そういうことか
海も空も
まるいんだ
どれくらい走ったろう
眼前には海があり
道端には 菜の花と桜が続いている
ふと 同じところを何度も通っているような気が
して
....
ぼくは師匠にうでを見込まれて
理髪店を一軒任されるようになった
へたくそが髪を切ると、髪が伸びるとそこだけ浮いたようになる
師匠に教わったやり方だとそうはならなかった
髪の毛と ....
霧吹きのような雨はふかみどり
胸の奥まで吸い込んで
わたしは森になる
しばらくすれば
じゅうぶんに水を含み
耳を傾ける
彼らは
永遠を指し示すこと ....
わたしたちは小さな生き物です
(小さな生き物)
どの程度かというと
気にさわるほどの
空き缶の下 おっと
踏まないように ちょっと
たたらを踏む
あなたのつま先にさしさわるほどの
....
予約時間に早すぎて
十数年ぶりに弘南堂書店へ往く
見慣れたブックオフとは違う
天井近くまで積まれた学術的古書に
おまえの目は泳いでいる
楽しい散策 わたしには
安い棚から掘り出した一冊は
....
紫の スミレの花に 染まってく 砂利の庭に 春の喜び
みんながやっている事
僕には出来ない
何故簡単な事が出来ないのかと言われた
これは病気なんだと答えた
そうしたらみんなが
僕のする事全てを手伝ってくれたり
病気なんだから
あまり無理をし ....
間違ってる気がして
投げ捨てた言葉
違うね
あの時の僕は
僕を守る為に
あなたを傷つけた
ねぇ
あの言葉は焼いて捨てたよ
だから
安心してほしい
もう二度と
....
ジャズの調べが今日も聴こえてくる
通りかけのジャズバーからだ
はいってウィスキーをまあるい氷で飲んだ
これがロックというものか
酩酊のなかでジャズのピアノの音がとろけていく
ぼくは異次元 ....
窮屈に気がついて私は朦朧としていた
近くから心地よいざわめきがきこえ
かすかに薫る暖かさが全身に広がっていく
春がおでましかと重たい瞼をひらいた
伝えたい 私の想い
口から飛び出したくて
あばれている 私の想い
なだめすかして 溜飲しても
次から次へと あふれ出す
口止めの 薬を処方して
あ ....
花を育ててください
震災直後の喧騒のなか
被災地から届いたこの言葉に
まだうまく向き合えない
花を育てられない言い訳を探して
それを誰かのせいにして
形だけ怒れる言葉の毒に
無駄に時 ....
ランプスポットに明かりが灯る頃、
私は常連客に珈琲を淹れていた。
柔らかな音楽が流れ、
店内は優しい暖色に包まれていた。
お客の一人は英字新聞を何かに切り張りしていた。
他の ....
産まれたくて産まれたんじゃない
生きたくて生きてるんじゃない
誰かが生きたかった明日なんて
知ったこっちゃ無いさ
御愁傷様
死刑になりたいから人を殺す
分からなくもないかもな
自分を ....
あなたの
心と身体が
ひとつずつあるから
名前通り
全身全霊
風を感じたり
海を見たり
光に触れたり
するべき
いろいろな人の
怒ったところとか
涙を流すところとか
....
喉のおくに、
何かがからみつく。
潰れた声がでる。
声は声ではなく、
毛を生やして、
毛孔から這い出てくる。
たくさんの、
得たいの知れない、
毛玉が這い出てきて、
私をとりかこむ。 ....
直ドラで右股関節を捻挫した
ダフった衝撃がそこに集中してしまったのだ
向きをかえただけで襲ってくる激痛で
寝ることと座っていることが辛くて仕方なかった
立っているときがいちばん ....
明日になったって
現実は何一つ変わらないからね
僕らには
明日を受け入れる強さが必要で
うつむいてばかりなんていられない
だけど時々
嘘を本当に変えるチカラが欲 ....
春になったら
と
ブツブツ唱えていた
春になったら
もう覚悟を決めるのだと
シクシク泣いていた
春になったら
あなたは風の中走り去って
私の呼ぶ声に
振り向きもし ....
条件反射のように
体に染みついてしまった愛は
過ぎゆく時間が
消し去ってくれるのだろうか
元気とは愛するひとに心配をかけない合言葉のようなもの
春霞の朝の街道に生き物たちの匂いがする
うまくいかないことばかりだけど反省する暇なんてなかった
信じ込んでくちびるを噛んで胸をつ ....
たぶん人生って
悲しくて
情けなくて
つらくて
しんどいものかも知れないよな
だけど俺はつながりを求めていく
大空と
太陽と
大地と
大海原と
草と
虫と
樹と
花と
....
街からすこし離れて浮かんだような
この小さな白い部屋を
うすむらさきの夕暮れが染めて
そして還ってきたあなたが居る
私の知ることのできない
どんな世界を いくつ巡ってきたの
それをあなたが ....
消防車が大通りを埋め尽くす
けたたましく鳴るサイレンの音のなか
たくさんの赤いライトが点滅する
何事かと人集りの方へ行ってみると
一軒家が燃えていた
炎は唸り声を上げる
周辺だけ灰色の ....
手塚治虫が死んだ歳まであと十四年だ
一日十八時間起きてるとして
十八時間×三百六十五日×十四年
まだ九万二千時間もあるじゃあないか
これからの人生でいちばん大切なこととは
....
枕元に外した
メガネの瞼を
そっと下ろしてやり
眠るときも
髪を七三に分けておく
深夜
明かりが消せない部屋の
無影灯に浮かび上がる
手術台のような
蒼白のベッドの上で
....
こんなことになってしまったけど
もう誰のことも恨んでない
恨んでないよ
雲の上には
また青空が広がる
それだけで充分じゃないか
首筋を通り過ぎる冷たい思い
あなたの眼差しを受ける
マフラー 首に巻くだけで
温まる心
こんなに簡単に 暖かな気持ちになれるのに
冷たい眼差しは通り過ぎる ....
積み木を積み直す君
何度も繰り返す細い指先
終わりの無い道は
一周回って元にたどり着く
風のざわめきはいつも一定で
葉を散らす木々は何も言わず
鳥たちは最後の実りを
精一杯啄んでいる
....
まっ白い
豆腐を
そっと
水底から
すくいあげるように
たいせつにしてきただろうか
リリースした
魚を
ゆっくりとした眼差しで
見送るように
やさしくしてきただろう ....
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