と ....
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