夜は気が狂っていて
何もかもが支離滅裂になる
だけど
昼はもっと狂っていて
私は平静を装う
それは恋文でしたか
長く綴られた美しい文字でも
過去形になると
住所も名前も内容も
要らなくなってしまうのですね
中古屋で買ったシュレッダーに
「アパート」という文字を半分消されて
....
年老いた母が
彼女の城だった台所で
記憶を失くしかけている
朝方
何気なく寝返りした布団の中で
夫婦は手をつなぐ
どちらも何も言わないけれど
悲しい時間を耐えているのだ
あたりが金色になって
まだ日が沈む前
ベランダから街を見下ろすと
視界が黄色くはじけて
色褪せた古い写真みたいに見える
どんなに時代が移り変わっても
この色だけは変わらないから
....
街なかで魚を見かけた
夕暮れの人混みをスイスイとすり抜けて
駅の方角に泳いでいった
海中でもないのに魚が生息しているなんて
奇妙なことだと思ったけれど
通行人は気に留める様子もない
私がこ ....
しなくちゃいけないことを
「ぼんやりと思う」の引き出しにしまってく
そして冷蔵庫から夢を取り出して有難くいただく 美味い。
これだから夢はやめられない、と遠くをみながら
眠り羊のラムネをさ ....
降り積もった枯れ葉が
雨に打たれる
踏み付けられて
泥に塗れて
こんな汚れた姿を
見たかったんじゃない
頬を流れる涙は
雨に打たせて誤魔化す
寒さで凍えるように
震えて見せて
....
丸い部屋に緑色の女が立っている
四角い部屋には紫の女が座っている
どちらの口の中にもセメント状の闇が
うんざりするほどぎっしり詰まっている
まるで 言葉の代わりだと ....
料理をつくる
今日の分をつくって
昨日の分を捨てる
だれかと食べる
ひとりで食べる
料理をつくる
今日の分をつくるが
明日の分はつくらない
今日のためにつくる
わたしの今 ....
青いってくちにして街は海になる花びら泳ぐ彼方の岸を
まぶた濡らす緑雨は君に降りやまず海の果てに飛ぶ鳥を探す日
永遠に待ちぼうけです目を閉じて探して君の赤い夕焼け
いくたび ....
眼は
閉じるためにある
闇と親しくなるように
暗黒に潜む
閃光
耳は
塞ぐためにある
沈黙に浸されるように
静寂に沈む
音声
腕は
抱えな ....
欲と不安と
孤独と人声
ああ、そう言えば
そう言えば
他のために生きていくよりも、じぶんのために生きていくほうが大切だ
そんな真実を高らかに唱えるひともいるけれど、ほ ....
ポタリ
ポタリ
静脈から垂れた黒い血が
私の寿命を占っていた
あぁ
そこはクヌギの雑木林の散歩路
暗い午後に
紫煙を一服
カラスが鳴いた
そろそろ帰らなければならない ....
旅を続けるのに少し疲れを覚えたので
近場の坐れる石を見つけて腰を下ろす
いつも足元だけ見ていたと気づいて
久しぶりに顔を上げ空を仰ぎ見てみる
もう秋の色ではなく冷たい青のなか
白い雲がひ ....
次の方は是非田舎暮らしにおいでください
若い子よりもおばあちゃんに関心のある方
病気見舞いや葬式が苦にならない方
デパートやコンビニが近くになくても暮らしていける方
近所に明るい挨拶ができ ....
泣いて笑って
閃いて迷って
薔薇を買って
のけ反って跪いて
隠して隠されて
神様に隠し事して
見つかって見つからなくて
ほぼあきらめて頬あからめて
うんと産んで
うんと倦んで
詩を ....
赤いチュチュをはいた
白い花たちが
寄り添って踊る
小さなバレリーナ
踊ることは
生きていることだと
無邪気に笑う
顔を寄せたわたしの目の前で
おさなごのやわらかな手に触れ ....
家はたくさんあるのに
その家の屋根にはたくさんの鳥が集まっていた
一列に並んで
まるで会議中のようであった
それぞれが首をかしげ
うなづきながら会議をしていた
ついと一羽がとびたつと
い ....
白い肌
青い血管
金色の髪
赤い唇
茶色い瞳
高い鼻
森の中で
君はコッチを向いて
僕を睨む
その視線だけが
僕の誉れ
鳥が飛ぶ
樹々がさざめく
モンシロ蝶が飛ぶ
....
好きが頬っぺに突き刺さる
授業中肩を叩かれ振り返り
君の指先が突き刺さる
好きが悪戯心をくすぐった
前の席の肩を叩く手の指先は
振り返る頬をへこま ....
荒地に影を落とす
赤錆びた
鉄の大車輪
電源ケーブルは
荒々しく切断されている
廃業した遊園地の大観覧車
そもそも
同じ軌道を
くるくる巡ることに
生産的な意味がある訳じ ....
テレビ番組に観たいものが
何ひとつない
インタ-ネットもすぐに
厭きてくる
やっぱり 平凡だが
話し相手がほしいなぁ
無駄話ができることほど
人生を豊かにするものは
な ....
冷たい空気
蛇口から迸る冷たい水
擦り剥いた膝小僧
洗い流される
砂混じりの鮮血
ほんの束の間
寄りかかる肩が
頼もしくて
緊張感を覚える
イチョウの葉がこがらしに
金色にかがやいてまいおどる秋の羽だ
地に落ちて
みちゆくひとにふみしめられ
甘いかおりとサリサリの音
音はもしかしたら
いなくなることに
泣きたてている ....
気忙しく男は高みから息を吹きかけた
後退りする光の中でいつまでも己の内を見つめ
色を失くして往く
女を見続けるのは正直もう嫌だった
白く
すべてを
終わりの先の始まりの
まだ始まる前の上 ....
朝日さす
朝の部屋で
思った…
この時間は
あと少しで
終わってしまうと…
夕日さす
同じ部屋で
思った…
この時間は
いつまで続くのかと
....
弥生生まれの小鳥の日日は
{ルビ父母=ちちはは}恋しい空でした
弥生生まれの菫の日日は
暴雨を忍ぶ{ルビ詩=うた}でした
弥生生まれのヒトの子の日日は
シチューが好きな{ルビ私=わた ....
あのひとの背中に耳をあて
心臓の音を聞く
汗をかいては歩いていた
影は黒く
草は青く
恋をすれば
みんなが震える
電線にとまっている
鳥たちの口はとんがっていて
きびしいこと ....
アガペの愛は
尊くて
すばらしいの
でもね
私は小さな
人だから
もっと
かっこ悪く
もっと
欲張りだし
もっと
我儘…
....
オリオン輝く
冷たい空は
透明な
深い深い
闇の空
月の綺麗な
冷たい空は
キーンと澄んだ
緊張感に
もし
溢れる光が
なければ
....
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