もうひとりのわたしが
東京に行く
というので
わたしは新幹線に乗せるため
仙台駅にいた

東京は
日々よせてくる波のように
この街を少しずつ変えていて
ホームの電光掲示板も
 ....
 
しあわせだけでは足りなくて
ふしあわせなら
もっと足りない
ものたちが
ホームから
改札口へ流れ込み
潮の匂いだけのこして
ぼくときみは立ち尽くしていた

立 ....
 
今はもう なにもわからぬ存在の 少女が吐いた 蛤の泡

なつこという 名のある少女がいたけれど あるいはふゆこ だったかもしれぬ

窓のそと 誰もいない景色あれば 虫、花、草、すべて  ....
 
あなたはわたしの
子ではないと
ある日母が言ったなら
その日から
またその日までも
子は母の子ではないように
自らの記憶を再構築し
それからつくられる記憶さえ
再構築しなければな ....
 
思い出の箱あけてまだ箱がある君と見た空の向こうにも

大切なものばかりではなかったね今はそれさえ愛しいのに

快速の窓の外に無人駅あの日の母とわたしがホームに

電柱の数をかぞえて歩 ....
 
何故此処には 雪が積もらないのだろう 積もっても 春のように消え 冬のようにまた 積もるのは何故 なんども冬と 春を繰り返す 冬は 過ぎ行く季節 此処に来てわたし 時の早さを思い知る とくに冬  ....
 
わたしの背中には
一枚の皿が
ぴったりとくっついていて
たとえば高いところから
低いところへ落ちる時など
少し浮いてしまう

そんな時
わたしはこの世界から
少し離れたところへ ....
 
なつこさんが代休をとった

気配だけ
そこに残して
どこにいってしまったのだろう

お昼ごろ
今日なつこさんは
お休みだったんだね
という人が
かならずひとりやふたりいる
 ....
顕微鏡をのぞくと
あんなに青かった星が
茶色く濁りはじめていた

助教授に
どうしましょうと
尋ねると

捨ててしまいなさい
安全な場所に
と言う
いつもそう言う

わたしは ....
 
わたしは
救急車を運転してみたい

それはかならず
東京で

あかい
サイレンを鳴らして

夜の街を
走り抜ける

それはかならず
東京で

くるしんでる人を
救 ....
 
歯磨き粉は
なぜ
粉でもないのに
歯磨き粉と
呼ばれているのか

ある日わたしは
天日に干して
ほんとうに
粉にしてしまったら
お日様に向かって
舞い上がっていった

 ....
 
あれから五十年
と語りだす
老人の話を聞いてると
なぜだかとても
うらやましい気がした

話はみな
そうであると思うしかなくて
そうであるように
僕のこれからの年月も
そのよ ....
  
友だちは
ついにあなただけだ!

と妻に言ったら
きゅうにあほらしくなって

けれど、四歳の息子に
まだ友だちがいないことに気づいて

お父さんと
友だちにになろうね

 ....
 
他に歩むべき人生が
あったのかもしれない

でなければ
書かない
わたしはこの詩を

書きかけた
紙をもみくしゃにして
くずかごに捨てた
はずの詩を

他に歩むべき人生を ....
 
存在しない
姉について思う

父が父であるとき
母が母であるとき
姉はどこにも存在しない

ある日子供が生まれた
ある家で
そこはわたしたちの家
わたしはそこに
存在しない ....
 
細く伸びた指先に
今にも落ちそうな葉を
一枚残し
風に揺られて
誰かを待っている

灯りが消え
閉まる店の扉から
葉が一枚
駈けるように
夜空に舞い上がると

今あらわれ ....
 
数えても数えられない夜ばかり

化け猫が数値化された街に住む

マンションの日陰の隅で笑う女

光見る身を乗り出してベランダから

一階のカラオケバアから恋の唄

かんたんに ....
 
素数って
なんだろう

素麺みたいなものだろうか

こどもの頃
母は休日になると
素麺をつくってくれた

ぼくは
いつもわりきれない気持ちで
それを食べていた

世の中 ....
 
無言電話がかかってきた
その人の部屋にある
テレビの音が聞こえているだけだった
わたしはその音を聞くけれど
その人には聞こえていない

わたしはテレビを持っていないから
その音をた ....
 
小指をにぎる
強くて
弱い力で

たしかに
そこにいる

母さんの
子でよかったと
思う日も来るだろう
君にも

けれども今は
ひとまず母さんに
なれたみたい
よか ....
 
おとなの勝手な事情で
離れ離れになってしまった人には
当たり前のようだけれども
子供の頃に出会っているものである

勝手なおとなになる前に
離れ離れになってから
その人はいつまでも ....
 
心臓にも
記憶があるらしいんです、と
その透明な
心臓をもつ少女は言った

にくたいが
ほろびてもまだ
記憶というたしかなものが
あったとは

わたしは思って
しかし
何 ....
 
朝おきると
窓の外
雪がふっている

ふとわたしは
ゆきちゃんのことを思い出す
歯を磨いてるときも
窓の外を見て

ゆきちゃんが
ふっている
と呟く

ゆきちゃんってだ ....
 
その通りには
あたらしいカフェーができていて
まだ知らない店の中で
まだ知らない
手紙の返事を書くことにした

手紙の主は誰か
わたしがいつか
書いた手紙を読んで
書いてくれた ....
 
赤い卵が
まっくろい側面の
棺桶にならんでいて
うす暗い船底には
ごはんがあるものだから
たまらない

軍艦のデッキから
声が聞こえる
声に出しては
ならないその声を
聞い ....
 
はじめて会った
日のことを
よくおぼえていない

それくらい
はじめて会ったような
気がしなくて
その日からぼくらは
いつも一緒だった

友だちだった
恋人ではなかった
 ....
 
ものごころついたときから
あるもよおしものが
そこでおこなわれていて

開催期間:ひとのきかん

とかかれてあるので
ふしぎにおもい
うけつけのおねえさんに
ひとのきかんとは
 ....
 
お見舞いにいくと
ベッドと見まちがえるほど
平らになっていて
痩せていた
祖母と手をにぎりあって
見つめあっていた

帰り際に
手をふった
なるべく笑顔で
いつものように
 ....
 
ばっぱが死んだよ
連絡がはいって
いくつかの列車を乗り継いで
たどりついた実家の居間のテーブルに
イクラの寿司があった

食べていい?
誰もこたえないので勝手に食べた
掌もあわせ ....
 
目を凝らして
お月さまを見ていた
もちつきしてる
うさぎの目をさがしていた

うがいしてる時の
人の目は
どこにあるのかな

宇宙から
メッセージがとどく

僕はうがいし ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
鴎の卵自由詩109/2/15 1:32
足りなくて、見つめ合えば自由詩4*09/2/14 1:11
ごむまり短歌1*09/2/14 0:58
オーキュペテーとケライノー自由詩2*09/2/11 22:33
僕らが青に変わる日まで短歌209/2/11 21:33
冬時計自由詩109/2/11 2:16
自由詩209/2/11 0:03
なつこの代休自由詩9*09/2/10 0:15
ミクロ分析自由詩3*09/2/8 23:26
東京救急車自由詩2*09/2/8 21:48
歯磨き粉自由詩109/2/8 16:33
物語自由詩009/2/7 21:46
友だちが欲しかった自由詩709/2/7 4:02
くずかご自由詩209/2/7 1:13
葉女自由詩209/2/6 5:05
自由詩009/2/6 0:52
マンションで暮らす女俳句309/2/5 1:32
素数自由詩409/2/5 0:35
無言電話自由詩1+09/2/4 0:35
母さん自由詩409/2/3 1:20
おとなの事情自由詩209/2/2 23:09
透明宣言自由詩5+*09/2/2 0:09
雪ちゃん自由詩3*09/2/1 0:41
あたらしいカフェー自由詩109/1/31 22:49
イクラの軍艦巻自由詩4*09/1/31 0:54
あなたは僕の自由詩309/1/31 0:09
ひとのきかん自由詩8*09/1/29 23:43
トンボ自由詩9*09/1/29 1:13
イクラの寿司があった自由詩4+*09/1/28 23:12
うさぎの目自由詩2+09/1/28 1:07

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